今日は、前回取り上げたミュージカル版・マティルダの原作であるロアルド・ダールの『Matilda (邦題:マティルダは小さな大天才)』を紹介します。この本は、多読に向いているペーパーバックとして紹介される事も多いので、読んだ事がある方やタイトルをご存知の方も多いのではないでしょうか。
ストーリーは、ロンドン郊外の小さな町に住む5歳のマティルダは、本を読むのが何よりも大好きで、小学校入学前にして英文学やロシア文学を始め難しい数学の本も読みこなし、知識も豊富な天才少女。だが、勉強嫌いでTVばかり見ている労働者階級の両親は、幼い娘が天才的な頭脳の持ち主である事を理解しようとせず、反対にマティルダを馬鹿にし、彼女の兄である息子ばかり可愛がり、マティルダに対しては育児放棄や学校に行かせてくれないといった酷い扱いをする。そんな訳で、マティルダはいつも両親に対する不満が溜まりっぱなし。それに対するちょっとした復讐として、父の帽子に接着剤を塗って帽子を脱げなくしてしまい、父に恥をかかせる等の子供っぽい悪戯を繰り返していた。6歳になったある日、やっと学校に通わせてもらえるようになるが、あろうことか、そこは何と子供嫌いで生徒達に体罰を繰り返す女校長が牛耳る、マティルダの家とさほど変わらない地獄の様な学校だった。マティルダの驚異的な才能を認め、唯一優しくしてくれるのは担任の女性教師・ハニー先生だけだったが、そんな良き理解者が現れた事で、マティルダもハニー先生には心を開いていき、二人の絆は徐々に深まって来て・・・。
という感じです。色々と辛い目に遭いながらも、それにめげる事なく、持ち前の知識を駆使して意地悪な大人達をギャフンと言わせようと奮闘するマティルダが何とも愉快で、勇気を貰えます。ハニー先生との教師と生徒の間柄を超えた母子の様な絆には心が温まりますし、育児放棄や体罰等の子供達を取り巻く社会問題をさりげなく織り込みながら、楽しく読めるストーリーを書いた作者・ダールの力量の凄さを味わえ、児童書の枠を超えて、老若男女が各自の捉え方で読める面白くて味わい深い一冊です
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英語は、文法はそれほど難しくないですが、独特の言い回しや、マティルダが天才児という事もあって大人でも分からない様な単語を使うので児童書にしては難易度が高いですが、それさえクリアすればすんなり読める程度です。この作者は読者を惹きつける上手な文章を書く(この辺りは英語の勉強にも役立ちます)ので、その分、大人の方が子供よりも楽しんで読めて、幅広い年齢層にお薦めです。
映画化もされていて、原作同様パンチが効いていて面白いのですが、残念ながら日本ではソフト化されていないらしく輸入盤しか手に入れることが出来ません。それでも割と原作に忠実な作りで、子供向け故ストーリーは分かり易いので、日本語字幕がなくてもある程度は楽しめるかと思います。英語字幕を表示させれば英語の勉強にもなりますしね
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邦訳も出ています。