みんな大好きBILL EVANS。私も亡くなった後に発売されたレコードを除けば、ほとんど聴いていますが、50年近くなるジャズ歴のなかで最も聴いた回数が多いベスト3は・・・。

 

1.『WALTZ FOR DEBBY』

2.『EXPLORATIONS』

3.『PORTRAIT IN JAZZ』

 

とRIVERSIDEのSCOTT LAFARO在籍中の作品になりますが、実は最近はあまり聴いていなくて・・・・ここ数年、割とコンスタントに聴いているのがコレ。

 

 

NEW JAZZ CONCEPTIONS(RIVERSIDE 12-223)

INCなしのセカンドプレス。オリジナルは昔から超高額、縁がありませんでした。盤はともかく変更されたジャケが・・。

 

BILL EVANSが大きな影響を受けたのはMILES DAVISとの共演1958年5月)でした。”卵の殻の上を歩く“と表現された繊細なMILESのミュート・プレイに感化されたEVANSはピアノでMILESのミュートの演奏を模倣し、それが後に代名詞となる耽美的な奏法に繋がりました。もちろんMILES以前にも繊細な演奏はありますが、それらは”乾いたリリシズム“でMILES以後の陶酔するような美しさ・・・究極が「BLUE IN GREEN」・・・とは大きな違いがあります。初々しい、青臭い、硬質な・・・このアルバムの評価は様々ですが、冒頭のCOLE PORTERの名曲「I LOVE YOU」は70年近く経った今聴いても斬新で、当時のEVANSの演奏がタイトル通り”NEW JAZZ CONCEPTIONS“だったことが分かります。

オリジナルジャケット

というわけで、これは1956年9月の録音されたデビュー作であると共にMILESの影響下にない唯一のアルバムです。

 

それと例の4部作はベースのSCOTT LAFAROばかり語られますが、ドラムスのPAUL MOTIANの貢献も忘れてはなりません。SCOTT LAFAROを失ってBILL EVANSは徐々に最盛期の輝きを失っていったと言われていますが、私はその後のPAUL MOTIANとの決別こそ最大の岐路だったと思っています。ベストマッチのドラマー、PAUL MOTIANが見事なバックアップを見せているのも、このアルバムを推した大きな要因です。

 

 

ついでにMILESと共演する前の硬質なEVANSが聴けるアルバムを何枚か紹介します。

 

 

EAST COASTING BY CHARLIE MINGUS (BETHLEHEM BCP 6019)

 

数あるMINGUSのアルバムの中でも最も鬱屈した暗い作品。「WEST COAST GHOST」なる曲が含まれていますが、アルバム全体を通して幽霊でも出そうな雰囲気が漂っています。BILL EVANSは低音を効果的に使ってLENNIE TRISTANOやART TATUMの影響が濃いソロを展開、後年の耽美的なスタイルは、その影すら感じるとることはできません。1957年8月の録音。

 

 

ROOTS (PRESTIGE 8202)

 

レコードの向きはROOTSのタイトルが左側面に来た方が自然ですが、レコードの取り出し口や裏ジャケの向きを勘案するとこれが正しいようです。EVANSは片面全部を使ったタイトル曲にのみ参加。両面に参加しているのはIDREES SULIEMANとDOUG WATKINSのみで、一連のPRESTIGE ALL-STARSによるリーダーレス作品と見るのが妥当です。テーマの後に各人の長いソロが続きます・・・PEPPER ADAMS(4分40秒)・・IDREES SULIEMAN(8分50秒)・・・FRANK REHAK(5分30秒)・・・BILL EVANS(3分5秒)・・・DOUG WATKINS(3 分40秒)。BILL EVANSのソロは、やや、たどたどしくMONKやDAVE BRUBECKの影響も垣間見えます。このソロも後年の繊細なタッチとは、かけ離れています。1957年10月の録音。

 

 

GUYS AND DOLLS LIKE VIBES / THE EDDIE COSTA QUARTET(CORAL 57230)

 

『HOUSE OF BLUE LIGHTS』やTAL FARLOWらとのドラムレス・トリオのピアノ奏者として有名なEDDIE COSTAですが、ここではヴァイブラホンに専念し、ピアノはBILL EVANSに任せています。ミュージカル『GUYS & DOLLS』の挿入歌を取上げていて「IF I WERE A BELL」や「I‘VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE」はスタンダード化しているのは、ご存知の通り。ヴァイブラホン+ピアノトリオという構成のため、EVANSのピアノもたっぷりと聴け『NEW JAZZ CONCEPTIONS』の硬質で乾いたリリシズムが「I’VE NEVER BEEN LOVE」や「I’LL KNOW」で感じ取ることができます。重要なのはドラムスがPAUL MOTIANであること。『NEW JAZZ CONCEPTIONS』で抜群の相性の良さを見せたドラマーは、ここでも活躍しています。1958年1月の録音。

 

その後のEVANSの変貌ぶりを見るにつけ、如何にMILES DAVISとの共演が大きかったかが伺い知れます。繊細で耽美的なBILL EVANSに心酔している方は、上掲のサイドマンで参加しているアルバム(特に『EAST COASTING』と『ROOTS』)には手を出さないこと、ガッカリします。