柳生武芸帳とわれら九人の戦鬼 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

殺陣の上手い時代劇スターとしてチャンバラファンの間で必ず名前があがるのが近衛十四郎です。私が近衛十四郎のチャンバラを素晴らしいと思ったのがテレビ時代劇『柳生武芸帳』(NET=現:テレビ朝日系列で1965年1月10日~7月4日放送)でした。この後番組に『新選組血風録』があり、『柳生武芸帳』を観ていたので『新選組血風録』も観始めたわけです。

近衛十四郎はこのドラマの前に、61年から64年にかけて映画で“柳生武芸帳”シリーズ(全9作)に主演していますが、私が利用していた三本立て映画館(三番館)にはかかったことがなく、リアルタイムでは観ていませんでした。このシリーズもチャンバラファンには好評で、私が全作観たのはずっと後になってからね。

私が『柳生武芸帳』を観て最初に気づいたのが、近衛十四郎の刀の長さでした。チャンバラ評論家の永田哲朗氏が、「ふつう侍の刀は、腕を真っすぐに下げて、その先端が地面につかない長さのものを選んでいる。大体75~80センチになるが、85センチもの長い刀を注文して好んで使っているのが近衛で、普通の人では使いきれないような長さだが、近衛はその方が使いやすいのだ」と指摘しているように、見ばえのする長い刀での近衛十四郎の殺陣は、当時のTVチャンバラの中では一際目立っていました。眼帯を刀の鍔にしたのも、このドラマからじゃないかな。

フィルム撮影なのに、現存しているのは第1回のみ。江戸の柳生屋敷を賊が襲い柳生十兵衛(近衛十四郎)が撃退します。父・宗矩(香川良介)は賊の狙いが水月と浮舟の柳生武芸帳2巻と考え、浮舟がある柳生の里へ十兵衛を派遣。宗矩の予想通り柳生屋敷は襲われ、十兵衛の妹・於季(御影京子)が浮舟の巻物をもって脱出。しかし、柳生に替わって幕府の剣法指南役になろうと考えている疋田陰流の山田浮月斎(原健策)に奪われます。老中・松平伊豆守(北龍二)に取って代わろうする土井大炊頭(北村英三)が浮月斎の背後にいる黒幕。互いに所持している巻物を持って、十兵衛と浮月斎は対決します。

原作では主人公のひとりの霞多三郎(阿波地大輔)があっさり十兵衛に斬られ、浮月斎とも決着し、原作に関連するのは第1回だけ。2回以降は、旅に出た十兵衛が行く先々で悪党退治をするオリジナルストーリーだったと記憶しています。

 

ヒットした『新選組血風録』のスタッフ・キャストが続いて制作したのが『われら九人の戦鬼』(NET=現:テレビ朝日系列で1966年1月7日~7月5日放送)です。原作は柴田錬三郎がスポーツ新聞に連載していた時代小説。スポーツ新聞といえば野球中心なので9人の戦鬼ね。

主人公は将軍・足利義晴の落胤・多門夜八郎(栗塚旭)。関白太政大臣家に嫁ごうとする小夜姫(波野久理子)を見初め、陽明御殿に侵入してさらいます。しかし、駆け込んだ古寺で、名僧・天心(嵐寛寿郎)にとがめられ、小夜姫をおいて逃走。陽明御殿で夜八郎と剣を交えた剣士・九十九谷左近(里見浩太朗)は、落雷のために夜八郎を逃し、夜八郎と決着をつけるために官を辞し、姿を消します。それから七年が経ち、地位も身分もすて無頼の剣士となっていた夜八郎は、雑兵たちに犯されそうになっていた娘・梨花(高石かつ枝)を救出。見て見ぬふりをしていた雑兵の柿丸(北村英三)は夜八郎の家来になります。梨花は光明寺家の姫でしたが、家に帰ることを拒み、夜八郎たちに同行。伊吹野の宿場は荒れており、様子を見に行った夜八郎は、小幸(鈴村由美)という村娘に連れられて土地の豪族・泰国館へ行きます。泰国清平の息子・太郎(坂口祐三郎)から、伊吹野は領主だった奈良城義胤が田丸豪太夫に城をうばわれて大庄山の山塞に逃れ、田丸豪太夫の悪政に農民が苦しめられていることを教えられます。泰国館も田丸豪太夫に狙われており、力を貸してくれるように頼まれますが断ったことから小幸が夜伽に現れ、天井裏には泰国館を探る忍者・七位の大乗(舟橋元)の姿。一方、柿丸と梨花の前には盗賊・百平太(市村昌治)が現れ……

ここまでが第1回で、『柳生武芸帳』と同様にフィルムが現存しているのは第1回だけ。私は途中(4月)からリアルタイムで観ていますが、観始めた時は田丸豪太夫(福山象三)の城は夜八郎率いる仲間と農民によって焼け落ちていました。夜八郎の仲間は、第1回から登場する柿丸・泰国太郎・七位の大乗・百平太の他に、奈良城義太郎(島田順司)・云わずの黙兵衛(左右田一平)・雲切強右衛門(有川正治)・悪僧勘念(玉生司郎)の4人。仲間といっても、裏切ったり、かってな行動したりするんですけどね。城が焼けて、執拗に泰国館を狙う田丸豪太夫を何とか倒しますが、農民たちは旱魃で苦しんでいます。農民の窮状に手を差し伸べる天満坊(曾我廼家明蝶)の熱意にほだされ、夜八郎と8人の仲間が立ち上がり、竜神湖の水をふもとの灌漑溝へ落とすために大庄山へ。そこには、義太郎の腹違いの兄で、領主の座を狙う残忍で野心的な奈良城義晴(島田順司)が守る山塞があり……

島田順司は『新選組血風録』の好演を買われて奈良城義太郎・義胤・義晴の三役をしていますが、沖田総司のイメージが強すぎて今イチでした。左右田一平など“血風録”メンバーも、“血風録”ほどインパクトがありません。栗塚旭の多門夜八郎は、眠狂四郎と同じようなキャラのニヒルな剣豪で、栗塚旭のイメージとマッチ。これが『俺は用心棒』につながっていくんですね。里見浩太朗は、東映が時代劇から任侠映画へ路線変更の時期で、最も不遇な時代だったと思われま~す。

ちなみに、『新選組血風録』についてはココヘ⇒新選組血風録(1) | 懐古趣味親爺のブログ (ameblo.jp)