WIZARD OF THE VIBES」と呼ばれ、圧倒的な存在感を示しながらMODERN JAZZ QUARTETでは、すっかりJOHN LEWISに主導権を握られていたMILT JACKSON、真に本領を発揮できたのは、一部のソロアルバムかもしれません。今回取上げたBLUE NOTE、PRESTIGE、SAVOY、ATLANTIC、IMPULSEの各盤は、奇しくも全てRVG録音(但しATLANTIC盤は一部のみ)、レーベルによる音の違いにも言及したいと思います。

 

 

MILT JACKSON (BLUE NOTE 1509)

 

MILT JACKSONが存在感を際立たせていたのは、やはりバップ~ハードバップ最初期の1950年代初頭まででしょう。その時期の名演を収録したのが、このBLUE NOTE盤。MONKやLOU DONALDSINとの共演等、MILT JACKSONの魅力を全て網羅している短編集。ギュツと濃縮されたSP時代の至高の演奏が堪能できます。SPのLP化に際し、多くのレーベルでは、音が減衰しましたが、RVGのリマスタリングはSP時代の音を、かなりのレベルで維持できた類稀れなケースだと思います。

 

 

 

MILT JACKON QUARTET (PRESTIGE 7003)


 

LP時代に入り、1曲に掛ける時間に余裕ができたため、MILT JACKSONのヴァイブラフォンの妙技が存分に聴ける傑作。バックはMJQのメンバーからJOHN LEWISが抜け、HORACE SILVERが入った布陣のため、バロック風クラシックの要素は、ここには全く存在しません。レコード会社はMJQの印象が強いため、JACKSONのソロアルバムでは、ホーン入りや大編成のものを多く企画しましたが、やはり本領を発揮できたのは、小編成でホーンが入らないもの。RVGとしては、ヴァイブの音が、かなり硬質で、リバーブ(エコー)も後出のIMPULSE盤に比べると、やや控えめ、バラード・トラックが特に傑出しています。

 

 

 

JACKSON’SVILLE (SAVOY MG-12080)

 

SAVOYにも数多くの録音を残していますが、レーベルカラーの、よく言えば取っ付きやすい、悪く言えば安っぽい、野暮ったい感じが、そのまま出ています。同じRVG録音でも総監督(SUPERVISION)の違いで、全体の印象が一変するのが良くわかります。ほぼ同時期録音のPRESTIGE盤やATLANTIC盤に比べると、音、メンバー(特にLUCKY THOMPSON)、ジャケットに加え、SAVOYらしい選曲(NOW'S THE TIME等)も、随分と古臭い印象です。でも、多くの方々がMILT JACKSONに抱くイメージは、これが一番近いかもしれません。

 

 

 

BALLADS & BLUES(ATLANTIC 1242)

 

MILT JACKSONが得意とするBALLADとBLUESに特化したアルバム。内容的には平凡な作品ですが、今回取上げた他の作品のインパクトが強すぎることもあって、穏やかで心地よく、ついウトウトとしてしまいそうです。3つの異なるセッションから成り立っていますが、いずれにも参加しているギターが良い味を出しています。ジャケットには記載されていませんが、「THESE FOOLISH THING」、「THE SONG IS ENDED」、「GERRY’S BLUES」の3曲はRVGが録音を担当、但しマスタリングには関わっていないため、ほとんどリバーブは施されいないのも、このレーベルの特徴です。

 

 

 

STATEMENTS(IMPULSE A-14)

 

このIMPULSE盤の録音が、一番MILT JACKSONのヴァイブラフォンの魅力を引き出しています。これだけ、時代が60年代ということを割り引いても他を圧倒、多めに施されたリバーブにより、リスナーは抜群の臨場感を味わうことができます。冒頭のタイトル曲はドラムスが強調されたインパクトが強い楽曲ですが、やはりMILTには、次の「SLOWLY」のようなバラードやブルースが似合います。IMPULSEには、他にもレコーディングがありますが、ホーン入りのものが多く、どれか一枚となると、これに落ち着きます。