巨大化した蟻と蜘蛛とカタツムリ、そしてタコ | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

1950年代の怪獣映画はA級作品と呼べるものは全くなく、チーピーなB級作品ばかり。しかし、物語の基本パターンはこれらの作品で確立し、現在に引き継がれています。

『放射能X』(1954年/監督:ゴードン・ダグラス)

ニューメキシコの砂漠をさまよっている少女が救出されます。核実験の影響で突然変異した巨大な蟻に家族を襲われたショックで少女は記憶喪失。巨大な蟻塚が発見され、ガス攻撃によって蟻塚の蟻は退治されます。しかし、女王蟻は飛び去った後で、ロサンゼルスに巣を作っており……

・最初に怪物の姿を見せず、怪物の襲った痕跡だけを見せて謎と不安を盛り上げる。

・原因を調査するために科学者がやってくる。

・怪物の正体の予測がついた頃、怪物が姿を現す。

・科学者が怪物の正体を政治家に説明し、怪物退治の攻撃部隊が編成される。

・怪物対策は成功したかに見えるが、次の展開では今まで以上の危機が待ち構えている。

という怪物映画の基本通りの展開を、ゴードン・ダグラスは丁寧な演出で描いています。現在の特撮技術と比べると稚拙ですが、怪物の見せ方は巧いです。

 

『タランチュラの襲撃』(1955年/監督:ジャック・アーノルド)は、クリント・イーストウッドが出演していたことで知られる作品。

砂漠で異様に変形した男がフラフラ歩いてきて死ぬオープニングはグッド。死人は放射性同位元素を利用して将来の食料不足対策のために人工栄養素を作っている研究所の助手で、人体実験の副作用のせいだったのね。人体実験された男がもう一人いて、実験失敗を怒って所長(レオ・G・キャロル)を襲い、栄養素を所長に注射して死にます。男と所長が争っている時に、実験していたタランチュラが檻から逃げ出すんですな。

変形していく所長と巨大化したタランチュラの活動が見どころのはずが、死体に不審を抱いた医師(ジョン・エイガー)と新しく研究所の助手としてやって来た女性(マーラ・コーディ)との如何でもいいような話がダラダラ続き、スリリングな展開となりません。人間を襲うタランチュラも同じパターンの繰り返し。

研究所がタランチュラに襲われて所長が死に、医師が助手の女性を救い出します。二人の車を追ってタランチュラも町へ。要請を受けた空軍機がナパーム弾の攻撃で町が襲われる前にタランチュラを焼き殺してエンド。空軍機のパイロットがイーストウッドで~す。

 

『大怪獣出現』(1957年/監督:アーノルド・レイヴェン)は、地震によって地殻が崩れ、古代の巨大なカタツムリが湖底から現れ、人間を襲う物語。

古代のカタツムリが現代に甦ったのは、放射能に汚染された湖水の影響という、1950年代定番の放射能怪物。50年代は核の恐怖を最も身近に感じていた時代といえます。それにしてもこの怪物、イモムシみたいでカタツムリに見えません。基地の科学者がカタツムリの映像を使って生態を説明するまでカタツムリとは思わなかったです。カタツムリでは動きがスローモーで人類滅亡の恐怖を感じません。おまけにダラダラした演出で盛り上がりにも欠けるし、おバカ怪物映画として話のタネになる程度の作品で~す。

 

『水爆と深海の怪物』(1955年/監督:ロバート・ゴードン)は、レイ・ハリーハウゼンが特撮を担当した作品。

マシューズ艦長(ケネス・トビー)が指揮するテスト航海中の原子力潜水艦が、海中で謎の物体と接触し、船体を損傷します。船体から放射能と生物の細胞が発見され、原子物理学者のカーター博士(ドナルド・カーティス)と生物学のジョイス教授(フェイス・ドマーク)が調査。水爆実験によりミンダナオ海溝から出現した巨大タコであることがわかります。巨大タコは貨物船を襲い、オレゴン海岸に出現。サンフランシスコに非常警戒が敷かれますが……

日本で劇場公開された時は45分の短縮版でしたが、BSで放映されたのは完全版。タコの出現シーンが、サスペンスがあって結構見応えがあります。サンフランシスコの象徴である金門橋をタコが破壊する筋書きを聞いて市は協力を拒否。群集シーンは合成映像で対応しています。この特撮を担当したハリーハウゼンが語るところによると、資金不足でタコの足が6本になったそうで~す。