ボナンザ(カートライト兄弟) | 懐古趣味親爺のブログ

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『ボナンザ』は本国アメリカでは1959年9月から73年1月まで放送(全440話)された人気西部劇です。日本では日本テレビ系列で60年7月から62年4月まで、月曜夜7:00~8:00に原題と同じ『ボナンザ』の題名で放送。その後、62年10月から65年4月まで、土曜夜8:00~9:00に『カートライト兄弟』と改題されて放送されました。『ボナンザ』で放送されていた時は、同じ時間帯に『シャイアン』や『私の秘密』があり、全く観ていません。私が観ていたのは『カートライト兄弟』になってからね。

1860年代のネバダの森林地帯ポンデローサで牧場を営むカートライト一家の物語。ボナンザとは金や銀などの鉱石が豊かに埋蔵された地帯をいいます。鉱山ブームで出来上がった町は流れ者の溜まり場。一攫千金を狙う山師や前科者、法に追われる無法者、酒やギャンブルで金を稼ぐ町のボス、鉱山開発のためにはどんな悪どい手段でも使う鉱山業者たちが、平和で美しい森林地帯を狙っているんです。

鉱山において一番必要としているのが、坑道の支柱をはじめとして色々な用途に使われる材木。ポンデローサの森林はまさに金のなる木で、欲にまかせた乱開発は水源を荒らし、豊かな土地を不毛の地に変えます。『ボナンザ』は、自然を愛するカートライト一家の父と三人の息子が善良な開拓民を助け、森林を守るために一致協力してさまざまな無法と戦うホームドラマ風西部劇。

『ボナンザ』の魅力は4人の個性が全く違うこと。3人の妻に先立たれた父親のベン(ローン・グリーン)は、開拓者魂を失わない強い意志と決断の男。長男のアダム(パーネル・ロバーツ)は、常に冷静で拳銃の名手。次男のホス(ダン・ブロッカー)は気の優しい大男で力持ち。三男のジョー(マイケル・ランドン)は、陽気な二枚目で左きき。これだけ性格が違うのは、3人の母親が違うからなんです。

アダムの母は、ベンがニューイングランドで漁師をしている時に知りあったスコットランド系の船長の娘。お産が重くてアダムを生んで死んでしまいます。ホスの母親は、ベンがミシシッピの船乗りをしていた時にミズーリで知り合ったノルウェー娘。バイキングの末裔で、すこぶる丈夫な女性でしたが、インディアンの襲撃で死んでしまいます。無法者の弟(ネヴィル・ブランド)が訪ねてくるエピソードで、ベンのことをベンジャミンと呼んでいたのでベンの正式名が判明。ジョーの母親はマリーといいまして、ニューオリンズの歓楽街で水商売をしていた未亡人。ベンはマリーの過去など意に介せず結婚してジョーが生まれます。日本語吹替えではわからなかったのですが、ベンはジョーをジョセフと呼んでいます。マリーはフランス人で、ジョーがフェンシングを見せるのは母親の影響。彼女もジョーの少年時代に落馬事故で死亡。

『ボナンザ』と『カートライト兄弟』では声優が変更されています。ベンは高塔正康から市川中車へ、アダムは保科三良から戸浦六宏へ、ホスは西桂太から相模武へ、ジョーは朝戸正明から関根信昭へ変更。歌舞伎の市川中車が吹替えを担当したことで話題になったのを憶えています。憶えているといえば、カートライト一家の他に、セミ・レギュラーとして中国人コックのポプシンがいましたな。へんな中国のことわざを言って、皆をけむに巻くのね。

DVDボックスが発売されており、シーズン1のエピソード15本とシーズン2のエピソード18本を観ることができます。

「老兵の誇り」は、昔は優秀な(1847年にフレモント隊長から名誉のメダルを貰って除隊している)スカウトだった老人が、軍隊の依頼でホスの協力のもとに砂漠の道案内をする物語で、隊長役でジョン・デナーと部下役でハリー・ケリーJrがゲスト出演。

「汚れたバッジ」は、殺し屋の連邦保安官補と対決するカートライト一家の物語で、上着のポケットにダブル・デリンジャー、上着の内側に小型拳銃(リトルドラグーンと思われる)を隠し持っている殺し屋保安官役でダン・デュリエが出演。

「水車」は、賭博で財産を失いかけている友人のために、カートライト一家が製粉事業用の水車を作る物語で、足が不自由で自暴自棄になっている主人を賭博に誘って、家だけでなく美しい妻までも手に入れようとする悪い使用人役でクロード・エイキンズが出演。

「報いの日」は、部族から追われたインディアン夫婦に命を助けられたベンが、彼らをポンデローサに住まわせますが、隣人の白人との軋轢から悲劇が起こる物語。インディアン夫婦役はリカルド・モンタルバンとマドリン・ルー。

「保安官の娘」は、躾の厳しい父親に反発した保安官の娘が、銀行強盗とは知らずに無法者を好きになる物語で、無法者役でジョン・エリクソンが出演。

「牛追い」は、ベンとホスがテキサスからキャトルドライブしてきた町で、雇ったカウボーイが暴れ出すのを防ぐ物語で、コメディーリリーフ的な老コック役にエドガー・ブキャナンが出演。

「音のない少女」は、聾唖の少女にジョーが手話を教える物語で、清純な少女役に後年のグラマー・コメディエンヌが想像できないステラ・スティーブンス。

「ホスの恋」は、ベンの親友の未亡人と恋に落ちたホスの物語で、ギャンブル好きの未亡人役に半漁人に襲われる美女で有名なジュリー・アダムス。

「うるさい娘」は、ケンタッキーからの移住者とカートライト一家の対立を描いた物語で、ケンタッキーライフルを振りまわす悪党移住者役でジャック・イーラムが出演。

カートライト一家は、1960年代のアメリカそのものです。豊かで恵まれていて、勝者としての余裕が感じられます。彼らの正義はアメリカの正義で、当時のアメリカの国民心情にマッチして人気長寿番組として君臨。しかし、ベトナム戦争とともに、アメリカの正義が信じられなくなり、『ボナンザ』だけでなく西部劇が終焉していきま~す。