西海岸のテナーサックス奏者として一目置かれる存在のRICHIE KAMUCA、滑らかで優しい語り口が魅力でした。

 

CY TOUFF、HIS OCTET&QUINTET(PACIFIC JAZZ 1211)

 

CY TOUFF名義のアルバムですが、トロンボーンのような音を出すベース・トランペットという特殊な楽器のためか、特にクインテットのB面はRICHIE KAMUCAがリーダーと思えるほど躍動していて、肩を組んだ両者のジャケットから実質、双頭アルバムだったのではと想像されます。内容は中間派に近い寛いだ内容で刺激がないと取られかねない一歩手前の極上の演奏。A面のオクテットはJOHNNY MANDELのアレンジが効いていて、良くも悪くも当時のウェスト・コーストジャズの特長を端的に表しています。個人的には当然B面が好きです。

 

 

 

SOLO FLIGHT(JAZZ WEST COAST 505)

 

PACIFIC JAZZのオムニバス「JAZZ WEST COAST」シリーズの逸品。RICHIE KAMUCAは一曲だけですが、これがディスコグラフィー上は最初のリーダー・セッション。その「IF I SHOULD LOSE YOU」でのKAMUCAのテナーはLESTER YOUNG系の流麗で寛ぎに満ちた演奏で、とても初リーダー・セッションとは思えません。PETE JOLLYとLEROY VINNEGARの起用は上掲の『CY TOUFF、HIS OCTET&QUINTET』(PACIFIC JAZZ 1211)での共演がきっかけだと思われます。それにしてもRICHIE KAMUCAの他JAMES CLAY、BILL PERKINS、PHIL URSOらの未発表曲は、いずれもワンホーン・セッションで彼らの最高のパフォーマンスを記録、他のアルバムには含まれていないため、オムニバスながら万難を排しても入手すべきアルバムだと思います。

 

 

TENORS HEAD-ON / BILL PERKINS、RICHIE KAMUCA (LIBERTY LRP 3051)

 

音色が似ているBILL PERKINSとRICHIE KAMUCA、ジャケットにソロ・オーダーが記載されていますが、音がやや小さく高音の方がKAMUCAです。この手の同一楽器の共演はユニゾンやオブリガートを多用した「INDIAN SUMMER」や「OH! LOOK AT ME NOW」のような素晴らしい曲がある反面、余程音色が違わないと区別が付かず、延々と同一奏者のソロを聴かされているような気分になるリスクも含んでいます。

 

 

 

RICHIE KAMUCA4(MODE LP # 102)

 

待望のワン・ホーン作、リズム隊にCARL PERKINS、LEROY VINNEGAR、STAN LEVEYと西海岸としてはベストメンバーを配し期待が高まります。実際、冒頭からLESTER YOUNG系の寛ぎに満ちた優しく上品、かつ良く歌うKAMUCAのソロが繰り広げられますが、穿った見方をすれば刺激に乏しく「上手いのだけど・・」と耳の肥えたリスナーは物足りなさを感じるかもしれません。かつて“幻の名盤”ブームの際にはMODEレーベルの中でも頭一つ抜けた存在で、オリジナル盤は50000円もした時代を経験(私が入手したのは値崩れした後で15000円)していると「MY ONE AND ONLY LOVE」や「WHAT'S NEW」のような珠玉の演奏があるものの、アルバム全体としては期待値までには達していないと思います。しかしこれはウェストコースト・ジャズ全般に言えることで同世代の東海岸のハード・バッパーと比較すると評価が下がるのは止むを得ないことでしょう。

 

 

 

DROP ME OFF IN HARLEM(CONCORD JAZZ CJ-39)

レーベル面「白」がオリジナル、上掲盤はセカンド・プレス。再発されていたとはちょっと驚き。

約20年のブランクを経て新生CONCORDレーベルに吹き込んだ一枚。以前より力強さが増す代わりに滑らかさが減少、一聴、欠点を補ったように感じますが、かつてのKAMUCAらしさが無くなったことは残念です。50年代のKAMUCAなら「WITH THE WIND AND THE RAIN IN YOUR HAIR」はもっとスムースに歌い上げていたと思います。ただドラムレスで替りにHERB ELLISのギターを入れたことは正解で、CONCORDレーベル特有の”楽しいジャズ”を繰り広げています。また「DEAR BIX」ではヘタウマなKAMUCAのヴォーカルも聴けます。

 

サイドマンとして参加したSHELLY MANNEらとの『AT THE BLACK HAWK VOL.1~VOL.4』や『LIVE! SHELLY MANNE &HIS MEN AT THE MANNE-HOLE』も同様に力強さの替りに滑らかさや優しさが失われていて・・・・。