散文です
………………………✂️………………………
『或る名無しの遺書』
私が貴方に伝えたいこと。それはたったひとつです。
何もかも捨てて私の元へ来てください。
何もかも捨てて私と生きてください。
そうすれば
私は自分の存在の全てをかけて貴方と生きましょう。
身体も、精神も、良い心も悪い心も、全てをかけて。
そこには愛があるはず。
………いや、多分これは違うのでしょう。
条件付きの愛など愛ではない。
貴方を包む全てのしがらみを振り払い、貴方が私の元へ安心して駆けてこれるように。
それこそ命をかけてやる。それが愛。
だから私の愛は愛ではないのでしょう。
愛の皮を被った只のわがまま。
だけども
貴方の側には誰かがいらっしゃる。
私を愛すと言うのなら、どうしてそれを解決しないのか。
私は理解に苦しむのです。
私ならばその誰かにすぐにでも別れを告げ、貴方の元へと駆けていく。
金銭や荷物はそんなにすぐに解決できない問題ですか。
時間が必要ですか。その時間は私を苦しめると分かりませんか。
また自分本位になってしまいました。
私は所詮………ああ、今度は卑屈だ。
私は誰かの人生を彩る存在にはなれない。
もはや夜明けも近づいた、死にましょう。
(都井睦雄の遺書から一部拝借)