とんま天狗とやりくりアパート | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

『とんま天狗』は、関西発(読売テレビ製作=日テレ系列)の人気番組で、1959年9月5日~60年12月24日に放送され、45.4%という最高視聴率を記録しています。

主演はトレードマークの眼鏡をかけた“コンちゃん” こと大村崑。タイトルからもわかるように、誰もが知っている時代劇のヒーロー“鞍馬天狗”のパロディ。その姿は似ていても、しゃべる言葉は大阪弁で、あわて者のうえにオッチョコチョイ。剣の腕も刀を左手でヒョイと抜くところはカッコ良いんですが、本物の天狗より劣ります。だけど、人の好さと正義を愛する心は日本一。

対するは、芦屋小雁ふんする新選組の近藤勇三。こちらは、剣の腕だけでなく、オツムも少し足りません。つねにとんま天狗を追い続け、追いつめた近藤勇三は、「とんま天狗、御用ョ!」と幼児言葉を使って騒ぎ立て、天狗に斬られては、「やられたヨ」といいながらヨロヨロとその場に倒れます。斬られても、斬られても、永遠のライバルとして毎回登場です。天狗と近藤のかけあいの面白さだけでなく、芦屋雁之助が演じた天狗の仲間である勤王浪士・月形三平太と天狗の言い争いも可笑しかったなァ。「おい、はんぺん太」「ちがう!三平太」なんてね。第1話では、天狗のお父さん役で三木のり平がゲスト出演。三木のり平のトレードマークだった鼻メガネが大村崑に正式に譲られ、桃屋のアニメCMを除いて、のり平は眼鏡をズラさなくなりました。

番組を提供していたのは大塚製薬。とんま天狗の名前は、尾呂内南公。同社の製品・オロナイン軟膏からきています。♪~とん、とん、とんまの天狗さん~の主題歌の中でも、姓はおろない、名はなんこう~と歌われており、CM効果は絶大。「うれしいと、メガネが落ちるんですよ」のオロナミンCのCMも流行語になりました。

私が大村崑を知ったのは、『とんまの天狗』より前の『やりくりアパート』で、KRT(現:TBS)系列で1958年4月6日~60年2月28日放送。大阪の下町にある「なにわ荘」を舞台に、住人がおこすドタバタ喜劇でした。大村崑だけでなく、佐々十郎や茶川一郎が本当に面白く、可笑しく、大笑いしましたね。管理人役で横山エンタツや、子役時代の中山千夏も出演。番組最後に佐々十郎と大村崑が繰り広げるミゼットの生CMが印象に残っています。「スマートやなァ!」「ミゼット」「便利な車!」「ミゼット」「商売繁盛!」「ミゼット」ね。

『とんま天狗』も『やりくりアパート』も原作は花登筐。広島では系列局の関係から放送されなかった『番頭はんと丁稚どん』(毎日放送製作・NET(現:テレビ朝日)系列で1959年6月2日~60年4月17日放送)も花登筐で、当時は関西のお笑い番組(ドラマ)を一手に引き受けていました。その後、関西のお笑い番組は、沢田隆治&香川登志緒を中心とする『スチャラカ社員』や『てなもんや三度笠』などに移っていき、花登筐は、『細うで繁盛記』や『どてらい男』といった“商人ド根性ドラマ”で再び注目を浴びます。“お笑い”も“ド根性”も、人間をカリカチュアして描くわけで、根本は同じなのかもしれませ~ん。