デビュー時には神童と崇められ、華々しい活躍をして来たLEE MORGANですが、放蕩ぶりが過ぎたのか、1963年頃には住むところも無く困窮状態だったようです。1965年、約3年ぶりのリーダー作『THE SIDEWINDER』が思いがけず大ヒットし、ここからMORGANの進撃が再び始まります。

 

 

 

THE SIDEWINDER (BLUE NOTE ST-84157)

 

拙ブログで何度も述べていますが、私はJAZZもROCK大好きですが、ジャズ・ロックなる類のチャラチャラした8ビートの音楽は大嫌いでした。最近は、ある程度、寛容になって目くじらを立てることもありませんが、これぞ元祖ジャズ・ロックのSIDEWINDERには長い間抵抗がありました。なので、この有名なアルバムの入手は後回しにし他を優先しました。後年入手したところ、SIDEWINDER以外の曲は、ストレイト・アヘッドなJAZZばかりで、実に素晴らしく大いに後悔した次第です。このアルバムの大ヒット以降、BLUE NOTEはA面の一曲目にジャズ・ロック調の曲を収録する傾向が続きますが、その曲の印象だけでアルバム全体の評価をするのは、危険なことを思い知らされた作品です。なお、ステレオ録音に試行錯誤したRVGも、この頃には慣れたようで、ベースが中央に位置する独自のステレオ感を確立しています。

 

 

 

TOM CAT (BLUE NOTE LT-1058)

 

1980年、MICHAEL CUSCUNAがBLUE NOTEのお蔵入り作品を発掘した「LTシリーズ」、そのシリーズの MORGANの作品、全4枚のうちの一枚。JACKIE McLEANにCURTIS FULLERを加えた3管、ピアノはMcCOY TYNER、ドラムにはART BLAKEYと豪華布陣で、SHORTERをMcLEANに替えた分かりやすいJAZZ MESSENGERSと思っていただければ間違いありません。また、その辺りが内容は充実しているのに”お蔵入り“した最大の原因かもしれません。新主流派=MODEの申し子、WAYNE SHORTERが担っていた役割は、McCOY TYNERがキッチリと果たしていて、JAZZ MESSENGERSの興奮が、ここでも味わえます。特にB面が傑出しています。

 

 

 

 

THE RUMPROLLER (BLUE NOTE 4199)

 

冒頭のジャズ・ロック調のタイトル曲は、明らかに“二匹目のSIDEWINDER”狙いでしたが、目玉はモード調の「DESERT MOONLIGHT」、新主流派の面目躍如たる疾走感が感じられる演奏です。他にも、この頃のMORGANのアルバムには必ず入っているカリプソ調の曲や「THE LADY」での魅惑のミュート・プレイもあって充実した内容です。MORGANは、この頃にお蔵入りしたアルバムを含め数多くの録音を残していますが、やはり本作は、リアル・タイムで発売されただけあって一歩抜きん出ていると思います。

 

 

 

DELIGHTFULEE MORGAN (BLUE NOTE (84243)

 

冒頭のカリプソ調やBEATLESナンバーに「SUNRISE SUNSET」と、かなりポップな内容で、ライブ・ハウスで聴く実際のMORGANとは、かなり、かけ離れた内容です。WES MONTGOMERYなどもレコード上では、かなりコマーシャルな作品を録音していましたが、ライブではインプロビゼーション中心のシアリアスな内容で、当時の音楽界の状況を良く物語っています。ただMORGANの場合は「ZAMBIA」、「NITE FLITE」のような新主流派の曲も混在していて、そのバランスが絶妙なアルバム。当時、多くの純粋なジャズファンはBEATLESの「YESTERDAY」を取上げたことに忸怩たる思いを持ったと思いますが、今となっては、これはこれで実に立派なバラードだと評価しています。

 

 

 

 

THE RAJAH (BLUE NOTE 84426)

 

LTシリーズとは別に1985年になって陽の目を見た1966年のお蔵入り録音。発売当初は冴えない別ジャケ(下掲)でしたが、BLUE NOTE創立80周年を記念した「BLUENOTE TONE POET」シリーズのうちの一枚として、ご覧のようなインパクトがあるFRANCIS WOLFEのフォトジャケで再発されました。この「TONE POET」シリーズ、コーティングが効いた豪華絢爛なダブルジャケ(GATEFOLD)の上、盤も180グラムと至れり尽くせり、「音」以外は完全にオリジナルを超えています。内容的にはCAL MASSEYの作品が含まれていますが、HANK MOBLEYが参加していることからも分かるように、新主流派のハードバップ寄りの作品で、とても聴きやすく、秀作揃いのMORGANのお蔵入り録音のなかでも最も優れた作品のように思います。この時期としてはMOBLEYも出色の出来栄えで、MOBLEYファンは押さえて置きたいアルバムです。

 

それにしても、前のジャケの時には全く興味がなかったのに、ジャケットが一新されると一転、気になって仕方がないアルバムとなり、とうとう購入、あらためてジャケットの重要性を認識した作品です。

 

「THE RAJAH」のオリジナル・ジャケット

 

 

“『LIVE AT THE LIGHTHOUSE』が入っていないじゃないか”という、ご意見もあるかと思いますが、あくまで個人の好みということで・・・。