過日、拙ブログにコメントを戴いた方がROLAND KIRKが変名で一曲だけ参加しているEDDIE BACCUSの『FEEL REAL』について触れられていましたが、現存するBACCUSのレコーディングは多分、これ一枚だけだと思います。今回は同様にリーダー作が一枚あるだけでサイドマンとしては起用されず生涯一回だけの録音で終わったジャズマンを取上げて見ました。

 

 

 

CHET BAKER INTRODUCES JOHNNY PACE(RIVERSIDE RLP 12-292)

 

標題から分かるように全編でヴォーカルのJOHNNY PACEにCHET BAKER QUINTETの伴奏が付きます。QUINTETはCHETの他はHERBIE MANN(フルート)、JOE BERLE(ピアノ)、VINNIE BURKE(ベース)、PHILLY JOE JONES (ドラムス)という布陣で、CHETはトランペットに専念していて残念ながらヴォーカルは披露していません。CHET BAKER INTRODUCES・・とあるようにRIVERSIDEは”第2のCHET BAKER“として売り出したかったのでしょうが、声質がCHETのような特殊性はなく極々普通で魅力に欠けました。実は、このレコード、オリジナル盤の蒐集を本格的に始めた時期(35年前)にCHET BAKERがらみで購入、当時もオリジナル盤としては安めで4000円でした。前述の如く期待外れのため暫くして処分、一年程前に買戻しましたが価格は35年前と殆ど変わりませんでした。この間に何十倍にも高騰したレコードがある一方、このような不人気盤は・・・。CHETの伴奏が良いだけにもう少し人気が出ても・・・と思います。

 

 

 

OUTA SIGHT / EARL ANDERZA (PACIFIC JAZZ PJ-65)

 

如何にも融通が利かなそうな直情的なアルトサックスの音色、しゃくり上げるような奏法は技術的には素人でも上手くないなと感じます。「YOU ’D BE SO NICE TO COME TO」ではストレートなイントロのテーマが期待を持たせますが、アドリブに入った途端「一体どうなるの?」と思わせるほど変なフレーズを連発、でもリズム隊が主役の欠点を補っていて、中でもピアノのJACK WILSON八面六臂の活躍、立派に鑑賞に堪えうるアルバムに軌道修正しています。はっきり言ってWILSON目当てに入手すべきアルバムでしょう。冒頭に記したようにANDERZAは周りを見ず、一人で走り出すタイプ、サイドマンとしての仕事が来なかったのも当然と言えば当然でした。

 

 

 

 

THE RIGHT SIDE OF / LEFTY EDWARDS (WORKSHOP JAZZ 212)

 

ソウル・ミュージックで有名なMOTOWNの子会社、WORKSHOP JAZZレーベルのレア盤。正式名はCHARLES “LEFTEY” EDWARDS、上掲2作や冒頭に記したEDDIE BACCUSはCHET BAKER、JACK WILSON、ROLAND KIRKらの一流ジャズマンが共演していましたが、これは共演者も無名に近く、強いて挙げるならピアノのJOHNNY GRIFFITHがテナーのJOHNNY GRIFFINと名前が酷似していてコレクターの記憶に残っている程度だと思います。

 

今回取上げた中では一押し、見つけたら買っておいても損はありません。全体的にゆったりとしたミディアム調の曲が多く楽器も良く歌っていて、どうして録音が一度だけなのか疑問ですが、発売された時期がERIC DOLPHYの『OUT TO LUNCH』とほぼ同じ。ジャズの主流は混沌とした尖ったものに変貌し始めた時期、そんな時代にLEFTEY EDWARDSのようなジャズマンに需要がなかったのは止むを得なかったかもしれません。