SAVOYレーベルに付きまとう、ダサい、芋臭いというイメージは、カラー・ジャケットになってからで、デザインの稚拙さ、とともにカラーテレビが初めて登場した時のようなケバケバしい色彩が拍車を掛けました。この時代のSAVOYは、およそ「ジャケ買い」とは無縁のレーベルです。でもSAVOYも10インチから12インチ初期においてはジャケ写真は、あか抜けないものの、渋いモノクロ・ジャケを選択したのが功を奏し十分蒐集の対象になるレコードが存在します。

 

 

BOHEMIA AFTER DARK / KENNY CLARKE (SAVOY MG-12017)

米オリジナルではなく、カナダ盤です。

このレコードが凄いのは、CANNONBALL ADDERLEY、NAT ADDERLEY、DONALD BYRD、その後のモダンジャズの歴史に大きな足跡を残す3人のレコーディング・デビュー作であること、リズムセクションもHORACE SILVER、PAUL CHAMBERS、KENNY CLARKEと豪華、加えてタイトル曲がキャッチーなメロディでモダンジャズを代表する名曲としてあまりにも有名なことです。SAVOYを代表するアルバムとして高評価を受けていますが、ADDERLEY兄弟、BYRDの、その後の完成度の高いアルバムを鑑みると、フレッシュと言えば聞こえは良いかもしれませんが、未熟な面も気になる話題がやや先行した一枚だと思います。

 

 

 

 

ENCORE / EDDIE BERT (SAVOY MG-12019)

 

地味なトロンボーン奏者、EDDIE BERTの2つのセッションを纏めたもの。ファンの関心は、もっぱらJ.R.MONTEROSEが参加したB面にあります。実際、ギター入りピアノレス・カルテットのA面よりトロンボーン、テナーのクインテット・セッションのB面の方が遥かに刺激的で、肝となっているのがJ.R.MONTEROSEのテナーです。RVG録音とJ.R.MONTEROSEの相性の良さはBLUE NOTEやNEW JAZZのレコーディングでも明らかで、ここでも独特なタンギングが特徴のテナーは強烈なインパクトを残しています。MONTEROSEファンは入手すべきレコードです。

 

 

 

 

MONTAGE (SAVOY MG-12029)


 

3つのセッションを纏めたオムニバス盤で、一つは上掲『ENCORE』のJ.R.MONTEROSEが参加しているセッションの残り4曲で内容も良く、何故『ENCORE』分と、まとめて一枚のアルバムにしなかったのか理解できません。他はJOHN MEHEGANなるピアニストのソロピアノが2曲に、下掲『BYRD’S WORD』の未収録曲「IF I LOVE AGAIN」です。本家本元のアルバムが出る前に未収録曲を含んだオムニバス盤が発売される???なんともSAVOYらしい混乱ぶりです。かつてコレクター間では「SAVOYはオムニバスを狙え」と密かに伝わっていたようですが、このアルバムなど内容の充実さから、その最たるものでしょう。

 

 

 

 

BYRD’S WORD (SAVOY MG 12032)

 

DONALD BYRDの初リーダー作。CLIFFORD BROWNの後継者としての期待に応えた作品ですが、約1年後のLEE MORGANの衝撃のデビュー作(BLUE NOTE盤の方)に比べると、どうしても見劣りします。BYRDの他にFRANK FOSTER、HANK JONES、PAUL CHAMBERS、KENNY CLARKEという名うてのメンバーながら、曲によって出来不出来の差が激しく「STAR EYES」や「SOMEONE TO WATCH OVER ME」のような、お馴染みのスタンダードでも、イマイチ盛り上がりに欠け、BYRDのトランペットも新人としては上出来でもMORGANのようにBRILLIANTというレベルには達していません。但しRVG録音のFRANK FOSTERのテナーは、正に轟音、十二分に特性を捉えています。

 

 

 

 

MIGHTY MIKE CUOZZO (SAVOY MG 12051)

 

2枚のリーダー作しかないテナー奏者、MIKE COUZZOの初リーダー作。テナーサックス+リズムセクションにヴァイブのEDDIE COSTAを加えた編成で COSTAのヴァイブが大きくフューチャーされているのに反して、ピアノのRONNIE BALLの存在感は希薄、むしろEDDIE COSTAの相棒としても活躍したVINNIE BURKEのベースの強靭な音が印象的です。CUOZZOのテナーは逞しく、FRANK FOSTERやCHARLIE ROUSEに似て十分魅力的ですが、他を圧倒するような個性に乏しく、ここで共演したEDDIE COSTA、VINNIE BURKEらと2作目の『MIKE CUOZZO WITH THE COSTA-BURKE TRIO』(JUBILEE LP 1027)を録音したあと、JAZZで生計を立てるのは難しいと悟ったのか、早々に音楽界を引退します。内容的にはCOSTAがピアノに専念したJUBILEE盤の方が1枚上だと思います。

 

 

70年代に登場したNORMAN GRANZのPABLOレーベルもモノクロ・ジャケットでしたが、何十枚と続けられると、流石に・・・。モノクロではなく、渋いカラーのモノトーンのジャケットにすれば、もっとコレクターの食指を動かしたのに・・・と思います