BILL EVANSの『WALTZ FOR DEBBY』が老若男女、ジャズ初心者、ベテランを問わず愛されるのは、中身の音楽が最高なのに加え、魅惑的なジャケットが視覚に訴えかける効果が大きいからと思います。以前に拙ブログでは「ジャケットで損をしている名盤」と題し、中身は素晴らしいけれど、冴えないジャケのせいでイマイチ人気のない盤を紹介しました。

 

 

 

 

今回は、その逆でジャケットは額に入れて飾りたいくらい素敵なのに、肝心の音楽が全く「パッ」としないレコードを紹介します。趣旨から内容は辛口、否定的になり、愛聴盤にされている方には失礼極まりないかもしれませんが、あくまでも個人的な見解ということでご容赦ください。

 

 

LUSH LIFE / JOE MOONY (ATLANTIC 1255)

 

ジャズのオリジナル盤を蒐集し始めた頃、どこかの雑誌で見た妖艶なジャケットが妙に印象に残っていて、お目当ての盤が思いのほか安く入手できたこともあり、内容も分からないのに、ついでに「ジャケ買い」しました。ところが可憐な女性ヴォーカルと思っていたら・・・ナント男性ヴォーカル、しかも当時は大嫌いだったオルガンがバックに・・・もう大落胆盤でした。さっさと処分しましたが、今回記事を書くにあたりYOU TUBEで再聴、少なくとも当時の嫌悪感は全くなく、今なら処分しないと思いますが・・・と言って、さすがに買い戻す気にはなりません。

 

 

 

THE BLUES / JOHNNY HODGES (NORGRAN MGN-1061)

 

NORMAN GRANTZのVERVE系レーベルには、ジャケットのイメージと中身の音楽が一致しないものが散見されます。これもジャンプ・ブルースのような威勢の良い曲が多く、ジャケットのアンニュイな雰囲気から連想する”哀愁に富んだBLUES”とは、かけ離れたものになっています。曲は1952年から1954年の4つのセッションからの寄せ集め。だったら、もっとタイトルとジャケットに相応しい曲をチョイスできたはずです。

 

 

 

PLAYBOYS / CHET BAKER & ART PEPPER (PACIFIC JAZZ 1234)

 

主役はART PEPPERとCHET BAKER、人気の2大アーティストの共演に魅惑のジャケット。エサ箱の中にこのレコードを見つけたら確実に手に取るでしょう。しかもオリジナル盤はPACIFIC JAZZの中で最も高額、内容も良いに違いないと思っていました。

 

ところが、地味なJIMMY HEATH作の5曲とPEPPERの2曲の構成は、はっきり言って面白くなく・・・もっともRIVERSIDEのHEATH本人のアルバムでも聴ける、これらの曲が特に悪い訳ではありません。でもHEATHですらアルバムの中にメロディアスなスタンダードを散りばめていたのに・・・。加えて西海岸特有のアレンジ臭が鼻に付きます。国内盤がピンと来なかったため、音の良いオリジナル盤ならと思って入手したものの・・・こんなはずではないと何度も繰り返し聴きましたが、見事に期待外れ。

 

 

 

URBANITY / HANK JONES (CLEF MGC-707)

 

DAVID STONE MARTINのイラストで人気の作品。しかし中身は・・・4曲がピアノ、ギター、ベースによるトリオ演奏で、残りがHANK JONESのピアノソロ。ピアノソロのB面は退屈で最後まで聴いていられないし、トリオ演奏もJOHNNY SMITHやRAY BROWNの活躍の場はほとんど無く、そもそも繊細なJOHNNY SMITHはHANK JONESの重く流麗とは言い難いピアノとはミス・マッチです。せめてギターをHERB ELLISあたりに替えてブルースを弾かせていれば・・・。

 

 

 

LOVE & THE WEATHER / HERBIE MANN (BETHLEHEM BCP 63)

 

これぞ真打ち?ジャケ買い時代の”グリーン基調のジャケットは内容も良い”という個人的なジンクスを見事に打ち壊してくれた盤。寺島靖国氏の著書で取上げられていたBURT GOLDBLATTによるロマンチックなジャケット、入手した時は嬉しくて暫くの間、見入ってしまいました。ところが中身は・・・派手なストリングスの中からHERBIE MANNのフルートが浮かび上がりムード・ミュージックそのもの。もう勘弁してほしいと片面すら続けて聴くことが出来ませんでした。

 

 

これらは「ジャケ買い」が行われていた時代の産物、YOU TUBE等で試聴が簡単になった現在では、ある程度演奏内容を確認してから購入を決めるでしょうから、こんなことは大幅に減っているはずです。

 

*なお上掲盤は全てオリジナル盤で所有していましたが、処分洩れのJOHHNY HODGES以外はとっくに処分済みで、今回の記事に当たり画像はネットより拝借しました。