国際秘密警察 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

“国際秘密警察”は、三橋達也主演のスパイアクション・シリーズです。三橋達也って、映画・テレビで主演作品が結構あるんですが、何故か印象が薄いです。中途半端な二枚目だったからかなァ。この“国際秘密警察”シリーズは、作品的にはこれといったものはありませんが、拳銃さばきが堂に入っていて彼の代表作といえます。

『国際秘密警察・指令第8号』(1963年・東宝/監督:杉江利男)

何者かが南ベトナムのサイゴンで政府の高官を殺害。彼を通じて入札の便宜を受けていた豊光商事の秋元(夏木陽介)も羽田で何者かに連れ去られます。豊光商事は秋元の同僚・江崎(佐藤允)を真相究明のためサイゴンへ派遣。一方、国際的な死の商人を追って、国際秘密警察の北見次郎(三橋達也)が密輸組織に潜入しますが……

シリーズ第1作。スパイブームの前の作品なので犯罪アクションに近い作り方。主人公は美女と絡まないし、小道具もなく、真面目な捜査官。むしろ佐藤允の方が、水野久美に誘惑されたりして中心人物になっています。黒幕(ジェリー伊藤)が捕まらなかったのは続編を考えていたからだと思ったのですが、以後の作品に登場しませ~ん。

『国際秘密警察・虎の牙』(1964年・東宝/監督:福田純)

アラバンダ共和国の内戦を捜査していた北見は、産業大臣のクリマ(中丸忠雄)に不信感を持ちます。彼はダム工事の機械発注のために日本へやってきますが、注文品の中に大量のガスボンベがあり……

前作と比べると小道具の使い方などにスパイ映画らしくなっていますが、能天気なところはなく、極めて真面目なアクション映画。背景として戦時中に毒ガス製造していた技師研究所やら、スパイ養成機関の陸軍中野学校(クリマは日本人で中野学校出身という設定)が出てきて、大戦中の疵を色濃く反映させています。

『国際秘密警察・火薬の樽』(1964年・東宝/監督:坪島孝)

世界中の原水爆を自由にコントロールできるゼーター線遠隔操縦装置を使って世界征服を企てる世界統一同盟に対して国際警察の北見が挑みます。

第3作目にして、やっと能天気なスパイ映画が完成。スパイは美女(星由里子・若林映子・水野久美)に目がなく(但し、おいしい所は警視庁警部の佐藤允にもっていかれます)、歯磨き粉に仕込んだ鉄を腐食させるクリームとか、ローションに仕込んだニトログリセリンとか、小道具もそれらしくなってきました。悪党も死んだと思われていたナチの科学者が出てきたりしてね。

せこい仕掛けに、緩いアクション。これぞB級スパイ映画です。ちなみに、“火薬の樽”とは、多量の核爆弾を抱えた地球のことで~す。

『国際秘密警察・鍵の鍵』(1965年・東宝/監督:谷口千吉)

トンワン王国の反体制テロ組織の軍資金を奪うため、国際警察の北見が美女二人(若林映子・浜美枝)ひきつれ、横浜を舞台に世界平和のために自慢の拳銃さばきを見せます。007に負けず、ボンドガール二人に惚れられる三橋達也のニヤケぶりがグッド。

二転三転する物語展開は、もっとスリリングになってもいいはずなんですが、盛り上がりに欠けます。アクションの間のとりかたと、音楽の使い方がまずいですねェ。パロディとして、ウディ・アレンが『What’s Up,Tiger Lily?』なる題名で、英語に吹き替えて(日本語のセリフとは全然ちがう)、再編集していま~す。

『国際秘密警察・絶体絶命』(1965年・東宝/監督:谷口千吉)

ブッダバル国首相(田崎潤)を暗殺しようとする国際テロ組織ZZZ(ズィーズィーズィー)に対して、国際警察の北見とジョン・カーター(ニック・アダムス)が挑みます。カーターは日本語ペラペラ(声は矢島正明)で、二人に絡む謎の美女(水野久美)は敵か味方か……

邦画の悪いクセで、ZZZの凄腕殺し屋(佐藤允)とカーターが朝鮮戦争での親友だったという湿っぽい話をいれて、能天気なストーリーを台無しにしています。真理アンヌに率いられる三人の殺し屋(その中にいる天本英世が笑える)や、佐藤允も充分に可笑しいのだからコメディに徹底すべきでしたね。

“国際秘密警察”シリーズは、どれも中途半端。東宝には、中丸忠雄、ジェリー伊藤、中村哲、田崎潤、天本英世、佐藤允など真面目にやってもどこか可笑しさがある個性的なキャラが揃っていたので、もっと面白くできたと思うのですが残念。それにしても、この頃の水野久美って、ヒジョーに魅力的なので~す。