メンバーに、この人が入ると、曲そのものが途端に重苦しくなるトロンボーンのJULIAN PRIESTER、リーダー・アルバムの紹介の前に彼を有名にしたアルバムから入りましょう。

 

 

THE LITTLE GIANT / JOHNNY GRIFFIN SEXTET (RIVERSIDE RLP 12-304)

 

SUN RAやMAX ROACHグループに在籍していたJULIAN PREISTERですが、世間一般に存在が知れ渡ったのはGRIFFINのこのアルバムです。漆黒のジャケットの影響もありますが、NORMAN SIMMONS作のハードボイルドでドラマティックな曲を更に真っ黒にしているのが、重苦しい三管編成によるハーモニーを底辺で支えているJULIAN PRIESTERのトロンボーンです。後に『KELLY DANCERS』のような寛いだアルバムを録音したテナーマンとは全くの別人が此処にいます。好き嫌いが極端に分かれる作品として有名ですが私は大好きです。

   

 

BLUES FOR DRACULA / PHILLY JOE JONES SEXTET (RIVERSIDE RLP 12-282)

 

順番が逆ですがGRIFFINとPRIESTERが重複する点、薄気味悪い点でも『THE LITTLE GIANT』に雰囲気は似ていて、こちらは下書きになったレコードと理解して良いと思います。PHILLY JOEがドラキュラ伯爵に扮して朗々と語る冒頭のタイトル曲(「PURPLE SHADES」と同曲)以外は純粋なハードバップ作品でPHILLY JOEの初リーダー作品でもあります。その不気味なタイトル曲で先発ソロを取るのがJULIAN PRIESTER、この曲調には打って付けの音質です。長めのドラムソロが入るB面は、やや冗漫な印象を受けますが、A面は紛れもない傑作。

 

 

ABBEY IS BLUE / ABBEY LINCOLN (RIVERSIDE RLP 12-308)

 

ABBEY LINCOLNのRIVERSIDEでの3作目は1、2作目に比べて暗く重苦しく、暗い曲が多いからJULIAN PRISTERを起用したのか、JULIAN PRIESTERを起用したから全体が重苦しくなったのか(多分前者)疑問ですが、PRIESTERの影響力、存在感はかなりのものと思います。SONNY ROLLINSが大活躍するRIVERSIDEの一作目を、こよなく愛聴している身としては、LINCOLNの変貌には最初戸惑いましたが、聴き込むほどに良さが伝わってきます。

 

 

KEEP SWINGIN’ / JULIAN PRIESTER (RIVERSIDE RLP 12-316)

 

SUN RAやMAX ROACHグループに参加して研鑽を積んできたJULIAN PRIESTER、上掲のRIVERSIDE 3作に参加した後、ついに念願のリーダー作を録音します。これまでのイメージから、とんでもなく重苦しくモゴモゴした鑑賞に堪えないような作品になるのでは思われましたが、全く予想外に明るくタイトル通り良くスウィングするアルバムに仕上がりました。要因は“名盤の影にこの人あり”と謳われたTOMMY FLANAGANとPRISTERのトロンボーンに寄り添って良い味を出しているJIMMY HEATHの存在、FLANAGANはいつになく明るい音で全体のイメージ形成に貢献しています。トロンボーンのアルバムとしてはベスト5に入るレベルの出来栄えです。

 

 

 

HUB CAP / FREDDIE HUBBARD (BLUE NOTE 4073)

 

上掲のリーダー作で相性が抜群だったJIMMY HEATHとJULIAN PRIESTERが揃ってFREDDIE HUBBARDのアルバムに参加、当時主流になり始めていた三管編成の分厚いハーモニーを担っています。PRIESTERのトロンボーンはBLUE NOTE初見参、RVG録音だと重苦しさが随分と緩和されたように感じます。

 

フロントが剛腕 FREDDIE HUBBARDにJIMMY HEATHにJULIAN PRIESTERとこれだけ重量級が揃うと支えるドラマーにPHILLY JOEは適格な人選でした。ピアノにはCEDAR WALTONを配置し、ハードバップから完全に新主流派(モード)に突入、HUBBARDのBLUE NOTE作品は傑作揃いですが、これも十分期待に応える内容です。

 

 

CLIFFORD JORDAN IN THE WORLD(STRATA-EAST SES 1972-1)

 

混沌とした時代の名盤、内容の濃いアルバムですが拙ブログでは何度も取上げているので簡単に・・・。核戦争が起きた後の廃墟となった世界を感じさせる名曲「VIENNA」で、むせび泣くCLIFFORD JORDANのテナーやDON CHERRYのトランペットを更に悲壮感たっぷりに重苦しくドラマチックに演出しているのがJULIAN PREISTERのトロンボーンです。

 

 

処分済みで手元にはありませんがBOOKER LITTLEの『OUT FRONT』『BOOKER LITTLE AND FRIEND』にもPRIESTERは参加していて、ともに重苦しい雰囲気が漂っていました。また2作目のリーダー作としてバリトンのCHARLES DAVISらとの『SPIRITSVILLE』(JAZZLAND 25)は音が濁っていて・・・・さすがにTOO MUCH HEAVYです。

 

PRIESTERはその後もECM等にリーダー作を録音、長く活躍しますが、当方の守備範囲外なので割愛します。