んーんんん♪

 

 

真夏の公園のベンチ。

その木陰で僕はアイスを食べていた。

暑すぎて他に誰もいない。

 

 

セミだけが鳴く、静寂。

 

ああ、

 

木漏れ日だな。入道雲、澄み渡った青空。少し温めの通り風。

 

 

美しい。1年で1番美しい景色だ。

アイスがとけるのが残念だけど。

 

 

娘と嫁が自転車でやってきた。

娘は元気だ。

 

 

「おじさん、プール終わったよー!」

「加奈、お父さんって言いなさい」

 

「うんうん。わかってる。見て見て~」

娘は後ろから私に抱きついてきて、判子が押されたプールの出席表を見せてきた。

 

 

「………1度も休みがないね。すごいね」

この子は褒められると伸びる。

「やったー!でしょう!すごいんだから!ねー!………でも暑い~早く帰ろうよ~」

 

 

「こんな所で何してたの?あなた」

「いや………アイスを食べていた」

「帰りましょ。自転車は後で私が取りに来るから」

 

 

三人で手をつないで公園を出ようとした時、僕はふとベンチを振り返った。

そこには昔の僕が座っていた。

 

 

彼の見る景色は美しかったろう。

 

 

でも………私達も、この血縁を超えた家族も、美しくはないか?

 

 

セミだけが鳴く、静寂。

公園のゴミ箱にはアイスの「当たり棒」が入っていた。

 

 

んーんんん♪

 

 

穏やかで静かで尊い、娘との昼寝。

 

んーん………

眠たぃ

 

 

 

 

(2025/07/23加筆)