数多くの名盤を有するモダンジャズ界の“大御所”にも、イマイチ人気のないレコードが存在します。理由について考えてみました。

 

 

 

SONNY ROLLINS(BLUE NOTE 1542)

 

ワンホーンの大名盤『SAXOPHONE COLOSSUS』にROLLINSはDONALD BYRDの参加を希望していましたが、予算の都合で却下されたという逸話があります。その後BLUE NOTEに移籍してリハーサルに十分に時間を掛けられるようになり、念願のDONALD BYRDとの共演も可能となりました。但し残念なことに条件が揃っても必ずしも名盤は生まれないことを端的に表したような作品になってしまいました。まず指摘したいのはROLLINSとWYNTON KELLYの相性の悪さ、名盤『NEWKS TIME』でも唯一の欠点はKELLYのピアノでした。ROLLINSというよりRVGとの相性かもしれません。(オンマイク録音のため)音が籠っていて全くKELLYらしくありません。それと直前録音のPRESTIGEの『TOUR DE FORCE 』でも顕著なROLLINSの攻撃的な面ばかりが強調された曲が多く、大らかに良く歌うROLLINSらしさがあまり感じらません。そんな中で「HOW ARE THINGS IN GLOCCA MORRA」は唯一の歌もので楽しませてくれました。ROLLINSは”仮想CLIFFORD BROWN”としてDONALD BYRDを相棒に選んだのでしょうが、KENNY DORHAMの方が余程合っているように思います。

 

 

 

EMPATHY / BILL EVANS(VERVE V-8497)

 

RIVERSIDEからVERVEに移籍して最初のレコード。録音はRUDY VAN GELDER、プロデュースはCREED TAYLOR。DEAD-WAXに刻印がないことからRVGは録音だけでマスタリング(含むラッカー・カッティング)は行っていないようです。SHELLY MANNとの共同作の形を取っているため仕方ないのでしょうが、はっきり言ってSHELLY MANNのドラムは煩くPHILLY JOE JONESの悪い時のような感じです。RIVERSIDE時代からのEVANSファンの多くはSHELLY MANNのドラミングに興味があるとは思えません。だから良いのはEVANSがスローバラードで奏で、郷愁を誘う「DANNY BOY」や「GOODBYE」でSHELLY MANNは全編ブラシで大人しくしてくれていたら・・・と思う方がほとんどでしょう。それと作品を印象付けるためには重要なA面一曲目に、およそEVANSの繊細で上品なイメージとは、かけ離れた騒々しい「THE WASHINGTON TWIST」を持ってきたこともマイナスです。明らかにプロデュースの失敗でしょう。

 

 

 

SEVEN STEPS TO HEAVEN / MILES DAVIS (COLUMBIA CL 2051) 

 

『SKETCHES OF SPAIN』の親戚のようなジャケット・デザインには一体どういう意図があったのでしょう?『MILES AHEAD』のジャケットにクレームを付けたMILESが、この(手抜き)デザインをすんなりと受け入れたとは到底思えません。MILESは二つの中途半端なセッションに満足せず、COLUMBIAとの契約をこなすために(仕方なく)発売したアルバム?ならジャケットに興味がないのも当然かもしれませんが・・。

 

『KIND OF BLUE』で時代に先行し過ぎたMILES、ちょっと立ち止まるどころか後ずさりしているように感じます。二つのセッションでは新進気鋭のHERBIE HANCOCK、TONY WILLIAMSを擁するセッションよりVICTOR FELDMANとの方が、ずっと良い内容だと思います。

 

 

 

COLTRANE PLAYS THE BLUES (ATLANTIC 1382)

 

1960年10月24日のセッションは『MY FAVORITE THINGS』と『COLTRANE’S SOUND』にも分散されましたが、その中でブルース・ナンバーばかり集めたのが本作です。しかもほとんどがCOLTRANEの自作で聴きなれない曲ばかり、ブルースが大好きという方以外には、はっきり言って退屈で片面を聴き通すのも辛く、両面が終わる頃には“ドッ”と疲れが出るかもしれません。また収録曲の中で一番かったるい「BLUES TO ELVIN」を冒頭に持ってきたのは大いに問題でした。個々の曲の出来は悪くありませんが、ポップなスタンダードや軽快な曲と絡めてこそブルースの良さが発揮されると思います。