パリ・オリンピックが始まりました。今回は周期が3年と変則的なこともあり前回の東京大会がつい最近の様に感じられます。まぁ、歳を重ねるにつれ、年月が過ぎるのが早く感じるせいもあると思います。

 

アメリカでの人種差別に嫌気が差してヨーロッパに移住したミュージシャンは多く、中でもフランスのパリはジャズメンにとって憧れの都。数多くのパリ録音や「I LOVE PARIS」「APRIL IN PARIS」・・・・・等、パリに因んだ曲も好んで取り上げていました。でもジャケットでパリを表現しているレコードとなると意外にも少ないようで・・・

 

 

REACH OUT!/ HANK MOBLEY (BLUE NOTE BST-84288)

 

エッフェル塔をバックに記念写真に納まるHANK MOBLEY。60年代中盤からMOBLEYの作品にもジャズロック調が目立つようになりましたが、それらを容認してきたMOBLEYファンもポップ過ぎる「REACH OUT I'LL BE THERE」と「GOING OUT OF MY HEAD」には困惑、WES MONTGOMERYの『CALIFORNIA DREAMIN‘』以上の衝撃だったと思います。『CALIFORNIA~』は大ヒットし、それなりの評価を受けましたが、こちらは未だに低い評価のままです。 

 

WOODY SHAW、LAMONT JOHNSON、BOB CRANSHAW、BILLY HIGGINSと60年代後半のジャズ界を代表するメンバーを揃えているにも拘らず、MOBLEYファンが違和感を感じたのは初めてギターを入れたこと、しかもそれがGEORGE BENSONだったこと。FOUR TOPSで有名なタイトル曲が、このアルバムの印象を決定づけてしまいました。冒頭から活躍するのはGEORGE BENSONの甘ったるいギター、主役はMOBLEYのはずなのに、なかなか登場しません。ハードバップ期に全盛期を迎え、MILESの元でモードにも挑戦、MOBLEYなりに消化してBLUE NOTEに復帰後も新主流派の面々に交じって第一線で活躍していたのに・・・このあまりにも日和見的な作品に”MOBLEYよ、お前もか”と硬派のMOBLEYファンが嘆き悲しんだのは当然と言えば当然でした。私もソウルヒット曲を取上げたことに、最初は無視を決め込んでいましたが、あらためて聴いてみると、そんなに毛嫌いされるような内容ではないと思います。オリジナルのFOUR TOPSバージョンと比べて見ても、とても良く練られたアレンジでヒット性も十分、パリ・オリンピックを機に見直される可能性もあるかもしれません。VAN GELDER刻印、但しRVGにしては特に優れているとは感じない、ごく普通の録音・マスタリングです。それと(PROMO盤も含め)モノラル盤は存在しないようです。

 

 

 

UNDER PARIS SKIES / FREDDIE REDD (FUTURA SWING 03)

背絞り無しのセカンドプレスです。

もう一枚“エッフェル兄さん”を。こちらは昔からピアノトリオの傑作として知られています。華やかで軽快なイメージがあるパリ、でもFREDDIE REDDのアルバムには後ろ髪を引かれるような雰囲気が漂い、モノクロのジャケット写真からは戦時下のパリのような、ある種の暗さを感じます。きっとREDD自身の“SWEET & BITTER”なパリの思い出が詰まっているのでしょう。当初タイトルから同名の名曲が収録されていると思ったら含まれておらずガッカリ、でもすぐにそんなこと全く関係なかったと思わせるメロディアスで素晴らしい内容です。

 

 

 

JAZZ LOVES PARIS / BUDDY COLLETTE (SPECIALTY SP 5002)

 

上掲2作はエッフェル塔でしたが、こちらは凱旋門です。マルチリード奏者、BUDDY COLLETTEらによるパリに因んだ曲集。「ILOVE PARIS」「LA VIE EN ROSE」「C’EST SI BON」「DOMINO」「THE LAST I SAW PARIS」「UNDER PARIS SKIES」と名曲が、これでもかと出てきます。

FRANK ROSOLINO、RED MITCHELL、HOWARD ROBERTSの参加からも分かるように全体的にウェストコースト・ジャズの味付け、編曲で、この辺りは好き嫌いの分かれるところ。BUDDY COLLETTEはアルト、テナーサックス、フルート、クラリネットとマルチリード奏者の本領を発揮していますが、個人的にはテナー一本に絞って、アレンジもあまり施さず、じっくりと聴かせて欲しかったというのが偽らざるところです。

 

他にもMICHEL LEGRANDのアルバム等、パリに因んだジャケットはありますが、ちょっと守備範囲を外れますので・・・・。