境界性人格障害をはじめとする人格障害は虐待やネグレクトなどの人格障害を悪化させるネガティブな幼児体験に焦点が当てられており、それを示唆する研究はいくつかある。
しかし人格障害から回復すると考えられるポジティブな要因を探すことはあまりなかった。
それでは人格障害を回復するにあたり有用な体験は何かあるのだろうか。
ここに1つの研究がある。

それは、4つの人格障害(統合失調型人格障害、境界性人格障害、回避性人格障害、強迫性人格障害)520人をポジティブ体験のあり/なしに分類し4年間どのような経緯をたどるか追跡調査したものだ。
なお、ポジティブ体験については改訂版幼児体験質問表にて3つの分野の質問を行いポジティブ体験を評価したもので、具体的には達成体験(学業、運動、その他の課外活動、リーダーシップ、仕事、趣味、家事、人気評判)、人間関係(家族や友達)、扶養者の能力(仕事、社交性、興味、家族や友達との関係)の3つである。

結果としてはポジティブな幼児体験は回避性人格障害と統合失調型人格障害にて主に有意な回復が認められ、またすべてのタイプのポジティブ体験が加わることで主に回避性人格障害からの回復が認められた。

もちろん幼児体験は回顧的に報告しているため、IQのような認知能力や楽観主義のような性格が関係しているので100%そうだと言い切る事は難しいが少なくともポジティブ体験は必要であろう。

それゆえ個人の長所および能力を促進させ人間関係能力を育てるような治療介入は有益で、今後良好な予後を導く更なる要因を探求する必要があるといえる。

私の臨床経験ではやはりここがうまくいっていないパターンが非常に多い。
人格障害の場合、家族も何らかの素因をもっている場合が非常に多いのである。
それゆえなかなかうまい関係を保てていないようである。そうなるとやはり本人も最初から他人を疑ったりして治療に難渋してしまう。
家族ではなく社交、感情、認知、行動およびモラル等の能力を育成する若年プログラムはあってもいいかなと思ったりもする。







ADHDであるがこれは近年急激に広まってきた概念であるといえよう。
具体的には注意欠陥・多動性障害(AD/HD: Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)といい、多動性、不注意、衝動性を症状の特徴としている。
100人に3人ほどいるのではないかと言われている。
これは学校のクラスに1人程度の頻度である。
例えば、小学校の頃、クラスに授業中はしゃぎまわったりする元気な男の子はいたのではないだろうか。
ただ一説によるとレオナルド・ダ・ヴィンチやエジソン、アインシュタインなど才能ある多くの人もADHDであったと言われいる。

それではこのADHDはどのような考え方なのだろうか。
まず前回のべた人の考え方についてもう一度模式的にみてみようと思う。

『ひとは物事を考えるときに4本のヤリをもっていると考えて欲しい。
この4本のヤリの考え方は非常に大事である。
この4本のヤリは何を表しているかというと何を考えているかである。
1本のヤリで「今日の夕飯の事を考え」
1本のヤリで「恋人の事を考え」
1本のヤリで「趣味の事を考え」
1本のヤリで「仕事の事を考え」と行っている。
これら4本のやりはバランスよく自分で使いこなしている。同時には1つの事しか考えないが人はこのような大体4つの事を自由に使い分け、切り替え可能である。』

これに対し、ADHDの方は

小さなヤリを100本ほど大量に持っている状態

と言える。
つまり、
1本のヤリで「今日の夕飯の事を考え」
1本のヤリで「恋人の事を考え」
1本のヤリで「趣味の事を考え」
1本のヤリで「仕事の事を考え」
1本のヤリで「隣の家の晩ご飯の事を考え」
1本のヤリで「好きなテレビ番組の事を考え」
1本のヤリで「来年の自分の事を考え」
1本のヤリで「今そばを歩いたネコの事を考え」
・・・・・続く


といった状態である。
しかし人間の頭の中で処理しきれる量は決まっているため最初の事をとっくに忘れている場合が多い。
それゆえ、忘れっぽいなどと言われるのである。
また色々な事が次々に浮かんでくるため、落ち着き無く動き回ってしまう。

ただいいところもありこのような山のような発想からすごく発想が豊であり、それこそエジソンのように人には思いつかない事も思いついてしまうのである。

ADHDの方にはもともと賢い人も多く、年を重ねるにつれこの大量に浮かんでくる小さなヤリ達を扱えるようになるのである。

最後に現在使われている臨床の現場での診断基準(DSMⅣ)をのせておく。

A(1)か(2)のどちらか
(1) 以下の不注意の症状のうち6こ以上が6ヶ月以上続いたことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応しないもの
不注意
a.学業、仕事、その他の活動において、綿密に注意することができない、または不注意な過ちをおかす
b.課題または遊びの活動で注意を持続することが困難である
c.直接話しかけられた時に聞いていないようにみえる
d.指示に従えず、学業や職場での義務をやり遂げることができない(反抗的な行動または指示を理解できないためではなく)
e.課題や活動を順序だてることが困難である
f.(学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することを避ける、嫌う、またはいやいや行う
g.課題や活動に必要な物(例えばおもちゃ、学校の宿題、鉛筆、道具など)を紛失する
h.外部からの刺激によって容易に注意をそらされる
i.毎日の日課を忘れてしまう
(2) 以下の多動性―衝動性の症状のうち6こ以上が少なくとも6ヶ月持続したことがあり、その程度は不適応で、発達水準に達しない
多動性―衝動性
a.手足をそわそわと動かし、またはいすの上でもじもじする
b.教室や、その他座っていることを要求される状況で席を離れる
c.余計に走り回ったり高いところへ上がったりする(小児以外では落ち着かない感じの自覚のみに限られることもありうる)
d.静かに遊んだり余暇活動に従事することができない
e.じっとしていなかったり、「エンジンで動かされるよう」に行動する
f.しゃべりすぎる
g.質問が終わる前に出し抜けに答えてしまう
h.順番を待つことが困難である
i.会話やゲームにおいて他人の邪魔をしたり干渉する

B.多動性―衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳未満に見られる
C.これらの症状による障害が複数の状況下(例えば学校と家庭)において見られる
D.社会、学業、職業等の機能において臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在する
E.その症状は広汎性発達障害、統合失調症、その他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(たとえば気分障害、不安障害または人格障害など)ではうまく説明できない。

また具体的なADHDのイメージが湧かない人には下記の本がおすすめである。

片づけられない女たち/サリ ソルデン

¥1,680
Amazon.co.jp
脳を理解する上で大切なニューロンに関する用語を以下に記す。

<ニューロンの集合>

灰白質gray matter:中枢神経にあるニューロンの細胞体の集合に付けられた用語。新鮮な脳の割断面で灰色にみえる。

皮質cortex:ニューロンの集合を指し、通常は薄い層状で脳の表層に認められる。

核nucleus:他とは明らかに区別できるニューロンの細胞体の集合で通常は脳の深部にある。

質substantia:脳の深部に位置する関連性のあるニューロンの集合体、核ほどには他との境界が明瞭ではない。

斑locus:境界が明瞭なニューロンの小さな集団。

神経節ganglion:末梢神経系のニューロン集合体。


<軸索の集合>

神経nerve:末梢神経系における軸索の束。

白質white matter:中枢神経系の軸索の集合体。

路tract:中枢神経系の軸索の集まりで共通な出発と終始部位をもつ。

束bundle:一緒に走行する軸索の集まりであるが必ずしも起始と終始が共通していないもの。

包capsule:大脳と脳幹を連絡する軸索の集合体。

交連commissure:左右の脳半球を連絡する軸索。

帯lemniscus:中枢神経系の軸索の集合で細いひものようなものが曲がりくねって走行するのが特徴。