それは「赤」で発動する。
「赤いものに触れないで生きていくなんて無理だよ………ここの伝票だって赤いペンで書いてある」
「テレビのリモコン?あれの電源ボタンも赤だ。触れたら即死」
「………ポストとか?バス乗り降りする時も足元に赤いラインがある」
「ティッシュとか手袋をして触ればいいんじゃない?」
「それを試すのは命懸けだ。やるべきじゃない」
「定期券………。スーパーのお肉………」
「換気扇のボタン………。お湯の蛇口、給湯器のタッチパネル………」
「スマホの画面なんて赤だらけだよ………」
「やばいな………。普段、赤色の物なんて意識して生活しない。無意識に触ってしまう可能性が高い」
「でも、(声)を聞かないと(赤)に触れても大丈夫なんですよね」
「………今やってみるか?」
「いや………」
「ボクがやるっ。このディナーメニューの赤表記をポーンと。」
「呪いが確実なら今、何らかの理由で死ぬ。この場合、心臓麻痺か」
「あれあれま大丈夫っ」
「呪いはまず(声を聞くこと)、そして(赤に触れること)で発動する、でいいんでしょうか」
「まずそうだろうねっ」
「声はどこから聞こえるんだろう」
「川乃ちゃん以外に共通するのはあのT字路、ってことになるね」
「じゃあ、あそこに行かなければ?」
「それはそうなんだけどっ………じゃあ何故死ぬのが11人なんだ?ボクらは含まれていないのか………」
「ちょっとトイレ」
「………用心してくださいね」
「何をだよ」
「一体誰なんだろう。私たちをこんな目に合わせて何か得があるのかしら」
「そこは小野寺修也ちゃんが言ってたとおり、人間以外の何かであることは間違いない。だから目的なんて僕らの思いもよらないことなんだろうっ」
「貴方は怖くないの?」
「全然怖くないね。むしろ獲れ高が大きい方がやる気がでるっ」
「獲れ高ってなんですか」
「数字だよ。お金にも直結するけど、僕らは誰がどんだけ見てくれたか、其のために存在してるっ」
「危ない人………」
「いよしっ。できた。今までの犠牲者6人とその傾向をエクセルでまとめたよ。ほら見て」
「………わかりやすいですね」
T字路は交通事故で腹を掻っ捌かれている人が多いけど、修也ちゃんだけは違う。
また、川乃ちゃんは別の場所で声を聞いて自宅マンションエレベーターで心臓麻痺。
それらを鑑みると、やはりこの赤が臭い。んでもって私ら全員足しても11人ならない。これはどーゆーこったっ」
「そうですね………確かにそう、てかこの堺ゆり子さんて誰ですか?」
「ボクの、かのぴっぴだよ。もう巻き込んじゃってる」
そこへ館山恭一郎が駆け込んできた。
「やられた!!」
「え?」
「声だ。声が聞こえた!」
「なんて?」
「………七人目」
「ちょっと待って。どこで?どこで言われたのっ??」
「カフェ出て右に行ったところのトイレ前………ちょうど盆栽フェアがやってて」
「そこかっ!!」
「なに??」
「あのT字路とここの盆栽フェアに共通してあるモノと言ったら………」
「木、葉、もしくは苔っ」
「どれ??」
「………苔だろうな。小野寺真也は最後に苔むした六地蔵を見てた。………俺、植木鉢なんて予想もしてなかったよ………」
私の中では修也さんが最後に聞いた声「11人死ぬ」が、「11人殺す」というふうに聞こえてきた。
何者かは、明確な殺意を持って私たちをなぶり殺すつもりだと。
ボクの中では何かが引っかかる、何か創られたかのように話が進んでいる。
何者かは、ボクたちが思っているより厄介なものかもしれないっ。
俺しか川乃の仇は取れない、その俺が最も弱い立場になった。
赤いものに震える日々が………。
(つづく)