1954年12月24日のMILES DAVIS ALLSTARSによる通称“クリスマス・セッション”、MILES、MONKにMILT JACKSON、PERCY HEATH、KENNY CLARKEのクインテットによるセッションは、たった4曲(別テイク2曲を入れると6曲)ながら、その話題性、演奏内容の高さから、モダンジャズ屈指のセッションと言われています。

 

このセッションは、オリジナルの10インチ盤2枚別テイクを含む16回転盤12インチLP2枚(BAGS'GROOVE、MILES DAVIS &THE MODERN JAZZ GIANTS)の順で再発されます。以下詳細をチェックします。

 

MILES DAVIS ALL STARS VOL.1 (PRESTIGE LP 196)

A面 BAGS'GROOVE / B面 SWING SPRING

10インチを敬遠されている方、これは12インチLPとの端境期のため、サーフェイス・ノイズが発生するような材質でなく、またEQカーブの補正も不要、かつRVGの録音ため安心して入手できます。後年再発される12インチLPには(よりドラマチックにするため)MILT JACKSONのヴァイブラフォンに、リバーブ(エコー)が強力に掛かっていますので、注意が必要です。VOL.1の10インチについては、センターレーベルが銀・エンジのものが存在、所有盤(イエロー)はセカンドです。

 

 

MILES DAVIS ALL STARS VOL.2 (PRESTIGE LP 200)

から

A面 BEMSHA SWING / B面 THE MAN I LOVE

「THE MAN I LOVE」では、冷え冷えとしたスタジオ内部の様子が手に取るように分かります。演奏自体は十分熱いものがありますが「音」はCOOL、とりわけMILESのトランペットには寂寥感が漂います。その「THE MAN I LOVE」は、スリルに富んだTAKE2が採用されています。所有盤のVOL.2は、表ジャケ左上‟PRESTIGE LP 200”となるべきところLPの“P”の文字が抜けています。抜けていないのがオリジナルとされ、これはセカンド・プレスです。なおジャケのみの違いで、センターレーベル等の違いはありません。

 

 

 

MILES DAVIS AND THE MODERN JAZZ GIANTS (PRESTIGE 3)

 

PRESTIGEに6枚しかない16回転盤の中で最も有名な盤。発売は1957年。「THE MAN I LOVE」及び「BAGS'GROOVE」の別テイクを含む前述のMONKらとの“クリスマス・セッション”と、先立つこと6か月前、1954年6月29日のMILES、SONNY ROLLINS、HORACE SILVER、PERCY HEATH、KENNY CLARKEとの通称“エアジン・セッション”の4曲(別テイク1曲、全5曲)を長時間収録可能な16回転盤の特性を生かし1枚に収録しました。別テイクは、この16回転盤がオリジナルです。ただMILESとベース、ドラムスが同一のため、あまり違和感はないとは言え、二つのセッションをランダムに収録していて・・・・やっぱり問題があります。16回転盤は、トーレンス TD124が長期故障中のため、最新の感想が書けないのが残念ですが、回転が遅い+溝が狭いは、ともに「音」が良くない要因、コレクターの方以外は避けた方が良いでしょう。

 

 

 

 

BAGS’ GROOVE / MILES DAVIS AND THE MODERN JAZZ GIANTS(PRESTIGE LP 7109)


 

発売は1957年12月、録音から3年が経過し、ようやく、クリスマス・セッションの一部が33回転12インチLP化されました。A面に「BAGS' GROOVE」の2つのテイク、B面は上述の‟エアジン・セッション」を収録。「BAGS'GROOVE」は、TAKE2がTAKE1より2分ほど短かい(MILT JACKSONのソロ1分半、MONKのソロ30秒カット)のですが、後述の「THE MAN I LOVE」のような違いはなく、別テイクを続けて聴かされるリスナーは、余程のファンでない限り、ちょっと辛いものがあります。

 

 

 

 

MILES DAVIS AND THE MODERN JAZZ GIANTS (PRESTIGE 7150)

 

このセッションは、最初にMONKの「BEMSHA SWING」を録音、MILESはMONKの曲なので我慢していましたが、次の「THE MAN I LOVE」のTAKE1収録の後、MONKに「俺のソロの時にはコンピングをするな!」と諫言します。TAKE2では、そのことが頭にあったのかMONKは自分のソロの途中で演奏を止めてしまいます。暫くの沈黙の後、MILESが早く弾けとトランペットで催促、我に返ったMONKが慌ててピアノを弾き始めるというのがエピソードとして伝わっています。確かにTAKE2では、MILESのソロのバックでMONKはコンピングをしていません。いささか話が盛られているようにも思いますが、他の曲(BAGS'GROOVE、SWING SPRING)でもMONKはMILESのソロの時は、コンピングをしていないので、「THE MAN I LOVE」の最初のテイクの後に起きたハプニングで、セッション終了まで緊張状態が続いたことを物語っています。

 

このアルバムの問題点は、話題の「THE MAN I LOVE」こそ、違いをリスナーに堪能してもらうため、TAKE1とTAKE2を続けて収録すべきなのに、A面の冒頭にTAKE2、B面の最後にTAKE1と分断されていること。それと同一セッションだけでは、LP一枚分に足りなかったため、例の四部作のマラソン・セッション未収録の「'ROUND ABOUT MIDNIGHT」を追加、MONK作という理由だと思いますが、これは邪道でアルバムの価値を下げました。なお、オリジナル10インチから4年後の1959年5月のリリースです。