お早うございます。
メフィストフェレスです。
(ゲーテの著作に出てくる16世紀のドイツで知られた伝説上の悪魔)
本日の講義で皆さんにお話するのは「選民思想」についてです。
この単語の詳しい説明は必要ないでしょう。
漢字そのまんまです。
古くはエジプト王朝からユダヤ、そしてローマ帝国、大航海時代の植民地支配を経て、ナチス・ドイツや大日本帝国・八紘一宇などでその悪名をとどろかせ、
今日のグローバル化した社会では、すべての国の人々がアイデンティティの名の下、この思想を潜在的に抱いています。
これらは人種的、言語的、そして歴史的な要素を多くはらみ、太古から続く複雑な問題かと思われていますが、実のところ、とても単純な問題なのです。
「3丁目の通り向かいの田中さん家は、お金持ちかもしれないけれど、我が家の方が常識があるわっ!!何あの下品なウェーブパーマ!!」
ほとんど、これです。
そして3丁目の角の佐藤さんも、
「俺の家がこの3丁目で一番古いんだぞ!!」
と、そんな感じです。
確かに田中さんのウェーブパーマと、佐藤さんの綺麗に禿げ上がった頭は違います。
ですが、
夕飯が魚なのか肉なのか。
手を合わせるのか組むのか。
娘の門限が17時なのか19時なのか。
トイレに行ったら石鹸で手を洗うのか、水だけで洗うのか。
通りのノラネコに餌をやるのか、やらないのか。
好きな色が
好きな音が
嫌いな言葉が
嫌いな顔が
あーあー
彼らの家にはそれぞれ立派な門があります。
それは誇りに思うことでしょう。
しかし、
番犬のように、
門の内側からだけ吠えてはいませんでしょうか?
正しい選択による淘汰の連続、と言えば聞こえはいいですが、大部分は足の引っ張り合いによる血みどろ劇場であります。
多くの人は重箱の隅をつつきあいます。
そして自己否定は自分に都合の良い範囲でしか行いません。
まあ、そもそもワタクシ、メフィストフェレスの名の由来は、ヘブライ語の「嘘をつく者」ですから、私の存在も3丁目の電柱に貼られた、闇金のチラシとなんら変わりはありません。
しかし、ああ、これはこれで、自分を卑下しているようで、その実は私自身の選民思想なのかもしれませんね。
世界はそもそも、ありとあらゆる思想・宗教が、この選民思想を元にしています。あなた方はいつまでも陣取りゲームをしているというわけです。
そこの学生さん!!
講義中に寝るなんて!!
………でも、そう。それが一番の正解です。選択して選択せず。
選択する、この一見、素晴らしく人間的な行為そのものが善と悪を生み出し、いつまでたっても人間を争わせるのではないかと、この嘘つきめは思うわけです。
この世界の富の半分は、全世界人口のたった10%が持っています。
これほど分かり易い愚かな選択はありません。
砂漠の大陸では5秒に1人、子供が死んでおりますのに。
これらはともすれば進化論上の自然淘汰なのでしょうか。
そして私もやはり、4丁目のロー○ンのおでんより、3丁目のロー○ンのおでんのほうが美味しいと選択し、胸を張ってしまうのです。
休憩を挟みまして、次は選民思想における人殺しと英雄の違いについて論じましょう。
食堂の自動販売機にはコカコーラとペプシコーラをご用意しております。
その間、一体どれだけの人が、選択は向上だと正しく認識できているのか、そして一体誰が選ばれた民だというのか、この悪魔めは考えるのです。