「死んだ部下の吉岡川乃もね………。ここからの帰り道、何かを聞いたって言っていた」
「何を聞いたかはわからないんですね」
「わからない。この話はここの現場検証の後、帰宅する川乃本人から電話で聞いた。川乃自身がこのT字路で何かを聞いたわけではないと思う。きっと別の場所だ」
「なんだろう………」
「まず、最初の名無しの三人はよくわからないが、事故死なのに腹が掻っ捌かれていた。しかしこれは詳細が分からない。
真也さんの場合は何かを聞いて、T字路の真ん中へ何かを取りに行って事故死。腹は掻っ捌かれていた。
川乃は………。どこかで声を聞いて、自宅エレベーターで心臓麻痺を起こした。腹は掻っ捌かれていない。」
「全体の関連性がわかりませんね」
「全員、声を聞いたのかな………」
「てか何にしろ、兄はここで声を聞いたんだろ?このままここにいたらマズイんじゃないのか?」
「そうだな。もう撤収しよう。車に乗ってくれ」
「あ」
「どうした?」
「いや今、耳元で誰かが………」
「誰も何も言ってませんよ………。って、それ!!」
「11人が何とか」
「声が聞こえたのか??」
「あ、蚊だ」
そう言って修也さんは自分の頬を右手で叩いた。
そしてその手のひらを見た。
「はは、血吸ってら………」
その瞬間、地面が大きく唸り、耳をつんざくような轟音がした。
私たちは何が起きたか分からず、地面に倒れる様にして手をついた。
そしてドドドドドドという音と共に、六地蔵の上の雑木林から大量の土砂が落ちて来た。
六地蔵も、そして修也さんも倒れる様にして一瞬にして飲み込まれた。
揺れは収まらない。
しばらくして私は何とかフラフラと立ち上がり、修也さんを掘り出そうとしたが館山に止められた。
「馬鹿!まだ崩れるぞ!」
「だって早くしないと死んじゃう!」
落石防止のコンクリートやフェンスは全く機能しておらず、それらが軋むギィイイイギイギという音が響き渡った。
六地蔵はバラバラになっており、修也さんが埋まってしまった箇所の頭上には、大きなコンクリート片と落石が控えていた。
「消防に電話します!」
「ちょっと待て!俺はここを離れる。今、警察に見つかるとまずい」
「そんなこと言ってる場合ですか!」
「川乃は俺の大事な女だ!ここで引き下がれるか!お前だって俺がいなきゃ何もできないだろ!」
「でも監視カメラに写ってるじゃないですか!」
「お前は気づいてないだろうが、俺はここに来てからずっとカメラを避けてる」
「明日の昼、道舟街のマリンダカフェに来い!!」
「修也さん!!??修也さん!!聞こえる??聞こえる??………11人が何………?? 11人が何なの??」
館山が車に乗り込みながらつぶやいた。
「………11人死ぬということか」
(つづく)