「たっちゃん、引っ越すのは東京よ。うれしいでしょ」
「いーちゃんやけんじくんは?」
「それは………会えなくなるけど、また友達はたくさんできるよ。たっちゃんなら」
……わかっているか?
わかっているか。大人たち。子供は戦場で生きているんだ。
わかっているか。大人たち。子供は顔やスポーツだけであらゆる事が決められるんだ。
わかっているか。大人たち。子供はまず法廷に立てないんだ。
わかっているか。大人たち。
本当に分かっているか?かけがえのない、子供の頃の宝もの、
その居場所と友達を平然と奪うこと。
課外授業のお絵かきはみんな楽しそうだった。
僕は一人で皆から離れた樹の下にいた。
田舎の空も東京の空もたいして変わらない。
もう宝ものをつくる気もない。
キャンバスをただ青で塗って「空」だと、先生に言えばいい。
ふいに知らない同級生と目があった。
その娘はすたすたとこちらに歩いてきた。
太陽がかぶって顔はよく見えなかった。
でもその娘が笑っているのはわかった。
その娘は僕の横にしゃがみこんで言った。
「何を描いているの?」
何故だか、何故だか、
僕は声を出して泣いた。