紫陽花をモチーフにした梅雨の短編を、7話構成で修正再掲したいと思います
よろしくお願いします。
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あじさいの前で座る君………。
だあれ。
どうして背を向けているの?
どうしてここにいるの?
その黄色いフードをとってみて。
あれ?
いつものシーツの香りがしない。
あんなにこだわった柔軟剤で、量の配分も試し尽くしたのに、なあに、この味気のない香り。
ああ、でも病院か。仕方ないね。
コーンポタージュの香りがする。今日はパンかぁ。
………このノートは何かな。
私の日記か。
綺麗な病室だこと。
1人は少し寂しいけれど。
そんなに私は重症なのかしら。
不意に、白い髪を真ん中から分けた初老の男性が病室に入ってきた。
優しそうな笑顔。お目々がクシャッと閉じている。
背が高くて、柔らかなほうれい線があって、手がゴツゴツとしている。
白衣が良く似合っていて、何だか、この先生?には何でも話してしまいそう。
私の中の大きな秘密や、小さな秘密。
口にしたくない女々しさや、ついつい出る図々しさ。
他人の為に用意したハイヒールと、バスタブで浮かべる黄色のアヒル。
同僚と行くパサパサのバイキングと、大好きなコンビニのプリン。
大人としての笑みを浮かべて、夜にはまたバスタブで口をブクブクと。
音で誤魔化してさ。泣く。
「私の先生ですか?」
「そうです。食器を下げましょうか」
「ああ、ありがとうございます。私は何の病気ですか?」
「今は少し休みましょう。食事はとれていますね、後は安静に」
「何の病気ですか?」
「今日はゆっくりなさって下さい。また明日、伺います」
私はどこが悪いのだろう? どこも痛くないけど。
でも眠い………。
あれ?
………いつものシーツの香りがしない。
綺麗な病室だこと。
そんなに私は重症なのかしら。
あれ?
どうして病院?
黄色いアヒルとコンビニのプリン。
年の割の女々しさとゴツゴツしたバイキング?
あれ?私は?どこ?
このノートは何??
(つづく)