ピアニストのリーダー作を作る際には、最初がベースとドラムを従えたシンプルなトリオ構成だったら、2作目はサックスやギターを加える等、趣向を変え、ピアノトリオを続ける場合でもドラマーやベーシストを替えるのが普通です。ところがRED GARLANDは初リーダー作から3作目までリズム隊をPAUL CHAMBERSART TAYLORに固定します。それだけ、このメンバーは息もピッタリだったのでしょう。

 

 

A GARLAND OF RED(PRESTIGE LP 7064)

 

MILES DAVIS QUINTETのレギュラー・ピアニストの座を射止めたことによりリーダー作の仕事が舞い込んできたGARLAND、その高揚感、ウキウキ感が冒頭の「A FOGGY DAY」によく出ています。全体的にコロコロと転がる愛らしいGARLANDのピアノ、主役をしっかりフォローするCHAMBERSとTAYLORにも焦点が当たっていて、これ一枚でGARLANDトリオの魅力の全貌を把握できます。全8曲、1956年8月17日のセッションのみによって構成されています。

 

 

RED GARLAND’S PIANO (PRESTIGE LP 7086)

 

リーダー作も2作目で緊張感が和らいだためか、はたまた意表をついて冒頭にスロー・ブルースの「PLEASE SEND ME SOMEONE TO LOVE」を配置した効果か、全体に落ち着いた雰囲気が漂っています。このアルバムは2つのセッションから構成されていますが、同一メンバー(GARLAND、CHAMBERS、TAYLOR)、同一場所(ハッケンサックのRVGスタジオ)、同一録音技師(RVG)でも日によって随分と印象が違うと感じました。マイクのセッティングやマスタリングが関係しているのでしょう。一部の曲でCHAMBERSのベースの音のキレの悪さが気になります。でも愛らしいミディアム~スローな曲が多くGARLANDの作品の中では1、2を争う愛聴盤。

 

 

GROOVY (PRESTIGE LP 7113)

 

ジャケットを含め”モダンジャズ”を象徴する一枚。RED GARLANDの代表作としてピアノ100選には必ず入ってきますが、同時にRVGのピアノ録音の問題点を指摘されるアルバムでもあります。その元凶は冒頭の「C JAM BLUES」のピアノの音にあるようで、”マイクをピアノに近づけすぎる(オン・マイク)”と一部の「音マニア」の方には不評ですが、個人的にはあまり繊細なイメージがないGARLANDにはCOLUMBIA系のようなクリアな音は似合わず、特にグイグイと押し込んでいく「C JAM BLUES」には太く鈍重とも思えるRVG録音の音が最適で、十分魅力的と思っています。

 

 

デビュー作から同一メンバーで3枚続けただけでも十分驚きなのに、同時期に録音されるも、お蔵入りし1970年になって発売された『RED GARLAND REVISITED!』『THE P.C.BLUES』も存在します。さらに驚くことに、金管楽器を加えベースを替えたセッションを間に挟み、再び、このメンバーで『IT’S A BLUE WORLD』(当初お蔵入り・1970年発売)『CAN’T SEE FOR LOOKIN’』『THE RED GARLAND TRIO』『ALL KINDS OF WEATHER』を録音しています。

 

 

「RED GARLAND REVISITED」「IT'S A BLUE WORLD」「CAN'T SEE FOR LOOKIN'」はネットより画像拝借

 

同一メンバーで、これだけの枚数を残したピアノトリオは、他にはVERVEの「OSCAR PETERSON-RAY BROWN-ED THIGPEN」、近年では「KEITH JARRETT-GARY PEACOCK-JACK DEJOHNETTE」くらいでしょうか。中でも初リーダー作からメンバーが変わらないのはRED GARLANDだけで、しかもどれも水準以上、まさに不朽のピアノトリオでした。