以前に取り上げたクリスマス・アルバムやサウンドトラックと同様に超一流アーティストたちはビッグバンドを従えて演奏したくなるようです。

 

CHARLIE PARKER BIG BAND (CLEF MG C-609)

 

同趣の『WITH STRINGS』はPARKERのソロが浮かび上がってきて素敵でしたが、これは脇役のブラス陣と主役のPARKERがほぼ同音量で聴こえるため、あの轟音で鳴るPARKERですら目立ちません。もう少しビッグバンドは控えめにすべきで、明らかにプロデュースの失敗と言わざるを得ません。折角のPARKERの珠玉のソロが、ぼやけてしまっています。

 

 

MILES AHEAD / MILES DAVIS +19 (COLUMBIA CL 1641)

 

MILES DAVISがPRESTIGEからCOLUMBIAに移籍した大きな理由の一つにGIL EVANSの指揮の元、ビッグバンドを従えたアルバムを作りたかったことがあります。資金的にPRESTIGEでは望むべくもなく、一刻も早くCOLUMBIAに移籍するためPRESTIGEとの残りの契約(4枚分)を一気にレコーディング(マラソン・セッション)したことは有名な話。MILESはトランペットではなく柔らかな音色のフリューゲルホーンを使用したことが功を奏し、鋭い切れ味のオーケストラの対比が見事です。

聴きやすさという点では同趣の『PORGY AND BESS』や『SKETCHES OF SPAIN』の方が勝っていますが、MILESが満を持して作り上げたという意味で本作を推します。

 

 

AFRICA BRASS / THE JOHN COLTRANE QUARTET (IMPULSE A-6)

 

COLTRANE QUARTET となっていますが全3曲とも13名ないしは10名のブラスセクションをバックにCOLTRANEは演奏しており、何故「QUARTET」の名を冠したのか疑問です。ただ主役はあくまでCOLTRANE QUARTETで、ブラスセクションは効果音を演出しているにすぎません。特に「GREENSLEEVES」は、ほぼQUARTETセッションと言って良いほどです。録音・マスタリングはRVGが担当も、全体的になんとなくぼやけた音、RVGはビッグバンドの録音が苦手?なおCOLTRANEの本格的なビッグバンドに『ASCENSION』がありますが、あまりに過激すぎて・・・。

 

 

 

SONNY ROLLINS AND THE BIG BRASS (METRO JAZZ E1002)

 

ブラスセクションが付くのはA面だけでB面はピアノレス・トリオの演奏です。13名のブラスセクションの指揮・アレンジはERNIE WILKINS。全8曲がROLLINSとしては初出なため新鮮味があります。またブラスセクションもROLLINSのソロを邪魔をしておらず、ブラスセクションとの共演を片面で止めた判断も正解。ややERNIE WILKINSのアレンジが古臭いのが難点ですが、A面は隠れた傑作といったところでしょうか。B面はROLLINSに凄みが感じられるものの、ベースとドラムがBLUENOTEやCONTEMPORARYのピアノレス・トリオと比べると明らかに格落ちなのが残念です。全体的に音はとても良好、ROLLINSの魅力を引き出しています。

 

 

 

MONK BIG BAND AND QUARTET IN CONCERT (COLUMBIA CL 2164)

 

ビッグバンド5曲、ピアノソロ1曲、カルテット1曲の構成ですが、ビッグバンドも冒頭や最後のテーマ部分等一部だけで、他はカルテットの演奏でビッグバンド嫌いの方にも十分満足いただける内容だと思います。一部を除けば定番のMONKナンバーで、CHARLIE ROUSEを含むカルテットのライブ演奏が数多く存在するため、食傷気味に思う方も多いかもしれませんが、ビッグバンドがバックに付くと不思議と新鮮に感じます。両面で一時間超収録のお得盤。

 

 

 

THE BODY &THE SOUL / FREDDIE HUBBARD (IMPULSE A-38)

 

SEPTETが3曲、残りは20人超の大編成バンド。控えめなストリングスやビッグバンドの中から浮かび上がる主役のトランペットは煌びやかな方がよく、そういう意味でFREDDIE HUBBARDは適任かもしれません。今回取上げた6枚のアルバムに中では唯一のステレオ盤ですが、ビッグバンドを従えたレコードはステレオの方が主役の存在がはっきりする点でモノラル盤より優れていると思います。IMPULSEのFREDDIE HUBBRDはBLUE NOTEに挟まれて、これと『THE ARTISTRY OF FREDDIE HUBBARD』の2作のみですが、時代の先端を行くBLUE NOTE作品に比べ極めて保守的な内容で新主流派の面影は微塵も感じることができません。このあたりはレーベル側の戦略なのでしょう。ビッグバンドはERIC DOLPHY、WAYNE SHORTER、CURTIS FULLERらの錚々たるメンバー、録音はFRANK ABBEYとRVG、ビッグバンドの録音に難があるRVGはSEPTETの3曲だけ担当していると思います。根拠はSEPTETの3曲はピアノ、ベースが中央、ドラムスが右、トランペット左の”RVG定番のステレオ配置”。ビッグバンドはピアノとベースが左、主役のトランペットは中央、ドラムス右と楽器配置が異なるからです。