お暑いのでどうぞ指差し
 

1話完結のホラーです!!不安

耐性のない方はご遠慮ください。

 

 

 

………………………✂️………………………

 

 

 

 

 

霊媒師なんて信じていなかった。

 

 

でも我が家で起こる余りにも不気味な現象。

 

 

 

それは、

 

 

 

母が度々、台所で指を切る。

包丁が勝手に動くのだと、母は言う。

 

 

父親は風呂場で滑り、左人差し指と中指を骨折。

一年前にも同じ箇所を折った。

急に指の感覚がなくなり、転んだのだと父は言う。

 

 

私は玄関の扉で指を詰め、全治1ヶ月の傷を負った。

扉が自動で動いたとしか思えなかった。

 

 

これだけ続けば何かしろの怨念があるのじゃないかと皆思う。

 

 

それは、去年亡くなった祖母のいく子だ。

みな、そこを考える。

 

 

バカな話だが、私たち家族は霊媒師を呼んだ。

それ以外に頼る術がないからだ。警察なぞまるで当てにならない。

 

 

そしてやってきた霊媒師の名は……….。

名詞の名は、いかにもと言うか………まあいかにもだった。

 

 

霊媒師  霊宮 史朝

 

 

「偽名です。霊たちに名を覚えられると何かと面倒なので」

そう言って出した名刺を引っ込めたその男は、

 

 

身なりの良いサラリーマンの様。

そこそこいいブランドのスーツ、メガネ。

眼光は鋭いと言うよりは、ぼやっとしていた。

でもその所作はキビキビと、職人のような手つきだった。

 

 

 

「皆さん、指に怪我をなさっているんですね」

 

「そうなんです、皆、左手なんです」

 

「この家で亡くなられた方は」

 

「祖母の、いく子です。でも仲睦まじくやっていました」

 

「部屋を見せてください」

 

 

 

「ここは、いく子が亡くなってからは誰も使っていません」

 

「でもあなた方は、いく子さんに原因があると高を括っているわけだ」

 

「………それは………。いく子の他に誰も亡くなっていませんから………」

 

 

霊宮は部屋をざっと見渡し、入り口横のタンスに目をつけた。

 

 

「ここですかね」

 

母が答えて言う。

「何がですか?」

 

 

「あなた方………ああ、あなたはいく子さんの娘さんですね、あなた、いく子さんから何かを奪い取ったでしょう」

 

「………えっ?そんなことはないです、部屋はそのまま、預金には手もつけてません」

 

 

「いや………奪った。この遺物からすると………指輪?いや違うネイル………マニキュア?」

 

母は何かを思い出したようだった。

「あっ………」

 

 

「あなたは多分、衛生面か認知症か、何らかの理由で、いく子さんにマニュキュアを止めさせたのでは」

 

「いやっ………あの」

 

 

 

「ほら」

 

 

 

そう言って霊媒師はタンスから、緑色の四角い缶を取り出して開けた。

 

 

 

 

 

 

そこにはびっしりと………爪が詰まっていた。