昨年の暮れ、DAVID CROSBYが亡くなりました。そして、つい最近JAZZ界の重鎮、WAYNE SHORTERも・・・。2件の訃報に接して、メディアの対応について感じたことをレビューとともに書き殴ります。

 

DAVID CROSBYは BYRDS脱退からCS&N結成、WOODSTOCKフェス出演と、ROCKがピークを迎えた時代の重要人物ですが、BYRDSでもCSN&Yでもグループ内の中心人物ではなく、縁の下の力持ち的立場だったと思いますし、CSN&Y解散後50年近く大きな話題もありませんでした。にもかかわらず、その死は民放はもちろん、NHKの夜7時のニュースでも伝えられました。一方、長年ジャズ界の最重要人物であったWAYNE SHORTERの訃報は、私が見ていないだけかもしれませんが、テレビでは取上げられなかったように思います。実際、私が知ったのは、COTTON CLUBさんのブログからでした。この差は何なのでしょう?



NIGHT DREAMER / WAYNE SHORTER (BLUE NOTE ST-84173)

 

 以前にも触れましたが、JAZZ MESSENGERSが単なるハード・バップのミーハー・バンドで終わらず、業界を代表する一流バンドとして君臨できたのは、偏に音楽監督として携わってきたWAYNE SHORTERのおかげだと思っています。JAZZ MESSENGERSが他のメンバーの楽曲やスタンダードで、ポップになり過ぎるのを防ぎ、バランスを取っていたのがSHORTERの一聴、難解な楽曲でした。ここでは全曲がSHORTER作、BLUE NOTEの3作目(SPEAK NO EVIL)までは全てELVIN JONESがドラマーを務めていて、腰の据わったリズム・セクションに支えられて、SHORTER-WORLDとしか表現できない独自の神秘的な世界を創り上げています。
 

 

JUJU / WAYNE SHORTER (BLUE NOTE ST-84182)

 

SHORTERのレコードを集中的に蒐集し始めたのは、かなり後になってからで、いざオリジナル盤を蒐集しよう(国内盤からの買換え)とした時には、モノラル盤は市場から消えていて、ステレオ盤も時々見かける程度でした。その後、ネットが普及して目にする機会は増えても、モノラルの状態の良いものは、恐ろしく高価になっていました。RVGのステレオはベースが中央に鎮座し、さほど抵抗はありませんが、左チャンネルから聴こえてくるSHORTERのテナーをモノラルの太い音で、中央から聴きたいというのが本音です。ここでのCOLTRANEの黄金カルテットを意識したメンバー構成とサウンドは、当時のCOLTRANEに本気で戦いを挑もうとした気概を感じます。楽曲も「DELUGE」や「YES OR NO」とSHORTERとしては、取っ付きやすいものが多く、SHORTER入門には、ここから入るのがベストでしょう。

 

JAZZ MESSENGERS~MILES DAVIS QUINTET~WEATHER REPORTと常にジャズの第一線に君臨しながらも、内容は必ずしも万人向けではなく、ジャズファンに於いても彼の変遷(JAZZ→FUSION)を一貫して支持する人は、それほど多くは無かったように思います。

 

 

 

一方、DAVID CROSBYは

 

CROSBY、STILLS & NASH (ATLANTIC SD 8228)

 

BYRDS、BUFFARO SPRINGFIELD、POCOからEAGLES、JACKSON BROWNE へと続くウエストコースト・ロックのピークがCROSBY STILLS NASH & YOUNG。1971年には、あのMUSIC LIFE誌の人気投票でLED ZEPPELINに次いで第2位を獲得したのは今となっては伝説です。そのCSN&Yの前身、CS&Nのデビュー・アルバム。3人が創り出すハーモニーは新鮮で、発売直後に出演したWOODSTOCKフェスティバルでブレイク、これまでに全米だけで400万枚ものセールスを記録しています。

 

 

 

IF I COULD ONLY REMEMBER MY NAME / DAVID CROSBY (ATLANTIC SD 7203)

 

 DAVID CROSBYのファースト・ソロアルバムでACID-ROCKというジャンル分けが相応しい幻想的な内容。CSN&Yの中では、最も一般向けではありませんが、玄人筋には人気が高く、実際、聴き込むほどに味が出る傑作だと思います。一聴、難解もCSN&Y人気で50万枚を超えるセールスを記録。

 

 

WAYNE SHORTER関連のアルバムが、どれだけ売れたか資料が無いので分かりませんが、DAVID CROSBYのせいぜい10分の一も行けば良い方かと・・・。SHORTERはジャズ界の大関レベル、一方、CROSBYはROCK界の前頭筆頭か、せいぜい小結レベル。それがメディアの扱いは逆転。これ、すなわちJAZZとROCKの差なのでしょう。