Nuclear expert Mycle Schneider on the COP28 pledge to triple nuclear energy production: ‘Trumpism enters energy policy’
(The Bulletin, 2023/12/18, https://tinyurl.com/yrd4rbmp)


A Happy New Year!

新年最初の投稿は原子力(核)利用について

COP28は「2050年までに世界の原子力エネルギー容量を3倍に増やす」 ことを声明文に入れた。TMI、チェルノブイリ、福島第一の原発事故を全く忘れている。 Diaz-Maurin(@BulletinAtomicの共同編集者)とWNISR報告書の主執筆者であるMycle Schneiderとのインタビュー記事の紹介。今回は少し長い。

世界原子力産業現状報告書 2023 (WNISR)は、500 ページを超え、40 か国以上をカバーする国際原子力産業の現状と傾向を詳細に評価しており、世界の原子炉の運転、建設、廃止措置に関する詳細を提供する事実に基づいたアプローチで知られている。現在は18版。COP28は、12月2日、米国と他の21カ国が2050年までに世界の原子力エネルギー容量を3倍に増やすことを約束した。

以下インタビューの概要:

Schneider: 世界の商用電力構成に占める原子力発電の割合は、1990 年代半ば以来、ほぼ半分に減少。 2022 年の低下は 0.6 パーセントポイントであり、福島事故後の 2012 年以来、ここ10年間で最大の低下となったという。 2022年の電力生産量では4%下がった。(中国は3%増加したのだから、世界全体では7%低下のはずだが、Schneider氏は中国以外では5%の低下と言っていて数字が合わないのでは?) 原発建造においては、世界で28基が建造されている。その内17基が中国製、11基はロシアが世界中に建造している。その他は皆無。これらが実際に稼動するかどうかは予想できない。生産能力(原発で発電できる量)は向上しているが、生産量(実際の発電量)は減少しているのが現状。その中でもフランスの減少が大きい。2015年からこの傾向が始まっている。40年超の原子炉はあり止まっているものもあるが、それは老朽化の問題ではなく、気候変動や他の国にはないストライキの影響が大きい。

Diaz-Maurinの質問:80年も原発を動かす最大のリスクは何か。Schneider氏の回答:それは誰にもわからない。どこもやったことがないのだから。50年稼働の危険性でさえわからない。Status Reportでは危険性に関しては議論していない。車などでは内部の部品を総取替するなど対策が考えられるが、原発ではそれができない。一度停止した原発を再稼働しているのは、米国だけ。(日本の原発は相当長い期間停止していて再稼働したものがあるが、それは含まない?) 原発が停止した理由は経済的にやっていけないためだった。原発を再稼働させることができるのは、州や政府による補助金が出るようになったため。Holtec Internationalのような核廃棄物管理を専門とする会社が政府の補助金で廃炉を進めているが、建設が終わる前に資金が枯渇してしまう可能性もある。Holtecは稼働停止した原発を購入し、再稼働しようとしている。パリセーズ原子力発電所では小型モジュール炉(SMR)を2基作ろうとしている。しかし、Holtec社は原発の稼働経験もないし、建設の経験もない。SMRは世界に4基だけあり、2基が中国、あと2基はロシアにある。SMRは簡単に、短期間でできるという触れ込みだったが、ロシアでは12.7年、中国では5年の計画のところ10年かかった。

Schneider氏はSMRを”small miraculous reactors(小さな奇跡の原子炉)”と訳している。米国のNuScaleという米国SMR(Small Module Reactor)開発企業が2015年にSMRの建設をスタートさせたが、2023年の現在もただ一つの原子炉(40Mw)も建設していない。NuScaleはSMRを7基にして、容量も70Mwにするようユタ州に提案。少数では数のメリットが出ないため。だが建設コストが高すぎる。1キロワットあたりの建設費用が$2万の高価格になってしまう。これは欧州の大型EPR(欧州型加圧水型軽水炉)の2倍。

Diaz-Maurin氏は廃棄物について、SMRからの廃棄物は大型原子炉からの放射性廃棄物よりもキロワットあたりの廃棄物が多いのではないかと質問。Schneider氏の回答は肯定的なもので、SMRからの廃棄物は大型原子炉よりも多くなる。


SMRは気候変動危機への対策として各国で取り組まれているが、EPRもAP-1000も実際には問題があり、発電開始は2030年になるだろうとされている。また十分な発電ができるのは2040年台になる。気候変動危機への対策というのは非現実的。

COP28で22カ国は2050年までに世界の原子力エネルギー容量を2020年の3倍に増やすことを約束した。

Diaz-Maurin氏の疑問は、どうしてこれら22ヶ国が原子力エネルギーに関心を持つのかということ。Schneider氏の回答:これら22の国はすでに原子力発電を行っている国々。国から原子力への補助金を引き出したいという関心がある。原子力エネルギー容量を3倍にするという公約を実現可能性の観点から見ると、それは不可能。 私たちは今から 27年後の2050 年を目標として話しています。 2003 年からの過去 20 年間に業界で何が起こったかを見ると、中国以外の世界では過去20年間に57基の原子炉がマイナスとなった。

Diaz-Maurin氏が気候変動対策に対して原子力が必要ではないかとの質問にたいして、Schneider氏は原発建造から実用化までの期間について説明する。現実的には、建設から発電開始まで20年以上かかる。気候変動対策には役立たない。2050年までには、稼動期間を延長したとしても、270基が廃炉となる。これまでの5年間で平均の廃炉期間は43年だった。一年で10基が廃炉になる。過去10年間の原発の建設必要期間は、5年だった。ということは原発の数を確保するためにも、1年で原発の数を2倍にしなくてはならない。このように考えると、2050年に原発を3倍にするのは非現実的である。

Diaz-Maurinは、2050年までに原発の数を3倍にするというのは、1ヶ月で2.5基の原発を作ることになりますねとまとめた。

Schneider氏は、2050年までに270基で230ギガワット、SMRでまかなうとすると、数千基のSMRが必要になる。Schneider氏は、COP28では、2030年までに再生可能エネルギーの出力を3倍にするという別の公約もあったことを公表した。そうするとこれは、原子力エネルギーの約束に対する[最後]の一撃になるという。再生可能エネルギーを7年間で3倍にするという目標は非常に野心的な目標である。Diaz-Maurin氏が、それは可能ですかとの問いに、Schneider氏は非常に難しいでしょうと答えた。しかしこの約束は22ヶ国だけではなく、100ヶ国の国々の約束。その中でも中国は重要。2022年に注目の太陽光発電量は原子力による発電量を超えた。中国は3倍化を達成できそうだ。他の国も見習わなければならないが、中国の例を見ると、頑張ればできるかもしれない。

原子力発電では、新規建設は中国とロシアだけ。中国とロシアは、原子力発電を特にアフリカに輸出している。中国とロシアは原子力発電で海外へのとっかかりを作ろうとしている。特にロシアは使用済み核燃料を自国に持ち帰ることも提案している。これは、使用済み核燃料を自国に搬入させない法律があるのでフランスではできない。ロシアは、トルコ、エジプト、バングラデシュ、ベラルーシなどへの輸出を進めている。

Diaz-Maurin:氏はStatus Reportが30年前の1992に出版されてから、今まで続けている理由を、産業界がやらないからかと聞いた。Schneider氏は理由として市民に対する情報公開をするため、虚報や偽ニュースを防ぎ、原子力の政策決定に何らかの影響を与えるためだと答えた。アメリカでのトランプ大統領の”盗まれた大統領選挙”の例を引きながら、原子力のような問題に関しては、事実に基づいて意思決定が行われることが基本だと答えた。また、莫大な予算がかかる原子力行政には、汚職と改ざんという2つの問題があること。さらに核の軍事利用の問題もある。原子力は民間での原子力発電と医療での利用はあるが、SMRなどで核の知識が広まれば、原子力(核)の軍事利用を進める情報が拡散されてしまう。これは大きな問題。

- On December 2, the United States and 21 other countries pledged to triple the global nuclear energy capacity by 2050.
- The pledge was worded as a commitment “to work together to advance a global aspirational goal of tripling nuclear energy capacity from 2020 by 2050.” It was aspirational—and ambitious.
- To offer a service to civil society so it can take decisions based on facts, not beliefs.
- When it comes to issues like nuclear power, it’s fundamental that decisions are made on the basis of facts.
- Corruption and falsification are two of the issues affecting the nuclear industry.

<<単語帳>>
WNISR: World Nuclear Industry Status Report●世界原子力産業現状報告書
aspirational:向上心のある
brevity:(表現などの)簡潔さ
mind-boggling:仰天するような,度肝を抜くような
in a nutshell:手短に言うと
dormant:休眠中の
Palisades nuclear plant:パリセーズ原子力発電所は、米国ミシガン州サウスヘブンから南へ8マイル南にある432エーカーの敷地内にある、ミシガン州ヴァンビューレン郡秘密郷のミシガン湖畔に位置し、長期間放置されている原子力発電所。(Wikipedia)
Holtec International:ニュージャージー州マウント・ローレルに設立され、米国フロリダ州ジュピターに拠点を置く、エネルギー産業向けの機器およびシステムのサプライヤー。原子炉用部品の設計と製造を専門としています。同社は原子炉から出る使用済み核燃料を管理する機器を販売している。(Wikipedia) 核廃棄物管理を専門とする
small modular reactor:小型モジュール(原子)炉◆【略】SMR
Power Reactor Information System:発電用原子炉情報システム(PRIS)? IAEAの報告書
NuScale:米国SMR(Small Module Reactor)開発企業
demise:(活動などの)終焉
EPR:European Pressure Reactor●欧州型加圧水型軽水炉
AP-1000:米国Westinghouseの原子炉
EDF:Electricite de France SA●フランス電力会社
final nail in the coffin:[最後]の一撃
phenomenally:非常に
put the foot in the door:~への足掛かり[取っ掛かり最初の第一歩]、布石を敷く[打つ]