稲垣大輔です。

過去記事でもそうなのですが、地球環境と自動車技術の発展について考えると思わず熱くなってしまう今日この頃です。
特にCO2排出量削減に関わる最近の報道や、周りの方の感想について思うところがあったので筆を取ってみます。

※過去記事※
https://ameblo.jp/not-biz-but-love/entry-12721260509.html


◆はじめに
株式会社Beは気候変動対応として、温室効果ガスの一つであるCO2削減に向けた活動をしています。温室効果ガスの中でもCO2が占める割合は全体の76%にも及ぶと言われ、CO2排出量を削減することは非常に重要と考えています。

株式会社Beが取り組んでいる気候変動対応については、私のnoteにまとめてありますので、お時間ある時に読んでいただければ幸いです。。

未来の地球のために、わたしたちが「今」行動すべき理由と具体的行動の紹介<前編>
https://note.com/be_inagaki/n/n971aa2edf3a9

未来の地球のために、わたしたちが「今」行動すべき理由と具体的行動の紹介<後編>
https://note.com/be_inagaki/n/n2977dc8f1371


政府の発表やメディアの報道では「日本の自動車業界の気候変動対応の取り組みや技術の普及が、世界、特に欧州や中国に比べて大きく遅れている」という印象を受けてしまいますが、私個人の見解では逆に「日本の自動車業界の方が、世界各国より真剣に気候変動対応に取り組み、実用的な技術を普及させている」と感じております。

そこで今回の記事は、下記観点をふくめた、CO2削減に向けた自動車業界の動向と、私の意見について書きます。
・CO2削減を達成するために実践しようとされている方法
・車からCO2を多く出さないための改良方法
・車の改良以外ではどんなことを検討する必要があるのか

◆世界におけるカーボンニュートラル(CO2削減)の動向と自動車業界
まず、世界における、CO2などを含む温室効果ガスの排出量について現状をまとめます。

世界の温室効果ガス排出量は、2019年は約335億トンとなっています。
国別の温室効果ガス排出量に着目すると、多い順に中国、アメリカ、インド、ロシア、日本の順で排出量が多い国となっています。
温室効果ガスには​​二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、フロン、代替フロンその他の温室効果ガスが含まれていますが、割合としてはCO2が一番多いとされています。

データ出典:全国地球温暖化防止活動推進センターホームページより
​​https://www.jccca.org/global-warming/knowleadge04
https://www.jccca.org/global-warming/knowleadge05


世界では現在、120カ国以上の国と地域が2050年までにカーボンニュートラル実現を目指しており、中国は2060年、インドでは2070年とすべて含めると全世界の約3分の2がカーボンニュートラル実現に向けて動いています。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするものです。
「排出を全体としてゼロ」というのは、経済活動などで二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが排出された「排出量」 から、森や林などを人為的に整備して温室効果ガスを吸収させる「吸収量」 を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。

参考:https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/

取り組みとしてガソリンエンジン車の販売禁止や、EUやカナダなどでのPHV(プラグインハイブリッド自動車)も含む販売禁止などの取り扱いをする国も出ており、各国でさまざまなスタンスがあります。



◆日本におけるカーボンニュートラルの動向と自動車業界
上記で取り上げたように、世界第5位の多さでCO2を排出している日本。
日本におけるCO2排出量のうち、自動車を含む運輸部門からの排出が17.7%を占めています。

そんな状況を踏まえ、2020年10月に菅元首相が「我が国は2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と表明されました。


日本では、乗用車は2035年、小型車は2040年までに新車販売を100%電動車や脱炭素燃料車にすると目標設定をしているのです。

またカーボンニュートラル達成に向けて世界各国では、ガソリン車から電動車へのシフトチェンジ<電動化>が進んでいます。

日本では菅元首相が発表した2050年に足並みをそろえて目指しており、ドイツのDaimlerでは2039年までに、米国のGMでは2040年までというように企業によって目標年数は変わりますが、電動車へのシフトチェンジはそれぞれの企業で中長期目標として掲げられています。




◆電動車の種類
一言で「電動化」といってもさまざまな手法が存在します。
電気を動力源として使う自動車を「電動車」と呼びますが、動力源の100%が電気である「電気自動車(EV)」のほかにも、ガソリンと電気の両方を使う「ハイブリッド自動車(HEV)」や「プラグイン・ハイブリッド自動車(PHEV)」、水素を使って電気をつくる「燃料電池自動車(FCEV)」があります。

これらの電動車には、それぞれに長所と短所があります。
たとえば、EVは走行時のCO2排出はゼロですが、コストの高さ、航続距離が短いなどの短所があります。また、搭載する電池の製造過程ではCO2が排出されます。


引用:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/xev_2022now.html(自動車の“脱炭素化”のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?/出典元:経済産業省 製造産業局 自動車課)


・その他CO2削減を目的とした手法
燃料をガソリンからバイオ燃料や、CO2を資源として活用し、水素と組み合わせて製造した「合成燃料」などに置き換える方法も考えられています。


◆電動化の課題点
自動車によるCO2排出は「走行時」のみ注目されがちですが、車自体の製造から廃棄までの一連の過程でCO2を排出しています。

特にEVを作る時の二酸化炭素排出量が多く、CO2排出量削減には、再生可能エネルギーから取り出した電気で10万km以上走行して、初めて現行のガソリン車に対するCO2排出量削減が見込めると言われています。

このように、製造から廃棄・リサイクルに至るまでの一連のライフサイクルにおける環境負荷を考慮して、最適な車両選択を行う必要があります。

具体的な問題点や現状について、それぞれの場合について簡単に紹介します。
1:技術力で世界をリードしているが普及が遅れている(と思われている)日本
2:大量生産・消費国である中国
3:EV先進国と言われてるノルウェー


1:日本でEVを広めていくことの主な問題点

・充電インフラの整備不足
EVの普及には充電インフラの整備が不可欠ですが、現状では充電スポットが不足していることが課題となっています。また、充電時間が長いことや、急速充電時に発生するバッテリーの劣化についても課題があります。

・EVに関する情報不足
一般の消費者にとって、EVに関する情報が不足していることが課題となっています。具体的には、EVの種類や性能、充電方法、メンテナンスなどについての情報が不足しているため、EVに対する理解や関心が低いとされています。

・高コスト
EVは、現在のところ内燃機関車よりも高価であるため、消費者にとっての負担が大きいことが課題となっています。また、バッテリーの交換やメンテナンスにかかるコストも高いとされています。

・エネルギーの供給・需要バランスの調整
EVの普及によって、電力需要が増加することが予想されます。そのため、電力会社が需要と供給をバランスさせるために必要な調整機能の整備が必要とされています。

・電力源の問題
EVの普及によって、より多くの電力が必要になることから、電力源についての問題が浮き彫りになっています。具体的には、原子力発電所の問題や再生可能エネルギーの整備などが課題となっています。


2:中国におけるEV化の問題点

・EVの過剰生産
中国政府が、環境保護やエネルギー安全保障を目的に、EVの普及を促進しているため、EVの生産量が過剰になっているとされています。しかし、需要が追い付かず、EVの在庫が過剰となり、多くのEVが未使用のまま放置される状況が生じています。

・品質の低さ
EVの品質が低いことが問題となっています。具体的には、充電器の不具合やバッテリーの故障、走行距離の短さなどが挙げられます。また、製造過程での品質管理の不備や、部品の不良品が使用されていることが原因とされています。

・サプライチェーンの問題
EVの生産には、多くの部品や材料が必要となりますが、その供給に関する問題が生じています。具体的には、リチウムやコバルトなどの原材料の供給に不安定性があることや、部品メーカーの破綻や倒産によってサプライチェーンが途絶することが問題となっています。

・EVの解体問題
EVの電池は、使用済みになった場合に適切な処理が必要とされています。しかし、中国では、EVの解体に必要な技術や設備が不足しており、EVの解体において環境汚染が生じることが問題となっています。



3:EV化が進んでいるノルウェーの現状
ノルウェーはEVの普及が進んでおり、EVは既に国内の自動車市場の50%以上を占めています。
一方でノルウェーは、世界有数の石油生産国の1つであり、石油やガスを輸出することで経済的な利益を得ています。しかし、これらの化石燃料の生産や輸出は、CO2排出量の増加につながることが指摘されています。

ノルウェー政府は、国内での温室効果ガス排出量の削減に取り組んでおり、EVの普及をはじめとする持続可能なエネルギー政策を進めています。しかし、一方で、化石燃料の生産や輸出によって、ノルウェーのCO2排出量は依然として高い水準にあります。

例えば、ノルウェーの石油生産は、エネルギー生産全体の約14%を占め、国内のCO2排出量の約27%を生み出しています。さらに、ノルウェーは石油製品を世界各国に輸出しており、これによって国外のCO2排出量も生じています。



◆カーボンニュートラル実現に向けた自動車業界の課題
カーボンニュートラル実現のために、単純にガソリン車から電動車(EV車など)に変えるだけでは問題があります。

例えば、乱暴な変更では社会に混乱を招いてしまうこと、
電動車の性能や使い勝手がまだガソリン車に追いついていない状況で電動車を推し進めることで、逆に使いたくないと反発を産んでしまうこと、などが考えられます。

具体的にどのような課題があるのか、簡単にまとめてみます。


・給油と充電の必要時間
EVでは「30分で80%程度まで充電できる」というのが充電時間の相場とされています。
ガソリンスタンドで3分で給油ができるとすると約10倍もの差ができてしまいます。
自宅で充電できるとはいえ移動中に充電が必要になったときにすぐ充電ができないのは致命的です。

・郊外の整備
電動車や脱炭素燃料車の販売に合わせて今あるガソリンスタンドをすべて変えるとなると、相当な労力が必要になります。

充電時間を短くするために電力を上げるなどの対策をすると大規模になってしまうため、車社会の郊外では早急に対策をしなければいけない問題ですが、道路の整備でさえ遅れている現状すぐに対応するのは現実的ではありません。

・中古品の寿命
バッテリーは消耗品なので使えば使うほど最大容量が減っていってしまいます。容量が減り寿命のきた電動車はエンジンの寿命が来たことになり、中古として売りに出しても今あるガソリン車の中古価格のような値段がつかない可能性があります。

・輸送時の矛盾
新車の輸送には大型船や大型トラックが利用されるため、輸送時の燃料や排気としてCO2の発生は避けられません。
最近はCO2排出量の多い船やトラックを使わずに、鉄道輸送に切り替える企業もあります。
しかし、どのような輸送方法を用いても、電気や燃料といったエネルギーが必要となることに、変わりはありません。

日本はエネルギー資源の依存率が高く、石油や石炭、天然ガスのほとんどを海外から輸入しており、どのような輸送方法を用いてもエネルギーが必要となってしまいます。



◆日本の自動車メーカーの動向や見解
日本の自動車メーカーは、カーボンニュートラル実現に向けて、以下のような動向や見解を示しています。

トヨタ自動車:2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指しており、電気自動車(EV)や水素燃料電池車の開発を進めています。また、車体の軽量化やバッテリーの大幅なコスト削減なども目指しています。

日産自動車:カーボンニュートラル実現に向けて、2030年までにEVとe-POWER(シリーズハイブリッド)を含めた電動車の販売比率を40%にすることを目指しています。また、バッテリー技術の改善や再生可能エネルギーの活用なども進めています。

ホンダ:カーボンニュートラル実現に向けて、2040年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指しています。EVや水素燃料電池車の開発を進めるとともに、自社で再生可能エネルギーの導入を進めることで、CO2排出を削減する取り組みを行っています。

スズキ:カーボンニュートラル実現に向けて、2030年までにCO2排出量を30%削減することを目指しています。軽自動車のEV化を進めるとともに、再生可能エネルギーの導入や工場の省エネ化なども行っています。

三菱自動車:カーボンニュートラル実現に向けて、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指しています。EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)などの電動車の開発を進めるとともに、再生可能エネルギーの導入や省エネ化なども行っています。

これらの自動車メーカーは、カーボンニュートラル実現に向けて積極的に取り組んでおり、自社の研究開発や生産活動において、省エネ化や再生可能エネルギーの採用に力を入れています。


◆最後に
長々と書きましたが、CO2削減の問題について日本の自動車メーカーは、カーボンニュートラルの実現に向けて全体を見て動いていると感じます。
上記でも紹介した通り、単純にガソリン車から電動車に変えるだけではダメだと考えられるからです。

社会に混乱を招いたり、中間コストとしてCO2を消費しないようにする仕組みも必要であるなどさまざまな問題が発生しないように総合的に取り組むべき、と思われるからです。
また、自国のことや自動車業界のことだけ見て判断するのではなく、地球全体のことを考えてどんな選択をするかが非常に重要です。

そうしたCO2削減、EV化は自動車業界だけの話ではなく、すべてのインフラや雇用、ひいては産業全体にかかわる話です。


一方で、日本政府やマスメディアの動きは、欧州の動きに迎合的な姿勢で目の前の数字のみ追いかけて煽っているように感じます。
例えば「トヨタはEV化に乗り遅れている。欧州の100%EV化施策が正」といった風潮の報道が多くなされている現状があります。
これまで書いたように、元技術者の視点で総合的に考えると非常におかしく、効果的ではないと感じるのですが、このような報道の積み重ねの結果、「日本は技術力は高いがEV化が遅れているため将来は厳しい」というような印象が蔓延してしまっている気がします。

今年4月1日にトヨタの豊田章男氏が社長を退任され、会長職へつかれましたが、その際の話にはこれらの日本の産業やマスメディア、政治の姿勢から見直す必要性を訴えているように感じました。


何かを行う時に、まず始めるということが大切ですが、それでも近視眼的に物事をみるのではなく全体・本質を見ることが大切だと考えています。
株式会社Beでも持続可能な地球の目標に向けて、全体・本質をみて長期的なアクションをしていきます。
そのためにも、「オーガニック認証が絶対」というような近視眼的なアクションではなく、以前私のnote(後述)で書いたように「オーガニック」「サステナブルな容器」がなぜ気候変動対応として効果的なのか?などの前提を把握し、地球全体を見て効果的なアクションとは何か?考え実行していきます。

なぜ気候変動対応が必要か?今の地球で起きていることと、未来の地球のためにメーカーとしてやるべきこと
https://note.com/be_inagaki/n/n92f07e91ed13

オーガニック認証を取得している商品が正解で、オーガニック認証を取得していない商品は間違いなのか?
https://note.com/be_inagaki/n/n030b27b0b4d0



■公式プロフィール
稲垣大輔(いながき・だいすけ)
株式会社Be 代表取締役
北海道出身
2002年、北海道大学工学部を卒業し、国内大手自動車会社に就職。
ブレーキ部品の設計および最先端エンジンの研究に携わる。
2012年にイベント会社を創業。
2017年に株式会社Beを創業し、現在に至る。

■関連メディア
◆アクティブオーガニックブランド「Be」公式HP
https://be-beauty.jp/

◆「Be」オンラインストア
https://be-store.jp/

◆「Be」公式インスタグラム
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◆株式会社Be社長 稲垣大輔のNote
https://note.com/be_inagaki