お暑いのでどうぞ
1話完結のホラーです!!
耐性のない方はご遠慮ください。
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霊媒師なんて信じていなかった。
でも我が家で起こる余りにも不気味な現象。
それは、
母が度々、台所で指を切る。
包丁が勝手に動くのだと、母は言う。
父親は風呂場で滑り、左人差し指と中指を骨折。
一年前にも同じ箇所を折った。
急に指の感覚がなくなり、転んだのだと父は言う。
私は玄関の扉で指を詰め、全治1ヶ月の傷を負った。
扉が自動で動いたとしか思えなかった。
これだけ続けば何かしろの怨念があるのじゃないかと皆思う。
それは、去年亡くなった祖母のいく子だ。
みな、そこを考える。
バカな話だが、私たち家族は霊媒師を呼んだ。
それ以外に頼る術がないからだ。警察なぞまるで当てにならない。
そしてやってきた霊媒師の名は……….。
名詞の名は、いかにもと言うか………まあいかにもだった。
霊媒師 霊宮 史朝
「偽名です。霊たちに名を覚えられると何かと面倒なので」
そう言って出した名刺を引っ込めたその男は、
身なりの良いサラリーマンの様。
そこそこいいブランドのスーツ、メガネ。
眼光は鋭いと言うよりは、ぼやっとしていた。
でもその所作はキビキビと、職人のような手つきだった。
「皆さん、指に怪我をなさっているんですね」
「そうなんです、皆、左手なんです」
「この家で亡くなられた方は」
「祖母の、いく子です。でも仲睦まじくやっていました」
「部屋を見せてください」
「ここは、いく子が亡くなってからは誰も使っていません」
「でもあなた方は、いく子さんに原因があると高を括っているわけだ」
「………それは………。いく子の他に誰も亡くなっていませんから………」
霊宮は部屋をざっと見渡し、入り口横のタンスに目をつけた。
「ここですかね」
母が答えて言う。
「何がですか?」
「あなた方………ああ、あなたはいく子さんの娘さんですね、あなた、いく子さんから何かを奪い取ったでしょう」
「………えっ?そんなことはないです、部屋はそのまま、預金には手もつけてません」
「いや………奪った。この遺物からすると………指輪?いや違うネイル………マニキュア?」
母は何かを思い出したようだった。
「あっ………」
「あなたは多分、衛生面か認知症か、何らかの理由で、いく子さんにマニュキュアを止めさせたのでは」
「いやっ………あの」
「ほら」
そう言って霊媒師はタンスから、緑色の四角い缶を取り出して開けた。
そこにはびっしりと………爪が詰まっていた。