無用ノ介(4) | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

隠れた名作だと思っている『無用ノ介』(日本テレビ系列で1969年3月1日~9月20日放送)の第15話~19話(最終回)を紹介。

第15話「天にさけぶ無用ノ介」

無用ノ介(伊吹吾郎)が町を歩いていると若林猪衛門(二瓶正也)に声をかけられます。昔一緒に仕事をした時は新米賞金稼ぎだった猪衛門ですが、今は“鬼の参上屋”と呼ばれる非情な賞金稼ぎ。猪衛門は賞金首の朝吉(里見浩太朗)を追っていますが、朝吉に公金横領の悪事を握られた侍たちも朝吉を追っています。無用ノ介は朝吉の弟・三吉と親しくなり、朝吉と知りあいますが、三吉が侍たちに拉致され……

このエピソードは原作のマンガをそのままシナリオにしています。原作と見比べたのですが、寸分たがわず全く同じでした。無用ノ介がラストで対決する猪衛門は、原作では「無用ノ介、海に戦う」で、賞金稼ぎ志願のペーパー剣士(腕は立つが人を斬ったことがない)として登場するのですが、ドラマ化されていません。二瓶正也(『ウルトラマン』の井出隊員ね)は原作のキャラクターにあっていたので、「無用ノ介、海に戦う」があって「天にさけぶ無用ノ介」があれば、もっと効果が出たと思うので、もったいない気がします。

 

第16話「さむらい渡とのらいぬ無用ノ介」

賞金首・矢藤次(梅津栄)を追って八代藩にやってきた無用ノ介は、藩の権力争いに巻きこまれます。禁制の抜け荷によって藩の財政を建て直そうとしている家老を失脚させようとしている若侍たち。彼らは抜け荷の証人として矢藤次を拉致。目付の渡(山本学)は、彼らの正義感が反家老派に利用されているにすぎないことを知って若侍と矢藤次を追います。そして、矢藤次を追う無用ノ介は……

本編よりも、前回に流された予告編がカッコ良かったです。渡の側面姿が上から下に降りてきて、次に無用ノ介の側面姿が同じように降りてきて、渡と無用ノ介が向かい合って立っている構図がバツグン。

ラストの対決もセンスがありました。用水路をはさんで渡と無用ノ介が対峙し、用水路上で斬り結び、渡が流れの中に沈み、真っ赤に染まっていく用水路の水。そして、無用ノ介の独白。「水の流れが人間の血を美しく見せている。その血が自分を汚していることを知っているのだろか。それとも、その美しさをうす汚れた野良犬に見せつけているんだろうか。うす汚れた野良犬に……」

 

第17話「おいらの好きな無用ノ介」

賞金首の伝次(土屋嘉男)を追って日暮長屋にやってきた無用ノ介は、伝次が民五郎と名を変えて妻子と幸せに暮らしているのを見て躊躇。伝次はヤクザの銭安から理不尽な立ち退きを迫られている長屋のために命をかけており、それが解決するまで無用ノ介は伝次を捕まえるのを待つことにします。しかし、伝次は銭安が雇った殺し屋・黒阿弥(山本麟一)に殺されてしまい、無用ノ介は行きがかリ上、黒阿弥と対決することになり……

“弱きを助け、強気をくじく”という、そこいらに転がっている時代劇と同じような内容で、気に入らないエピソードです。『無用ノ介』の魅力は、単純な勧善懲悪じゃないところですからね。甘い内容でしたが、殺陣に工夫をこらした黒阿弥との対決は見応えがありました。

 

第18話「夏の終わり無用ノ介はひとり」

燈篭流しの夜、無用ノ介は川で溺れかけている老婆を救出。老婆は無用ノ介の掌にホクロがあるのを見て、同じようなホクロを持った子どもと生き別れになった女の話をします。老婆が話した女を求めて無用ノ介がやってきたのは下布田の宿場町。そこでは、裏世界の黒幕・死人小左衛門(巌金四郎)の後継者を決める腕試しの罠が待ちうけており……

“瞼の母”的な内容ですが、今イチ母恋しさが伝わってきません。これまでのエピソードの中で、母について語られなかったからでしょうね。

 

最終回「明日に生きる無用ノ介」

無用ノ介は、賞金首の十五夜左近を捕まえて役人に引き渡しますが、牢番は老人(渡辺篤)で、役人(塚本信夫)はアル中という有様。そこへ左近を救出すべく、兄の大徳(田中淳一)が無法者を率いてやってきます。宿場町は無法者に包囲され……

これは名作西部劇『リオ・ブラボー』のパクリです。ラストで無法者一味に捕まった役人と左近の人質交換になるのですが、歩いてきてすれ違いざまに役人が左近を押し倒し、それを機にチャンバラが始まるのは『リオ・ブラボー』と同じ。しらふになった役人が、屋根裏に潜んだ無法者を手裏剣で倒すシーンも『リオ・ブラボー』にありましたね。このエピソードが放送されなかったのは、パクリがあからさまだったからかもしれません。

 

未放映分を含めて全部観たのですが、テレビ時代劇史上、チャンバラの面白さは上位にランクできる作品です。何故、放送時に人気番組にならなかったか?ですが、原因のひとつとしてカラー演出があると考えます。

無用ノ介の刀が賞金首の身体を貫いた瞬間、背景が真っ赤に染まったり、手配書の人相書きが青から赤に変わったりと、カラー放送を意図した画面作りがされています。だけど、白黒テレビが主流だった当時としてはコントラストがはっきりせず、わけがわからなかったでしょうね。カラー演出がマイナスになったような気がします。カラー放送が当たり前の現在では、カラーの特質を活かした演出なんて考えないでしょうが、『無用ノ介』にみられるカラーにこだわった演出は、現在の視点からみると逆に斬新です。

原因の二つ目に、番組の編成体制があります。土曜夜8時台は、裏番組に当時人気ナンバーワンだったコント55号の『コント55号の世界は笑う!』と、チャンバラでは安定的支持者のある近衛十四郎の『素浪人花山大吉』があって、『無用ノ介』はナイター中継の雨傘番組。野球(日本テレビ系列なので巨人戦ね)がない時だけ放送されるという変則的なものでした。これではチャンバラ好きにも敬遠されます。野球がない時に、ミーハーの巨人ファンが観ても、良さがわかるはずありませ~ん。

自分だけのお気に入り作品。これぞ、カルトの楽しみで~す。