バップ期から長い芸歴があるHOWARD McGHEE、時代の変遷に微妙に立ち位置を替えながらハードバップ期を生き延び『RETURN OF HOWARD McGHEE』『DUSTY BLUE』『MAGGIE'S BACK IN TOWN』『NOBODY KNOWS YOU WHEN YOU ’RE DOWN AND OUT』等の人気作を世に出しました。今回はあまり語られていない10インチ時代の作品に焦点を当てます。

 

 

 

HOWARD McGHEE(BLUE NOTE LP 5012)

 

下掲の10インチに『VOL.2』のタイトルが付いているため『VOL.1』もしくは『HOWARD McGHEE’S ALL STARS』の通称で呼ばれています。オリジナル音源は下掲のSP盤4枚(8曲)でMONKやMILESの同時期のBLUE NOTE作品と比べると、如何にもバップの雰囲気が充満、古臭さを感じさせます。中で燦然と輝いているのはFATS NAVARROとの2トランペットの2曲(BOPERATION、THE SKUNK)で当代一のトランぺッターとのバトルが楽しめます。残りはKENNY DREW、JAY JAY JOHNSON、MAX ROACHら当時の新進気鋭のメンバーがいるにも拘らず、McGHEE自身がバップから脱皮できず新進のBLUE NOTEらしさ(SOMETHING NEW)をあまり感じ取ることができませんが、全体的には元気がある佳作といったところ。1948年(FATS NAVARROとの2曲)及び1950年の録音です。

 

I'LL REMEMBER APRIL / FUGUETTA (1572)       FLUID DRIVE / DONNELLON SQURE (1573)

 

 

MECIEND /  LO-FLAME (1574)                           THE SKUNK / BOPERATION (558)   

 

久しぶりにSP盤を取上げたので音の違い等にも触れておきましょう。片面に4曲詰め込んだ10インチLPと片面1曲のSP盤、しかも33回転と78回転。SP盤の方が迫力があることは自明ですが、SP盤と10インチLPの発売時期がそれほど空いていないため、想像していた程の違いは感じられません。なにより4枚のSP盤を3分毎にひっくり返すのは面倒です。BLUE NOTEのバップ期以降やPRESTIGEのSP盤はコンプリートを目指し随分と蒐集しましたが、取り扱いが面倒なため実際のところ、あまり聴いておらず蒐集するのは”キメ曲”(上掲盤なら558番)だけで良かったかなぁと若干後悔しています。

 

 

 

HOWARD McGHEE VOL.2(BLUE NOTE 5024)

 

こちらは、1953年の録音で10インチLPがオリジナル音源、SP盤はありません。やや旧態依然とした前作からメンバーを一新、GIGI GRYCE、TAL FARLOW、HORACE SILVERの参加で随分とモダンな印象を受けます。知的なGRYCEとTAL FARLOWに合わせるのようにMcGHEEもバップ・トランぺッターのイメージを押し殺して控えめに吹いていて『DUSTY BLUE』等60年代のMcGHEEの特徴を既に感じ取ることができます。録音は上掲盤と同じくRVGがBLUE NOTEを一手に引き受けるまで数多く手掛けていたWOR STUDIOS(DOUG HAWKINS)。なお、この10インチ2枚は12インチ化されておらずRVGのリマスタリングで聴けないのが残念です。


*2IN1の国内盤LPは発売されています。