過激な表現を含みます。

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へえ。私か。律子です。

 

 

 

気に入らなかったから由加の旦那と娘、殺しちゃったよ。

死んでから糸ノコで二人の頭を切ってグランドピアノの上に置いといたよ。

『お願いだ!娘だけは………』

そういう台詞が一番ムカつくってわかんねーかな。

 

 

アホでモテない建築士。ソープ嬢に入れ込んで結婚かよ。

将来、娘になんて言うつもりだったんだ。

 

 

しかし………。何故こんな残酷な風景になった?

中東の首切り映像ほどひどくはないのに。

 

 

あいつらは生きたまま切る。

私は死なせてから糸ノコだ。

こっちのが遥かに顔色がいいけど………。

………分かった。

 

 

地球の裏側の戦場と裕福な日本のグランドピアノの上。

そら違うわ。

戦争は一杯殺さないと出世できないからね。 

 

 

………鍵盤の隙間から血がにじみ出てきた。

私は力なく笑った。美しい。

 

 

少し鍵盤を押してみた。音は問題ないようだ。

私は椅子を引いて座った。

二人の顔は目の前だ。

 

綺麗な顔をしている。眠っているようだ。

私はピアノはできない。でもこの位なら………。

 

 

12階の開け放たれたバルコニー。

白いカーテンがゆらゆらと、一年で一番心地よい風が吹いてくる。

 

 

私は『きらきらひかる』を3回ほど弾いた。

でもあまりに下手なので辞めた。

 

 

そして何故か「翔兄ちゃん」と口からこぼれた。

 

 

あのアホ嫁由加との約束は15時だ。

血みどろを着替えて化粧ぐらいする時間はある。

 

全て時間を計算してやったからな。

あのアホ嫁由加が外出する時間もお見通し。

 

ソープ街に近い時計台の下で待ち合わせた。

 

 

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「久しぶり。………律子、大丈夫?」

「大丈夫だよ。こないだはごめんね。由加。なんだか不安定だったの」

「いや、いいの。律子の元気そうな顔を見れたからよかった」

 

「………あそこのパフェ美味しいらしいの。由加。行かない?」

 

 

「大きいねー。チョコクリームの上にグレープフルーツがまるごと乗ってる。

綺麗な赤色。(笑)律子は太らないからいいよねぇ」

 

 

「なんで太らないと言うの?」

「あ………え………仕事があるから。」

 

 

「へぇ。面白いでしょ。パフェにグレープフルーツがまるごと乗っかってるなんて。キレイでしょ」

「………あ………ごめんね………なんか自分がソープやってた頃を思い出しちゃって」

 

 

「気にしないよ。美味しいよね。コレ。ちなみにこのグレープフルーツ、何色に見える?」

「え、赤だよ」

「………へぇ」

 

 

私から見たそのグレープフルーツはどう見ても青色だった。

「由加、………家族の話してよ。私いないからさ」

 

 

「旦那は今日は休みだね。年末全く休めなかったから」

「ふーん」

「娘は最近、ピアノを始めたの。そしたら旦那がいきなりグランドピアノ買っちゃって(笑)」

「へぇ」

 

 

私は心の中で笑いが止まらなかった。

 

 

 

 

(つづく)