MILES DAVIS、SONNY ROLLINS、ART BLAKEY & JAZZ MESSENGERS、MODERN JAZZ QUARTET等、モダンジャズの世界で功成り名遂げたアーティストは、何故“サウンドトラック”を作りたがるのでしょうか?一つのステータスなのかもしれません。HERBIE HANCOCKもその一人です。

 

 

BLOW UP / HERBIE HANCOCK (MGM 665 072)

英米盤とは異なる仏盤のジャケット

 

“ヌーベルヴァーグ”と呼ばれる1960年前後のフランス映画の中には『死刑台のエレベーター』(MILES DAVIS)、『大運河』(MJQ)、『危険な関係』(J.M.)と一流ジャズメンがサントラを担当しているものが数多く存在しますが、それは当時のモダンジャズが最もクールでヒップな音楽だったから。その後ロックの台頭で多くのモダンジャズマンは時代遅れの感が強くなりますが、60年代中頃に登場したHERBIE HANCOCKは時代の先端を行く新しい感覚を持ったジャズマンでした。そんなHANCOCKが手掛けたサントラがMICHELANGELO ANTONIONI監督による『BLOW UP』(邦題 欲望)でした。この映画、YOU TUBEで見ることができますが、シュールで難解なサスペンス映画で理解の範疇を超えています。サウンドトラックも当初は不要とされていたようで、”ヌーベルヴァーグ”のような効果を発揮していません。

 

さて、このサントラ、タイトル曲とYARDBIRDSの「STROLL ON」の印象が強くROCKに軸足を置いているようなイメージや評論が先行していますが、やはり中心となっているのは新主流派のジャズ、HANCOCKの他にFREDDIE HUBBARD、IAN CARR、PHIL WOODS、JOE HENDERSON、DON RENDELL、JIM HALL、RON CARTER、JACK DE JOHNETTEらの錚々たるジャズメンが参加しています。YARDBIRDSの「STROLL ON」等、過激な曲が何曲かある反面、スローテンポで寛げる曲も多くBGMとしても使えそうです。

 

米国盤ジャケット

それでも、このサウンドトラックの最大のセールス・ポイントは強烈な印象を残すフランス盤のジャケットにあります。広く知られているオリジナルの米盤のジャケットでは残念ながら食指が動きません。

 

 

 

OBLIQUE / BOBBY HUCHERSON (BLUE NOTE ST-31963)

 

HERBIE HANCOCK自身も参加しているBOBBY HUCHARSONのBLUE NOTE未発表作で「THEME FROM BLOW UP」を取上げています。OST(オリジナル・サウンドトラック)では冒頭と最後を合わせても2分強しかないメインテーマが、こちらでは8分と長尺で演奏されています。単純なリフで、もっと劇中で繰り返し使われれば効果があがったと思います。他の曲も雰囲気は『BLOW UP』に含まれていても違和感がない繊細で神秘的な曲ばかり。元々はBLUE NOTEの未発表シリーズ、日本盤が世界初登場ですが、素敵なジャケットを装いTONE-POETシリーズで再発されました。