WADE LEGGEは29歳で夭折したため僅かな録音しか残していませんが、BUD POWELL直系の白人ピアニストの中では、AL HAIGほどパーカッシブではなく、またCLAUDE WILLIAMSONより軽快かつ洗練された演奏でファンを魅了しました。

 

 

 

WADE LEGGE TRIO(BLUE NOTE BLP 5031)

10インチ盤です。

LEGGIE唯一のリーダー作、DIZZY GILLESPIE楽団在籍中に訪れたフランスでVOGUEへ録音。幸運なことに当時VOGUEはBLUE NOTEとライセンス契約があったため米国でも発売されました。「PERDIDO」や「DANCE OF THE INFIDELS」のようなアップ・テンポの曲でのテクニックはPOWELLに遠く及ばないもののミディアム~スローな曲では十分比肩する技量を持ち合わせていて、なによりPOWELLより上品で可憐なところがWADE LEGGEのピアノの特徴です。なのでバックのドラマーはブラシが最適です。「A SWEDISH FOLK SONG」は「DEAR OLD STOCKHOLM」と同曲、他にも「AIN‘T YOU GLAD YOU’RE YOU」や「WHY DON’T YOU BELIVE ME」等の逸品が並んでいます。ジャケットは仏VOGUE盤よりBLUE NOTE盤の方が、ずっと素敵です。

仏VOGUE盤のジャケット

 

 

ここからはLEGGEがサイドマンとして参加しているアルバムです。他にも部分的に参加しているアルバムは数枚ありますが、アルバムを通しで参加しているのは以下の4枚が全てです。

 

SONNY ROLLINS PLAYS FOR BIRD(PRESTIGE LP 7095)

 

何と言ってもA面のPARKER愛奏曲のメドレーが素晴らしくROLLINSやDORHAMに負けじとWADE LEGGも「OLD FOLKS」と「MY LITTLE SUEDE SHOES」でMAX ROACHの素晴らしいブラシをバックに軽やかにスウィングしています。LEGGEの実力が十分に発揮されている数少ない作品です。

 

 

 

GIGI GRYCE AND THE JAZZ LAB QUINTET(RIVERSIDE RLP 12-229)

右下がWADE LEGGEです。

全部で6枚あるGIGI GRYCEとDONALD BYRDのJAZZ LAB QUINTETの2枚目のアルバム。GRYCEとBYRD以外は毎回メンバーが異なっていてWADE LAGGEも本作にのみ参加。JAZZ LABのLABはLABORATORY(実験室)の略で、そんな名前を付けるから実験色の濃い内容だと思われ敬遠されたのは明白ですが、実際には実験色は希薄でB面で感じられるアレンジ臭も西海岸に比べれば控えめです。WADE LEGGEは得意とする“歌もの”が無く上掲の『SONNY ROLLINS PLAYS FOR BIRD』のような活躍は出来ていませんが「GERALDINE」なるバラードを提供しています。リーダー作にもオリジナル曲が無かっただけに貴重です。

 

 

 

 

ALTO MADNESS / JACKIE McLEAN & JOHN JENKINS (PRESTIGE 7114)

 

タイトルから、このアルバムの聴きどころは両アルト奏者のバトルだと思いますが、両者の音色が酷似していて、バトルの面白味をあまり感じ取ることはできません。2アルト+リズムセクションという構成ですが、2本のアルトとドラムス(ART TAYLOR)が強烈なため、LEGGEのピアノも何時になく力強さを目立ちます。LEGGEが活躍するのはバトルの無いB面で、中でもバラードの「EASY LIVING」はLEGGEの持ち味である愛らしさ、可憐さが発揮されたベスト・トラックです。今回取上げた5枚のレコードは全てオリジナル盤ですが、圧倒的にPRESTIGE盤2枚の音の良さが抜きんでていて、RVGの録音・マスタリングの凄さを改めて感じました。

 

 

 

THE CROWN / CHARLES MINGUS (ATLANTIC 1260)

 

MINGUSの中でもクセの強い作品。しかもメンバーはMINGUS、CURTIS PORTER、JIMMY KNEPPERにDANNIE RICHMONDと曲者ばかり。こんな強面集団の中でWADE LEGGEは、きっとビビリながらピアノを弾いていたのでは・・・。それなりの存在感が確認されるトラックもありますが、強烈な面々の影に隠れて目立たないように大人しくしていて、早くセッションが終わってくれないかと、ずっと願っていたのではないかと想像されます。ただ怒りに満ちたMINGUSの音楽に愛らしい“歌もの”が得意のLEGGEのピアノは相性が悪いと思われがちですが、何度も聴くうちに意外にしっくりと合っていると感じるから不思議です。ちなみにMINGUSとの共演は、この時のセッション(一部は『TONIGHT AT NOON』に分散収録)のみです。

 

 

WADE LEGGEの真価が発揮されているのはリーダー作と『SONNY ROLLINS PLAYS FOR BIRD』ですが、他のセッションもミス・マッチではなく幅広い音楽に適合できる能力を兼ね備えていました。これからという時に夭折したのがなんとも残念です。