GRANT GREENやTAL FARLOWらの太い音のジャズ・ギタリストが好きです。CHARLIE CHRISTIANとともに彼らに影響を与えたのは、極太ギターの元祖と言える四弦のテナー・ギターを操るTINY GRIMESです。

 

スウィング時代よりサイドマンとして知名度はあったものの、リーダー作がなかったTINY GRIMESにスポット・ライトを当てたのが、モダンジャズのPRESTIGEレーベルでした。

 

TINY GRIMES WITH COLEMAN HAWKINS(PRESTIGE 7138)

 

アーリー・ジャズのギタリストとしてART TATUMやCHARKIE PARKER、IKE QUEBECらとの数多くの共演があるTINY GRIMESも、これ以前には一枚のリーダー作が無いのは、ジャズに於けるギタリストの立ち位置を端的に表しています。スウィング時代は、せいぜい3~4分の曲において、サックス奏者やピアニストの後に、ごく短いソロを取るだけでしたが、LP、しかもリーダー作となれば、思う存分にテクニックを披露することが可能になりました。冒頭の「MARCHIN’ ALONG」のようにR&Bの影響が強いのがGRIMESの特徴ですが、むしろ「A SMOOTH ONE」や「APRIL IN PARIS」のようなジャズ曲や「BLUES WAIL」のようなブルース曲をシングル・トーンで奏でる極太ギターに惹かれます。PRESTIGE系のCOLEMAN HAWKINSというと傍系のMOODSVILLEのジェントルな演奏が思い浮かびますが、残念ながら、ここでのHAWKINSはアクの強いR&B系のブローを中心とする奏法に終始して、むしろブルージーなRAY BRYANTのピアノ方が重要な役割を担っています。ベスト・トラックは「APRIL IN PARIS」、お約束通り「POP GOES THE WEASEL」のメロディも挿入されていて楽しめます。

 

 

 

 

CALLIN’ THE BLUES / TINY GRIMES WITH J.C.HIGGINBOTHAM (PRESTIGE 7144)

 

ここでもR&B色の強い「CALLIN‘ THE BLUES」から始まります。但し前作のアクの強いCOLEMAN HAWKINSの替りにJ.C.HIGGINBOTHAMのチープなトロンボーンが入って随分とまろやかで聴きやすくなっています。前作の二番煎じ的な感は否めないもののRAY BRYANTのピアノが更に良い味を出し、EDDIE “LOCKJAW” DAVISのテナーも加わることによって、前作以上に余裕が感じられるセッションに仕上がっています。

 

 

 

 

TINY GRIMES IN SWINGVILLE(SWINGVILLE 2002)

 

SWINGVILLEはPRESTIGEの傍系レーベルで、その名の通りSWING系アーティストに焦点を当て、50年代後半のSWING JAZZリバイバルに尽力しました。姉妹レーベルのMOODSVILLEが大好きだったのでSWINGVILLEもPRESTIGEの再発や終盤の方を除いて、ほとんど蒐集しましたが、7年前にAL SEARSら一部を残して処分しました。

 

本作はSWINGVILLEで発売されているにもかかわらず、上掲2作のPRESTIGE盤より、ずっとモダンで聴きやすい内容になっています。なぜならモダンなマルチ・リード奏者のJEROME RICHARDSONを起用したことに加え、選曲が郷愁を誘うスコットランド民謡の「ANNIE LAURIE」や「AINT’ MISBEHAVIN’」「FRANKIE & JOHNNY」の有名曲を含み、3枚の中では最もR&B色が薄いからです。また高音を多用し、特徴である極太さは、あまり感じられず繊細さが強調されていて、前2作を通じて欠かせない存在になっていたRAY BRYANTは、ここでもBLUES曲( DOWN WITH IT、HOME SICK)で抜群の冴えを見せています。上掲3枚ともRVG録音・マスタリング、太く迫力あるTINY GRIMESのギターの音色を上手く引き出しています。

 

上掲LPよりシングルカット。ANNIE LAURIE / DURN TOOTIN'(PRESTIGE 45-158)親レーベルのPRESTIGEで発売、RVG刻印。

 

このあとUNITED ARTISTに『BIG TIME GUITAR』を吹き込みます。シンプルなカルテット構成で期待が高まりましたが、抜群の相性だったRAY BRYANT(ピアノ)からオルガンに変更、R&B色が更に強まり、ジャズファンからは敬遠される結果に。