斎藤悌子さんのダニー・ボーイ(沖縄タイムス2024年3月28日付主張欄)

 最近、大友良英さんのラジオのジャズ番組を楽しんで聴いている。大友さんの音楽観に誘われて、今ではジャズや音楽を通じて、人間の心やコミュニケーションを少しだが感じられるようになった。

 先日はリクエスト特集の中で、1935年宮古島生まれで石垣島在住のシンガー斉藤悌子さんの「ダニーボーイ」がかかった。斎藤さんは高校を出てすぐ米軍基地のジャズ専属歌手となり、そのバンドで出会った男性と結婚、その夫の死と共に活動を休止していたが、15年ほど経って再開、何と80歳を過ぎて初アルバムをリリースした。

 斉藤さんの紹介や曲を聴いたただけでも、斉藤さんのジャズに思いと人生が表れているのがうかがわれる。とくに「ダニーボーイ」は米軍基地時代、ベトナム派遣直前兵士が泣いていたのを見て、戦場に行く母の思いを歌った曲として受け止め直されたそうだ。

 斉藤さんはボイストレーニングを欠かすことなく、その思いがこもった音楽活動を続けておられる。多くの人にその声が届くことを願う。