ATLANTICは内容は良いけれど“音が籠っている”“マスタリングが悪い“と文句を付けることが多いレーベルですが、モダンジャズの歴史を考える上で重要な位置を占めていて、なんだかんだ言いながら所有枚数も、そこそこ。

 

マスタリングもかなり改善された1400番台にMARVIN ISRAELなる無名?の画家による4枚のジャズマンの肖像画のジャケットがあります。ANDY WORHOLのように後年大成することはありませんでしたが、印象に残るジャケットです。

 

 

 

TONIGHT AT NOON / CHARLES MINGUS (ATLANTIC 1416)

 

MINGUSの代表作の1957年の『THE CLOWN』と1961年の『OH!YEAH』の未発表曲で構成(1964年発売)。未発表になった理由は、ちょっとアバンギャルド過ぎる内容と演奏時間の問題でしょう。しかしMINGUSクラスになると未発表曲集と侮ることなかれ、購入しても決して後悔しないレベルです。個人的には THE CLOWN』の中で、ほぼ語りに終始するタイトル曲の替りに「TONIGH AT NOON」を入れて欲しかったし、ROLAND KIRKのSTRITCHのソロが素敵な「PEGGY’S BLUE SKYLIGHT」は『OH! YEAH』の他のどの曲より愛着が湧きます。ところで肖像画はMINGUSの顔の中心部分が実物より、かなり男前に描かれていて怖い怖いMINGUSも容認した?

 

 

 

VIBRATIONS / MILT JACKSON (ATLANTIC 1417)

 

MILT JACKSONが、わざわざ肖像画のモデルになったとは思えず、このアングルは『PLENTY、PLENTY SOUL』(ATLANTIC 1317)のジャケットを見ながら描いたものと推測されます。しかし・・・言われれば何となく似ているかな?レベルで、いきなり絵を見せられてMILT JACKSONが浮かぶ人は少ないと思います。まぁMINGUSのようにヘタ描いたら殴られるような心配はなかったので手を抜いたのかもしれません。JACKSONのヴァイブ+4管のオクテット、もしくはヴァイブ+ワンホーン(一部替わりにギター)のシンプルなクインテット構成ですが、曲によりコーラスが入るなどバラエティに富んだ内容です。一番聴きたかったのは「MALLETS TOWARD NONE」、もちろんオリジナルはトロンボーンで参加しているTOM McLNTOSHの「MALICE TOWARD NONE」、ヴァイブラホン奏者なのでMALLETSなのでしょう。

 

 

 

STITT PLAYS BIRD / SONNY STITT (ATLANTIC 1418)

 

CHARLIE PARKERの後継者の中では最も似ていると自他ともに認めるSTITTにPARKERの愛奏曲を吹かせるという、なんとも安直な企画。しかもピアノのJOHN LEWISはPARKERと共演しているし・・・どうしてもPARKERの演奏と比較してしまいます。ただSTITT本人にとっては念願の企画だったようで全編でウキウキ感が伝わってきて、特にラテン調の「MY LITTLE SUEDE SHOES」は飛び切り楽しいトラックです。ジャケットは顔の輪郭からSONNY STITTと聞かされれば・・確かにそう見えますね。ところで初期のブラック・レーベルの頃は音に不満があったATLANTIC、いつの間にかマスタリング(カッティング)が改善され満足できる音に変貌しています。

 

 

 

COLTRANE’S SOUND / JOHN COLTRANE (ATLANTIC SD 1419)

残念ながらステレオ盤、しかもセカンド・プレスです。

このシリーズの中では最も有名ですが、1960年10月の録音でCOLTRANEがIMPULSEに移籍後の1964年にリリース、当初はお蔵入りしていたアルバムです。但し絶頂期のCOLTRANE、何故当初発売を見合わせたのか、既発のATLANTICのアルバムに比べても理由が全く分からない程、充実した内容です。特にMODEの影響が顕著に表れている「THE NIGHT HAS A THOUSAND EYES」と「BODY AND SOUL」は抜群でATLANTIC時代を代表する演奏でしょう。リズム隊も後の黄金カルテットのMcCOY TYNERとELVIN JONESが務め重厚な“COLTRANE SOUND”の重要部分を担っています。肖像画は最初『BLUE TRAIN』を参考にしたのかと思いましたが、眼光の鋭さからファースト・アルバムの『COLTRANE』(PRESTIGE 7105)のようですね。