京香姉ぇと「林業組合」が黒氏洞穴前まで登ってきた。
「こんばんは。京香姉ぇ」
………般若みたいな顔になっちゃったね。
林業組合のおじい、おばあも、しかめっ面。
京香姉ぇは昔からスイッチが入ると止まらない。
負けず嫌いというか………プライドが高いというか。
今は復讐の鬼だね。
京香姉ぇは般若のまま言う。
「お前は昆虫に入れ込んで、父さんと母さんを見殺しにした」
「そこは、うん。もう言葉でやりあったって無理だね」
「あのカマキリは許さない」
「早苗のこと?」
「昆虫に名前があるか。病院で糸を引いてた奴だ」
「そこも………もう言葉でやりあったって無理だね」
「………で、美香、お前………これは何をしている?」
京香姉ぇ、林業組合と黒身たち皆んなが口開けてる。
こりゃ絶景だ。
「………ぎぎ、ぎじ?………!?おい!?人間!!何をしておる!?」
「………な、何しとる?屋白の孫、お前、………何しとる?」
「………ぎ、ぎじ、母上様。母上様。こちらへ」
「美香??え?何をしてる?え?親父?何これ?」
「………ぎ、母上様。社の人間がおかしな事をしております」
そう。………黒身妖(こくしんよう)
貴女が出てこないと。
このシロバコをつくった張本人が。
だけど、あらためて見るとでっかー。大木だこりゃ。顔もこえー。
いやーでもそれはみんなカマキリ顔か。
でも早苗は分かる。盆地に戻っていたんだね。
ほら、みんな見て。よーく見て。
髪子(かみんこ)の儀ができてから700年。
こんなことがあったのかしら。
ほら。
黒氏洞穴の中にあるシロバコをぜーんぶ外に出した。
そしてぜーんぶ蓋開けて中身はぜーんぶ崖に捨てた。
「こんなハコ要らない。どう、黒身妖?もうどの人間を襲ってもいいよ?」
(つづく)