長い間、第一線で活躍し、時代によって演奏スタイルを変化させたSTAN GETZ。中では最もGETZらしく、他の追随を許さなかったのは、「北欧のGETZ」と呼ばれるストックホルムで録音されたセッションだと思います。

 

 

 

STAN GETZ & SWEDISH ALL STARS(ROOST RLP 404)…10インチLP

レーベル・カラーがグリーンのものがオリジナル。ブルーはセカンド・プレス。但しグリーンはサーフェイス・ノイズが酷いもの多し、検盤だけでは判断難しく、試聴必須。

 

THE SOUND (ROOST LP 2207)

ストックホルム録音を収めたB面の方がずっと素敵です。

BENGT HALLBERGを含む現地(スウェーデン)ミュージシャンとのセッション。晩秋のひんやりとした空気を連想させる、研ぎ澄まされたGETZのテナーBENGT HALLBERGのピアノ、「COOL GETZ」の真髄ここにありです。10インチ盤は全8曲、ストックホルム録音で統一されてるのに対し、12インチはB面6曲のみ(2曲オミット)、A面はHORACE SILVERらとの別セッションなので、ぜひ10インチ盤を入手することをお勧めします。但しROOSTの10インチは、元々数が少ないうえに、盤によって壮大なサーフェイス・ノイズを発生するものがあり、注意を要します。これは、この時期(1951年頃)アメリカは朝鮮戦争の影響でプラスチックが不足状態で、一部で粗悪な再生プラスチックが使われたことが原因です。私も、この10インチは2枚目。1枚目は「ザー」というサーフェイス・ノイズが酷くて、鑑賞レベルに達していませんでした。

 

 

 

STAN GETZ IN STOCKHOLM(VERVE MGV-8213)


 

上掲10インチが1951年の録音に対し、こちらは1955年12月の録音。ピアノとベースは前回と同じBENGT HALLBERGとGUNNAR JOHNSON。そのため基本的なスタンス・雰囲気は変わっていませんが、前回はSP、10インチ時代の基本一曲3分程度の録音だったのに対し、今回はLP時代のため演奏時間も長くなり、GETZらのソロにも十分なスペースが確保されています。このアルバムの「WITHOUT A SONG」や「EVERYTHING HAPPENS TO ME」でのGETZは、PAUL DESMONDより、リリカルで繊細です。GETZの同時期のアルバムからは、想像もつかないほど優しく芳しいテナーの音色は、ストックホルムという土地BENGT HALLBERGのアメリカン・ジャズメンには、絶対に出せない透明で清涼感が漂うピアノにより、導き出されたものでしょう。

 

 

 

 

IMPORTED FROM EUROPE(VERVE MGV- 8331)

 

1958年の録音。ここにもBENGT HALLBERGとGUNNAR JOHNSONは参加していますが、トランペットやトロンボーン等の金管楽器を加えOCTETないしNONETの大編成となっています。GETZはPRESTIGE時代にも、ZOOT SIMS、AL CORN、ALLEN EAGERらと『THE BROTHERS』(PRESTIGE 7022)でサックス・アンサンブルは経験済み。その『THE BROTHERS』やPACIFIC JAZZの『THE GERRY MULLIGAN SONGBOOK』等に比べると、各楽器が生き生きとして、刺激に富んでいるため退屈しません。ただ編成の大きさからGETZのソロ・スペースは少なく、あくまで全体のサウンドを楽しむためのレコードです。ジャケットの警察官とタイトルからフランス録音のような印象を受けますが、ストックホルムでの録音です。