ショートストーリーの4+、最終話です。
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深夜の河の上流。
二つの小さなテントと、荒々しく燃える焚き火。
そこに円を描くように横になっている5人の男女。
彼らは4人しか乗れない軽自動車で、4人しかメンバーがいない大学の釣りバカ☆サークルで清流へ釣りに来たのに、焚き火を始めたら何故か5人に増えていた。誰が増えたのか、目的が何なのかはわからない。
そして今、何者かが眠りかけている彼らひとりひとりの枕元を回り、本人が言われたくない痛いところをついた話をして回る。
言葉をうけ、鼻の頭に何かの水を垂らされた男女は、次第に顔がビニール袋が被されたように白くなる。
その透明な物質は繭(まゆ)だった。昆虫が成虫になるときに使うもの。
いつしかその繭は全身を覆い、泣いているように思えた男女たちはゲラゲラと笑い出した。
腹部が破れ、その中からは得体のしれぬ何かが生まれようとしていた。
森に向かってひざまついた人物は「セキ鳩よ」とつぶやいた後、詩のようなものを呟き始めた。明らかに日本語ではなかった。
そこへぽかーんとしたD美が立ち尽くしていた。
ひざまついていた人物はとてつもなくびっくりし飛び上がった。
「………………!!!???何だ??お前!!なんで立ってる!!!???」
D美もとてつもなくびっくりして飛び上がった。
「ええぇえええええええ………アンタ、何それ??????」
「ってええええええ、眠らしたろ!心も折った!オガラ水もかけたぞ!!!」
「ってアンタ、河童??????河童なの????かっぱぁああ???」
「ああ河童だよ!!河童だよ!!E雄だよ!いやいやいや、お前、インテリぶって、みんなに嫌われて、みんな口喧嘩で勝てないから陰口言われてたろ!!!???それで心折れたろ???」
「そんなことそもそも知っとるわ!!」
「賢いふりしてるけどバカで、バカ乳のくせに!!」
「バカ乳はむしろステータスで誇っとるわ!!」
「えーーー!!あーそこか………あああ………折れなかった………やばいやばい、セキ鳩が来る!!」
そこへ、向こう岸の森から一匹のフクロウがもそもそと歩いて出てきた。フクロウ?いや身の丈は3mはある。目は黒く窪んでいた。羽は退化してる。そして足の指が左右合わせて14本あった。
(セキ鳩よ、セキ鳩よ、もう一匹足りない、少し待ってくれ)
(待てない。夜が明ける)
(でもこの女の心が、折れない。もう少し待ってくれ)
「なに………?このフクロウは何を言っているの?」
「セキドリ様だ。セキ鳩様はイナツメの夜に、4つのカッパを食う。食わせないとこの河は枯れるんだ………」
(4つおるではないか)
(って4つって俺を合わせて???)
(そうカッパ、お前を合わせて4つだ)
「ちょっと待って!!みんなカッパになっちゃったの??なにあの繭みたいなの!」
(喰う)
「え?え?人間を河童に変えてバケモノフクロウに食べさせてたの??」
「この河が枯れたら何億って生き物が死ぬんだ。仕方がないのだ」
「これは………この状況は………ひとり多いんじゃない………………ひとり足りないんだ!!どうすれば………」
(セキ鳩よ。この女は折れない。オガラ水も効かない。私が代わりになろう。だが娘のちぇすめだけは生かせてくれ。この河で最後の河童だ)
「ななな何の話ししてるの!ちょっとあんた!なにか方法はないの??あいつ見た目より弱そう!!」
「河が枯れる。もうこれしかないのだ」
「ちょっと待って!私が何とかする!この子らを助けて!カッパになっちゃったけど、釣りバカ⭐︎サークルは私のたったひとつの居場所だったの!」
(ほーーーーーーー
ーーーーーーーーう)
(何とか、か)
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今日はカワセミ⭐︎撮影隊サークルで遠征する事になった。
女2人男2人。
私は助手席。
川の上流へと向かうのだが、
ふと、木立の間から見える河原に変なものを見た。
すると急に私の後ろに乗っていたインテリのD美がゲラゲラと笑い出し、おかしなことを言い出した。
「カッパ見ちゃったら、もう助からないよ」
「カッパ見ちゃったら、もう助からないよ」
どうしたのD美??・・・??・・・てか・・・あなた誰?