賞金稼ぎ(映画) | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

東映が殆ど時代劇を作らなくなった頃にシリーズ化したのが、若山富三郎が主演した“賞金稼ぎ”です。

『賞金稼ぎ』(1969年・東映/監督:小沢茂弘)は、将軍の要請で薩摩の反乱を防ぐ賞金稼ぎの物語。

薩摩がオランダから最新式軍用銃を手に入れようとしていることを知った将軍・家重(鶴田浩二)は、腹心の賞金稼ぎ・市兵衛(若山富三郎)を薩摩に向かわせます。薩摩藩江戸家老の伊集院右京(片岡千恵蔵)もオランダとの契約を止めるために薩摩へ。市兵衛は、老中の隠密・陽炎(野川由美子)、右京の隠し目付・藤九郎(潮健児)と道中一緒になり、薩摩へ潜入。薩摩藩過激派の山岳党の党員・茜(真山知子)と親しくなった市兵衛は、本拠地に入りこみますが、山岳党の首領・二階堂(天津敏)に正体がばれ、崖下に転落。右京はオランダとの契約を止めようとしますが、城主・重年(高橋昌也)は新式銃を手に入れて幕府への反乱を決意。右京は自ら責任者となってオランダとの契約調印に臨みますが……

任侠映画が衰退してきた時期で、何かないかと、お家芸だった時代劇に、ブームとなったスパイアクションとマカロニ西部劇をブチ込んだ作品。若富と千恵蔵の対決は本格時代劇だし、仕掛け拳銃に折りたたみ式ボウガン、隠し持った手裏剣といった小道具はスパイアクション。天津敏が囚人たちを逃走させて撃ち殺す新式銃の試し撃ちは、もろマカロニね。トランペットを主体とした八木正生の音楽もマカロニ的。『五人の賞金稼ぎ』『賞金首一瞬八人斬り』と続編が作られ、どんどんマカロニ化し、75年にはテレビシリーズも作られます。

 

『五人の賞金稼ぎ』(1969年・東映/監督:工藤栄一)

領主・大関佐渡守(小池朝雄)の悪政に耐え兼ねて、幕府に直訴した下野黒羽領榎村の百姓たちは幕府が手を打つまで砦に立て籠もることにします。名主の太左衛門(嵐寛寿郎)は用心棒の別所(徳大寺伸)から聞いた錣市兵衛(若山富三郎)に応援を頼むため、娘(土田早苗)の恋人・新八(石山律)を派遣。新八から事情を聞いた市兵衛は、仲間の伊賀忍者・陽炎(真山知子)、新当流の剣客・望月弥太郎(大木実)、手裏剣使いの鬼塚隼人(北村英三)、荷物運びの青砥九内(潮健児)の4人と砦にやってきます。佐渡守は家老の芝池主水(中谷一郎)に命じて砦を攻撃。しかし、市兵衛が持参したガトリング銃の前に撃退されます。主水は那須忍者の音平(伊吹吾郎)に命じてガトリング銃を奪おうとしますが……

チャンバラよりもマカロニ西部劇を彷彿させるような銃撃戦が展開します。お笑い担当の潮健児は別として残り3人の個性が今イチ発揮されていません。伊吹吾郎は存在感を出す前にワカトミに斬られちゃうし、悪役専門の天津敏が突然“鳥居強右衛門”ばりの英雄的死に方はするしで、登場人物が多くて上手く整理できていない感じです。

主人公の市兵衛は、貧乏人のために病気やケガを治療している医者で、賞金稼ぎで薬代や武器をまかなっているんですな。百姓相手では金にならないのですが義侠心ね。下ネタギャグの笑いやら、スプラッター銃撃戦やらで、褒められた作品ではありませんが、私はこんな映画が好きなんで~す。

 

『賞金首一瞬八人斬り』(1972年・東映/監督:小沢茂弘)

甲州黒戸金山から江戸に送られる黄金が伊那山岳党に奪われます。首領の夜叉狼(今井健二)は捕えたものの、黄金の行方はわかりません。老中(内田朝雄)は五日間の期限つきで賞金稼ぎの市兵衛(若山富三郎)に黄金奪取を依頼。スコープ付き拳銃など七つ道具を身に着け、黒戸金山の麓に乗り込みます。夜叉狼を助け出しますが、伊那山岳党の黒幕だった尾州藩の隠し目付・弥十郎(天知茂)が夜叉狼を殺害。黄金は黒戸金山支配の棺桶辰(大木実)に奪われており、市兵衛は棺桶辰の情婦・お紋(川村真樹)に近づきます。お紋と黒戸金山に乗り込んだ市兵衛は廃坑に隠されていた黄金を奪取。しかし、棺桶辰の幼い息子を人質にした弥十郎が立ふさがります。

老中の隠し目付・野呂陣内(内藤武敏)が黄金を渡すように市兵衛に迫りますが、市兵衛は弥十郎と人質交換。決死の追跡戦で市兵衛は、弥十郎を倒し黄金を取り返しますが、陣内が黄金奪取犯として棺桶辰だけでなく幼い息子まで殺したことから陣内と対決。

カツシンが「殺陣は兄ちゃんの方が上手い」というくらいで、ワカトミのスピードと迫力は抜群。ことに居合斬りがとくいで、そのキマリの鮮やかさは見事。この作品ではそれを活かすために、刀でなく仕込み杖を使っています。だけど、それだけね。宿敵の天知の武器が二連式の短銃で、チャンバラ対決が今イチだったのが残念です。ワカトミ以外のキャラに魅力がないのも難点。王道外れの時代劇ですが、私はこんな映画が好きなんで~す。