事件記者(テレビ) | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

テレビ創生期に、後の事件捜査もの原点となったドラマが三つあります。『日真名氏とびだす』『ダイヤル110番』、それにこの『事件記者』です。『事件記者』は、NHKで1958年4月3日から66年3月29日まで399回(279話)放送。警視庁の記者クラブに駐在する社会部記者の活躍を描いた集団ドラマです。

登場人物は、東京日報の相沢キャップ(永井智雄)・伊那記者(滝田裕介)・長谷部記者(原保美)・山崎記者(園井啓介)・浅野記者(綾川香)・八田老人(大森義夫)、新日本タイムスの熊田キャップ(外野村晋)・荒木記者(清村耕次)・坂本記者(伊藤正博)、中央日日の浦瀬キャップ(高木淳一)・石見記者(山田吾一)・国分記者(谷沢裕之)、毎朝の鶴岡キャップ(中原成男)・亀田記者(守田比呂也)、警視庁の捜査一課長(高島敏郎)・山本部長刑事(野口元夫)・村田部長刑事(宮坂将嘉)・遠藤刑事(藤岡重慶)、記者クラブのミッちゃん(八木千枝)、記者たちが集まる“ひさご”の女将オチカさん(坪内美詠子)が初期のレギュラー。

メンバー構成を見ればわかるように、日報を中心にしたドラマ作りでした。“麻薬のベーさん”こと長谷部記者は、麻薬事件取材の応援にきて、そのままレギュラー入りだったし、“イナちゃん”こと伊那記者がオチカさんの娘と結婚するのも何かの事件絡みだったように記憶しています。彼らのライバルというべき存在が、“オトボケのアラさん”こと荒木記者で、コメディリリーフ的存在が、“ガンさん”こと石見記者。ガンさんと浦瀬キャップのやりとりは漫才ですよ。お茶くみのミッちゃんはアイドル的存在。毎朝の鶴亀コンビは集団シーンの人数あわせ的存在でしたな。

その後、タイムスに“セイカイどん”こと青海記者(前田昌明)、日日に“シロさん”こと白石記者(近藤洋介)、警視庁鑑識係の湯浅主任(館敬介と捜査一家に鳥貝刑事(木下秀雄)、記者たちが集まる喫茶店“アポニー”のマスター田川(清水元)とウエートレスのノブちゃん(宮裕子)が加わります。田川は日報OBで八田老人の元同僚、ノブちゃんは荒木記者の妹という設定。終盤には亡くなった清村耕次の荒木記者に代わり、藤岡琢也の矢島記者が登場。最初は無名の存在だった園井啓介、山田吾一、藤岡重慶、近藤洋介、藤岡琢也などは、この番組から名前が知られるようになりました。

最近の新聞社会面に、殺人事件の被害者や容疑者の顔写真がデカデカ載ることが少なくなりましたが、この番組放送当時は新聞記者の中で社会部記者がもっとも華やか存在。他社がつかんでない情報をいち早く紙面に載せることにしのぎを削っていました。特ダネ競争における、記者たちの心理戦や駆け引きが、テンポの早い会話やユーモアあふれるセリフで展開。ブンヤを初めとするコロシ、ガイシャ、ホシ、タタキといった警察の隠語が一般に流布したのもこの番組からです。脚本は作家の島田一男ひとりが担当しており、執筆は遅れ気味だったとのこと。そのため、ホットなニュースをドラマに織り込むことができ、視聴者には大好評。ちなみに題名の『事件記者』は島田一男の造語です。1961年8月の電通視聴率調査では、関東地区では第2位の43.9%を記録。火曜日の夜は、『ジェスチャー』→『お笑い三人組』→『事件記者』と、視聴率35~40%の人気番組が並ぶNHKの独走といっていい状況でした。

『事件記者』の人気は、映画でもシリーズ化され、日活で10本、東宝で2本製作されています。ドラマ挿入歌として発表された「ブン屋小唄」(作詞:見尾田瑞穂、作曲:中村八大)も各レコード会社の競作。クラウンは谷沢裕之・山下洋治とムーディスターズ、コロムビアは三島敏夫、ビクターはフランク永井が歌っています。私が好きなのは、“トッしゃん”こと国分記者役で出演していた谷沢裕之(ジャケット中央のカラーの人物)が歌うクラウン盤ね。高木淳一の「バッキヤロー!」の台詞入りが良いんですよォ。