黒身妖(こくしんよう)の取り巻き、姉様方が羽根を震わせた。
ヘリコプターの様な音が耳をつんざいた。
あーあー。うるさいうるさい。あー。
「貴様!まだ我らを侮辱するか!!小娘が!!」
「人間よ!!シロバコを戻せ!!契りを破るのか!!」
「(おい、猟銃はいくつ集まった?)」
「(大地のじじいよ。いよいよとなれば火を起こすぞ。いいな?)」
カコーン
「おのれ髪長氏の一族、悪魔の一族め。ここは我らの土地だぞ!!」
「悪魔はお前らだろうが!!被害妄想の昆虫どもが!!」
「お前らは略奪者だ!!我々の土地を奪いおって!!」
「人間の皮を被ってコソコソしやがって!!カマキリの姿で町を歩け!!」
カコーン
「森では我らの方が強い!!人間よ!!お前らの森で刃を磨いておく!!」
「いつまでその脅しをするつもりだ!?ひつこいぞ!!」
「我らは数百年も虐げられているのだぞ!?」
「だから契りを交わしただろうが!!いつまでそれを言う!?」
「その契を破ったのはそこの娘だろうが!?お前らが世界の中心だと思うな!!」
カコーン
「………」
「…」
「………美香。何しとる?」
「サッカーの練習。どぞ。そちらは続けてください」
あたしは片っ端からシロバコを崖に蹴っ飛ばした。
カコーン
「このお○△!!!何をを✗✗どなか○✗□てっろろうと!!!!??+?」
「おい!!!小娘□□○に△さふぁこの」
「○△!!!何をを✗✗どなか○✗!??+?っろろう!?」
あーあ。うるさいな。もうどっちが話してるかわかんないよ。
あれ、ん?これは黒身妖の羽音?
………大地のブザーを押した様な、1秒間に何万回も舞う天使の翼の様な、美しい音色がした。激しくて、優しくて、何だか高揚して、目の前が涙でぼやけてしまう音。
みーんな黙っちゃった。
でもあたしは黙らない。
黒身達の母上。さんきゅ。
「………ほら。黒身妖。もうあたし達を襲えないでしょ。少し安心したでしょう?」
暗がりからカマキリの姿のままの早苗が出てきた。
「………姉様方、この者と話をさせてくれませぬか」
早苗。おっそいよ。私はそろそろ死ぬ準備をするよ。
………てかっ死んだ事ないんですけどっ!?
準備って何だ??
………。
ジュラニギャミチュ。ジュラニギャミチュ。早苗の娘。
………いつの時代にも、生き物にも、割りを食うのは子供だよね。
(つづく)
※写真は加工したもの、またはAIに描かせたものです。