MILES DAVISやJOHN COLTRANEは、ある時期から廻りの雑音に惑わされることなく、自分のやりたい音楽を最後まで貫いたので、夭折でも自分の音楽人生に満足していたと思います。

 

一方、モダン・ジャズギターの第一人者とされるWES MONGOMERY、晩年にCREED TAYLORと組んでジャズでは異例のヒット作を連発、巨万の富を得ました。でも生涯残した20枚以上のリーダー作の中で、本人が満足できたのは、ほんの一握りだったと思います。そのほんの一握りを・・・。

 

FINGERPICKIN’(PACIFIC JAZZ X-301)

この2分58秒のシングル盤こそWES MONTGOMERYの真骨頂、指弾き・オクターブ奏法のWESのテクニックが如何に凄いかを示した唯一無二の録音。『THE MONTGOMERY BROTHERS AND 5 OTHERS』(WORLD PACIFIC PJ-1240)収録時の未発表曲、WESにだけ焦点が当たっているためオミットされた?

 

FINGERPICKIN’(WORLD PACIFIC X651)

上掲のシングルはオムニバス盤『HAVE BLUES WILL TRAVEL』(WORLD PACIFIC JWC-509)に収録され、そこからカットされた形で再発されましたが、オリジナル・シングルの冒頭をカットした2分20秒の短縮バージョン。また『HAVE BLUES WILL TRAVEL』の国内再発盤は、この曲にストリングスをオーバー・ダヴィングした改悪版です。

 

 

 

THE INCREDIBLE JAZZ GUITAR (EIVERSIDE RLP 12-320)


 

思うにWESが望んだとおりのレコーディング(特にスタジオ・レコーディング)は数えるほどしかなく、中では、これはベスト オブ ベストと言える作品。ギター本来の魅力を堪能するには金管楽器が入っていない、ギタートリオか、ピアノを加えたカルテット構成に尽きます。PACIFIC JAZZ時代はMASTER SOUNDSやMONTGOMERY BROTHERSの一メンバー的な位置づけで、ソロ・スペースも少なく、RIVERSIDEに移籍しての初リーダー作も、オルガンが入ったラウンジ・ミュージックのような作品だったことを考えると、ここで、ようやく溜飲を下げることができたと思います。もっとも本作にしても冒頭の「AIREGIN」の印象が強いため、ギターを弾きまくっているような印象を受けがちですが、スロー・バラードやブルースが多く、この傾向はWESの意思なのか、RIVERSIDE側の要望なのか知りたいところです。ライブでの定番となる「FOUR ON SIX」のオリジナルが聴ける他、各所で光るTOMMY FLANAGANの好演等、聴きどころ満載です。

 

 

 

 

FULL HOUSE (RIVERSIDE RLP 434)

 

WESがスタジオ録音では、様々な制約を受けていたことが分かる奔放なライブ。これほど弾けるギタリストに余計な装飾を施し、本来のテクニックを半分無視したような作品作りを強いたPACIFIC JAZZ、RIVERSIDE、VERVE、A&Mの姿勢には大いに疑問です。そんな中でも上掲『THE INCREDIBLE JAZZ GUITAR』と本作が世に出たのは、ファンにとってありがたいことでした。メンバーがダブるWYNTON KELLYが主役の『SMOKIN’ AT THE HALF NOTE』(VERVE V6-8633)も同レベルの秀作です。


 

以上はリアルタイムで発売された作品ですが、夭折後に発売された中にも優れたものが・・・。

 

SOLITUDE (BYG YX 4016-17)

粗製乱造で、晩年はすっかり支持を失ったスィング・ジャーナルのゴールド・ディスクですが、この頃はレコード蒐集の道標でした。

 

死後発売された1965年のパリでのライブ演奏。様々な形で発売されましたが、オリジナルはフランス・BYG音源で、レコード化されたのは1973年に日本の東宝芸音から出た2枚組が最初だと思います。

 

『FULL HOUSE』との違いは、WYNTON KELLYがHAROLD MABERNに替わったため、よりWESの出番が多くなったこと、MABERNのモード奏法にWESも適応して、従来のハードバップとは一線を隔している点が挙げられます。また片面2曲と1曲の演奏時間が長く、WESのソロを十二分に堪能することができます。ゲストのJOHNNY GRIFFINの参加を最後の「ROUND ABOUT MIDNIGHT」一曲だけにしたのも正解でした。ボサノヴァ調の「HERE’S THAT RAINY DAY」は、この曲のベスト・バージョン、2枚組も、あっという間に聴き終えてしまう傑作揃いです。

 

フランスのBYGレーベルは“ビリケンさんマーク”でROCKファンにもSOFT MACHINEやYARDBIRDSの未発表音源でお馴染みのCOLLECTOR’S ITEM専門?レーベル、もしVERVEやA&M等の大手レーベルで発売していたら、もっと話題になったでしょう。また生前に世に出ていたら、きっとWESも満足したと思います。