PRESTIGEのメイン7000~7200番台に6枚のリーダーアルバムを擁しながら、日本のモダンジャズ・ファンには、全く人気がないMOSE ALLISON、何故でしょう。MOSE ALLISONの基本スタイルは、ピアノ・トリオですが、曲によって歌ったりトランペットの演奏も。また作曲能力に長けていることから、ジャズ版シンガー・ソングライターと言われています。

 

 

BACK COUNTRY SUITE (PRESTIGE 7091)

ジャケットは黄土色がオリジナル・プレス、これはセカンド。

JAZZからイメージする場所は、煌びやかなNEW YORK、取り分けMANHATTANでしょう。それ故JAZZは都会の音楽というイメージがあります。でもMOSE ALLISONの初リーダー作のタイトルは『BUCK COUNTRY SUITE』・・・BUCK COUNTRYとは辺境、僻地のこと・・・で以後、垢抜けないイメージが付きまといます。ハードバップ全盛期に、純ジャズではなくフォーク・ブルースの影響の強い朴訥としたピアノ、ヴォーカルもCHET BAKERのように洗練されていなくては、当時の日本のジャズファンに見向きもされなかったは、当然のことかもしれません。

 

ところが、THE WHOが「YOUNG MAN BLUES」(自身のアルバムでのタイトルは単に“BLUES”)を取上げたことで、ジャズファンではなく一躍ROCK ファンに、その名を知られるようになります。でもねぇ、日本のファンに、このコール&レスポンス形式の曲、本当に受けたのかなぁ、私はWHOの『LIVE AT LEEDS』の冒頭に入っている、この曲を最初に聴いた時は、さっぱり良さが分かりませんでした。ALLISONのヴォーカルは、いわゆる”ヘタウマ“、素人以上プロ未満のレベルです。B面のラストに収められたALLISONのペンによる「IN SARAH」は、J.R.MONTEROSEの鮮烈なテナーで有名なGEORGE WALLINGTONの『THE NEW YORK SCENE』(NEWJAZZ 8207)でカバーされたハードバップの名曲です。でも意外にもジャズファンには、あまり知られていません。

 

THE WHOの『LIVE AT LEEDS』とGEORGE WALLINGTONの『THE NEW YORK SCNE』

 

 

 

 

 

LOCAL COLOR(PRESTIGE 7121)

オリジナルは446W.50TH ST. NYC、これはセカンド。

私は、この2作目がMOSE ALLISONの最高傑作だと思います。タイトルからして前作にも増して田舎臭満載、ジャケットの辺境の地の写真は、後にPRESTIGEのプロデューサーになるEDMOND EDWARDSによるものです。「PARCHMAN FARM」はMOSE ALLISONの代表曲でALLISONのヴォーカル入りのフォーク・ブルース、PARCHMAN FARMとはミシシッピー州立刑務所のことで、過酷な労働刑で悪名高くブルースにはピッタリの題材、ERIC CLAPTON擁するJOHN MYALL& BLUES BREAKERSのカバーが秀逸です。「MOJO WOMAN」の繰り返されるリフはHERBIE NICOLSを彷彿させる等、他の自作曲も素晴らしく、またELLINGTONの「DON’T EVER SAY GOODBYE」も新鮮に響きます。「TROUBLE IN MIND」では、余技として取り組んだ?トランペットも披露しています。

 

 

『YOUNG MAN MOSE』 (PRESTIGE 7137)、『CREEK BANK』(PRESTIGE 7152)、『RAMBLIN’ WITH MOSE ALLISON』(PRESTIGE 7215)も所有していますが、内容に大きな変化はなく二番煎じ、三番煎じ的な内容、熱狂的なファン以外は最初の2枚だけで十分だと思います。上掲盤を含め、いずれもRVG録音、特有の太い音で録られています。