精神科の病気のなかには薬によって引き起こされるものもある。
その中でよくみるものの中にステロイドがあるだろう。
ステロイドとは膠原病等によく使うかかせない治療薬なのである。しかし、この欠かせない治療薬が精神症状を引き起こすためやっかいである。それではどのような症状があるのだろうか。
主には抑うつが最も多く40%、ヒポマニックは28%、混合は8%、精神病は14%となっている。また段階として下記の分類が有名である。

Rome and Braceland2の分類
ステージ1マイルドな高揚感、疲労感の弱まり
ステージ2強い高揚感、ヒポマニック
ステージ3さまざまな症状(不安感、抑うつ、強迫性)
ステージ4サイコティック

ステロイドを飲んでいる場合このような症状に気をつけなければいけないのでが、症状出現の平均期間は飲み始めてから11日で大抵の精神症状は2日から23日の間で起こるがその中で1週間以内が多い。
また、期間と用量との関連は認められない。もともとの精神疾患のある患者であってもステロイドを使用したことで増悪はしない。

出現頻度としては、下記のようになっている。
1.3%  40 mg/日以下
4% to 6%  41 mg to 80 mg /日
18.4%  80 mg /日以上


治療法としては40mg以内に漸減する事が第一でそうすると大体が2週間以内におさまる。しかし場合によってはステロイドを減らせない場合があるため第二としてマイナーやフェノチアジン系の薬を使う。三環系は効果ないか悪化させる可能性があるから気をつけ、またそれでもだめな場合は第三として電気痙攣療法を考えるといいだろう。
緊張病とは聞き慣れない言葉である。
これを聞くとおそらくピアノの発表会の前などにえらく緊張する事。場合によっては過呼吸?
などと思うかもしれない。
しかし緊張病とは本来の言葉の緊張とは違い本当に固まってしまうのである。
固まってしまい片足をあげたまま何時間もたってしまったりする。普段あまり見かけないため認知度は低いが、統合失調症やうつ病などによくみられる。
あまりにも動かないためエコノミー症候群になったり、体中の筋肉が固いためうまくものを飲み込めずに肺に流れてしまい肺炎になったりする。

古くはカールバウムが1874年に次のようにまとめた概念でもある。「従来、弛緩性メランコリーと呼ばれていた精神状態で言葉少なになり、時には完全な無言状態となり動かなくなる表情は凝固して動きが見られず視線は漠然と遠方に固定されてしまう。感覚的印象に対する反応も消失し運動性一般の喪失および一見完全な医師の喪失を思わせる。時折、強硬症の際にみられる蝋屈症の症状が完全に出来上がってしまう。」

具体的にはカールバウムの例をあげると次のような例がある。
33歳の農夫、母と姉が一過性の精神病。失恋から無口、周囲に対して無関心。やがて四肢と顔面の痙攣あり。姿勢を変な体勢にしておいても長時間そのまま。無言。しゃべり続けるようにもなった「愛は神、愛は神、・・・」その後、衰弱し肺炎で死亡。

これが典型的な緊張病の例である。緊張病(弛緩性メランコリー)は一過性の部分現象。同一の現象が不随意性の無言と結びついた形で規則的かつ頻回にわたって出現すること、更に疾患の経過に応じて諸疾患現象の複合体が特定の規則性をもって追跡観察できることの二つが重要な基礎。緊張性精神病と名づけ、これまで、弛緩性メランコリー、昏ぐう性メランコリー、昏ぐう症、昏迷を伴ったメランコリー、無為症、無言症、痙攣と強硬症を合併する精神病、無言症などと報告されている。

症状としてはメランコリ(鬱)ー⇒マニー(躁)⇒昏迷⇒錯乱⇒精神的荒廃 が順を追ってあらわれる。
発展段階(メランコリー、マニー)と減衰段階(弛緩症、錯乱、精神荒廃)の2段階ある。
マニーの段階を全く観察できなかった症例ははるかに少ない。メランコリーと弛緩症の間にマニー、凶暴性、興奮などの状態が多い。稀にいきなり弛緩症から始まる症例もある、これは強烈な身体的ないし精神的損傷を得た場合が多い。

また特徴としてメモ程度に簡単に記すと、
・遺伝負因、50例中4例のみ。
・緊張病:中年層の前期。男性も女性も。教師や宗教。自慰行為、発症すると減る。
・全身性進行性麻痺:男性に多い。商人。自慰行為症状後も。
・孤独と瞑想的な引きこもりの傾向。もの静かで善良で落ち着いている。多血質で快活である。

このカールバウムからはじまって最近ではフィンクとテイラーがまとめたものが有名である。
それが下記の本である。統合失調症の一亜型とする考えと気分障害(鬱や躁)の一亜型と考える場合とに分かれている。現在の精神科の主流であるDSMⅣでは統合失調症としているが、カールバウム、フィンク、テイラーは気分障害とみている。

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非定型うつ病とは最近よく聞かれるようになった病気でもある。
非定型というぐらいなのでもちろんこれまでのうつ病の考えとは違うのである。
一番の違いは「楽しい事があったら抑うつじゃなくなる」というものである。
最近よく外来などでみかける典型例としては「仕事いやだな、もう仕事の事考えるだけで気分が沈んでくる。ああ死にたい。。」と日々言っており週末になると「わーい!週末だ!ピクニックに行こう!」と元気になるのである。しかし日曜日の夜サザエさんが始まる頃には「あああ。。明日から仕事だ。。嫌だ。。」となる、サザエさん症候群という異名までもっている。
これは、「仮病なんじゃ・・・」と思われても仕方ないし、ましてやこれで診断書をもらってきて会社を休んでいると「ずるい、なんて都合のいい病気だ」と思われる事も多いかもしれない。
しかし、本人としては相当辛いのは確かである。
専門的には後述するとしてこの病気に共通している現在の考え方は気分の波が大きくそれゆえある部分に関しては楽しめるといった事がメインではないだろうか。
特にこの病気の場合、境界性人格障害とかぶる事が多い、若い女性に多いというのもそういう理由だろう。
精神科の場合、同じ病像にさまざまな病名が付く事が多い。(診断名や診断基準がはっきりしていない科なのである)
それゆえ、非定型うつ病であり双極性障害であり境界性人格障害、どれともいえるといった症例は多くみる。
それでは、専門的にはこの一見都合のいいように見える非定型うつ病がどのような病気なのかをみていく。


非定型うつ病の概念の起源はSargantが主宰したロンドンのSt.Thomas病院グループの諸研究に求められる。1959年にWestとDallyが電気けいれん療法が無効で抑うつ性あるいはヒステリー性の特徴と不安・恐怖症状をもつ、うつ病像に対してモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)が奏功すると論じた。Sargantはこれを反応性、外因性、非定型あるいはヒステリー性うつ状態であり機嫌が悪く易刺激的で過活動で攻撃的でありこれまでの内因性うつ病とはまったく似ていないと記した。
ここがスタートなのである。
つまりはどちらかというと症状からというより治療の有効性からみて分類された概念でもある。
1982年Davidsonはこの概念を発展拡散させ、不安を主症状とするもの、生理的現象(食欲、睡眠欲、性欲)を主症状とするもの、双極性のものと3つに分けられ共通する特徴としては発症年齢がはやく女性に多いといっている。
さらに現代では大きく4つのグループがこの非定型うつ病の研究をリードしている。


・コロンビア大学
軽症で慢性経過をとる非内因性うつ状態でMAOIが奏功する。感情調整機能の脆弱性こそが基盤であり性格傾向にみえる演技性、依存性の方が2次的である。
このグループの考えはDSMⅣに採用されており現在の主流ともいえる。具体的には気分の反応性を必須とし、体重増加・食欲の増加・過眠・鉛様の麻痺・対人関係の敏感性の2項目を必要とする。薬物療法の適応を境界づける概念。

・ニューサウズウェルズ大学
軽症で慢性経過をとる非メランコリー性うつ状態である。MAOIの有効性は問われない。気分反応性は重視していない。
拒絶への敏感性こそが非定型うつ病の一次的な特徴でありそれがパニック障害と社会恐怖のリスクに先行したりそのリスクを増大させたりする。
拒絶への敏感性は生活上のストレス要因に反応してうつ状態を発展させる脆弱性を増大させる、そういった人たちは抑うつ感情に対して自らを慰労する戦略として過食や過眠をもって反応する。
精神病理学的なまとまりと症状構造論を重視。

・ピッツバーグ大学
過眠、食欲増進、体重増加、性欲増進といった症状と鉛様の麻痺などの脱力感を前景とするうつ状態。双極性障害のうつ状態を指示する。

・ソフト双極スペクトラム(アキスカル等)
軽症な双極性障害とする考え方である(数時間から数日間の微細な気分の変動が標識)。双極Ⅱ型と境界性人格障害とは根が同じ。