一年で一番、感傷的になる季節、普段は滅多に聴くことのないソロピアノを聴きたくなります。

 

ちょうどジャズに目覚めた頃は世を挙げてのピアノブームで、スイングジャーナル社から別冊「ジャズピアノ百科」も発売され、結構看過されました。ソロピアノもかつてないほどのブームでKEITH JARRETT、CHICK COREA、DOLLAR BRANDら新しいジャズマンたちが中心になって盛り上げていました。

 

彼らのレコードも、もちろん所有していますが、ターンテーブルに載る頻度が高いのは、もうちょっと以前のもの。余程実力があり、また自信も無ければ、あの時代(バップ~ハードバップ期)に全編ソロピアノのレコードを残すのは不可能でした。

 

ただOSCAR PETERSONやLENNIE TRISTANO、ART TATUMらのソロ・アルバムはテクニックが優先し今回の主旨には合わず、RAY BRYANTの『ALONE WITH THE BLUES』やBARRY HARRISの『LISTEN TO BARRY HARRIS』等は対象になりますが、飽きずに両面を聴き通せるのは、モダンジャズ・ジャイアンツのBILL EVANSとTHELONIOUS MONKに落ち着きます。

 

 

 

ALONE / BILL EVANS (VERVE V6-8792)

 

物憂い「HERE’S THAT RAINY DAY」から始まるA面が、曲が進むにつれて明るく希望に満ちた雰囲気になるのは、やや予想外の展開で戸惑います。ハイライトはB面全部を使った「NEVER LET ME GO」、KEITH JARRETTの登場以降、ピアノソロ一曲が片面全部を占めることは珍しくなくなりましたが、この時代には異例中の異例でした。A面冒頭の「HERE’S THAT RAINY DAY」と「NEVER LET ME GO」には、このアルバムの本質である”寂寥感”がたっぷりと感じられます。『ALONE』は単にソロピアノというだけでなくアルバムの内容を暗示している秀逸なタイトルだと思います。録音はRAY HALL=VAL VALENTINコンビ、EVANSの持ち味を上手く引き出しています。

 

 

 

SOLO MONK / THELONIOUS MONK (COLUMBIA CL 2349)

 

「秋の日は釣瓶落とし」の時節にピッタリなのが『SOLO MONK』。過ぎ去った夏の日の思い出を辿るようなMONKのタッチには憂いが感じられ、ささやかな感慨と後悔が交差する情景がMONKのピアノを通して蘇ります。それらはB面の「EVERYTHING HAPPENS TO ME」や「ASK ME NOW」「THESE FOOLISH THINGS」に顕著でリスナーは心を奪われます。4枚あるMONKのソロアルバムは、それぞれに特長があり優劣付けがたい内容ですが、中では、これが最も哀愁漂う作品です。