プロモーション(販売促進)のためにラジオ放送局に無償で配布されたDISK JOCKEY用レコード、通称DJコピー、その性質から市販のレコードより先にプレスされたものが多く、また「NOT FOR SALE」「NOT FOR RESALE」等と表示され、枚数が限られているため「音」にうるさいファースト・プレス・コレクターからは羨望の的になっています。

 

そんな中でも、ちょっと変わったDJコピーを紹介します。上がレギュラーのオリジナル盤、下がDJ盤です。

 

GETZ / GILBERTO (VERVE V6-8545)


 

GETZ / GILBERTO (VERVE V/DJ-2)


 

内ジャケットに記載された曲目と演奏時間(左)レギュラー盤、(右)DJ盤

 

泣く子も黙るBOSSAの大名盤。一部評論家の厳しい意見に惑わされた時期もありましたが、じっくり聴きこむと話題性ばかりではなく内容も抜群だということが分かってきました。中身については散々取上げられていますので割愛しますが、辛口評論家やJOAO GILBERTOが指摘した欠点が、STAN GETZのテナーが所々でWAILする部分。そもそもGETZの持ち味は繊細でCOOLなテナー、それがBOSSA NOVAには最適と選ばれたのに、JAZZ SAMBAと同じく陽気で賑やかな音楽と混同したGETZは、WAILを繰り返した・・・それが批判の対象となりました。

 

通常のDJコピーはレギュラー盤とレーベル面の表記や、色違い(DJコピーは白色が多く、VERVEは黄色)だけで中身の音楽は同じことが多いのですが、これは“DESIGNED FOR PROGRAMMING”の表記の通り、中身をいじっています。オリジナル音源は4分から5分超の曲が多く、通常3分以下が好ましいラジオ放送用としては、ちょっと長すぎるため「THE GIRL FROM IPANEMA」「TO HURT MY HEART」「DESAFINADO」「CORCOVADO」はPART1,PART2に分割、「SO DANCE SAMBA」「O GRANDE AMOR」は後半がカットされています。カットされた部分は、あの批判の対象となったテナーがWAILする部分です。聴き比べるとGETZがWAILする部分は、アルバムを一枚作るのには曲が足らず、時間調整のために付け足された・・・・そんな印象すら感じます。

 

レギュラー盤はステレオ、DJ盤はモノラル、聴き比べるとステレオでは弱々しいと感じていたJOAO GILBERTOのヴォーカルが強化され、逆にステレオでは左チャンネルから、やや、うるさく聴こえたGETZのテナーが、ヴォーカルに隠れて、好ましくなった印象です。

 

 

 

 

 

JUDY COLLINS SPECIAL RADIO LP / NOT FOR SALE (ELEKTRA JC-1)

 


両面とも収録曲は同じ、SIDE1がモノラル、SIDE2がステレオ

JUDY COLLINSと言えば「BOTH SIDES NOW」(邦題:青春の光と影)。オリジナルはJONI MITCHELLですが、ヒットしたのはJUDY COLLINSバージョン、素敵な歌詞と爽やかなメロディで多くのリスナーの心を掴みました。カバー曲が多いJUDY COLLINSのレコード(輸入盤の再発)は過去に何枚か所有していましたが、個々に良い曲はあるものの、アルバム一枚通して聴くと途中で飽きてしまうケースが多く、結局全部処分。でも「BOTH SIDES NOW」と「IN MY LIFE」は忘れ難く、買い戻そうと思っていた時に遭遇したのがコレ。シングル盤で同じ曲を片面ステレオ、他面モノラルで収録しているDJコピーは多数所有していますが、LPで同様なケースには初めて出会いました。

 

 

ステレオとモノラル、両面聴いての感想ですが、JUDY COLLINSは高校生の頃にAMラジオから流れてきた印象が強く、モノラル面の方により愛着を感じます。